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これもまた友情

 歴史を辿っていけば学園対抗戦はアカデミー同士のプライドがかかったバトルであり、始まった当初は単に代表者同士が戦って強い者を決めるだけの大会であった。

 今もプライドがかかった戦いであることは間違いないのであるが学園対抗戦の様相は大きく変化を遂げてきた。


 いつかの学園対抗戦の時から競技が増えた。

 最初は学園対抗戦の参加者同士の小競り合いだったらしい。


 場外で争うなら学園対抗戦の中で正々堂々と決着をつければいいとなったのである。

 その内容は力比べだった。


 戦って技量を競う力比べではなく、純粋なパワーの強さを競う力比べであった。

 競技的な盛り上がりもあった。


 応援しやすく、観やすく、分かりやすい。

 だから次の年から力比べも競技として取り入れられた。


 こうなると様々な分野にも特化して競い合うということの意見も学生の中から出始めた。

 同時に外部の人間も学生たちの力を見れる場として学園対抗戦に注目し始めたのだ。


 いつしか学園対抗戦はアカデミー同士の戦いでありながら自分の力を試したり披露する側面も持ち始めた。

 ある種のお祭りのようなものとすらも言っていい。


「はっ!」


「やっ!」


 アリアとジェーンの剣がぶつかって甲高い音が響き渡る。

 各生徒によって少しずつ思っていることは違うけれど1番大きな目標としてはやはり勝利、そして自分のアカデミーを学園対抗戦の優勝校にすることである。


 ジェーンは個人で行われるトーナメント対抗戦と団体戦で行われる対抗戦に出場する。

 最終調整の相手としてアリアを指名し、シェルドンアカデミーにある訓練場で剣を振るっていた。


 キュミリアとの件はジェーンに大きな影響も与えたがあの戦いは成長も与えた。

 しばらく停滞していたジェーンの剣術レベルが上がり、さらに動きは洗練されたものになった。


 アリアもキュミリアとの戦いや日々の鍛錬で剣術レベルが12まで上がったのだけどジェーンには敵わない。

 本気で切り合えばアリアはジェーンには敵わないのだけど今は軽く汗を流す程度なので互角に戦っている。


 他の生徒たちも各々体を動かしたりして最終的な調整を行なっている。

 カールソンの相手はなんとノラが務めていた。


 ノラが自ら立候補したのだがカールソンもそれを受け入れた。


「ふぅ……」


「緊張していますか?」


「……そうね」


 汗を拭き水分補給をしたジェーンはため息をついた。

 緊張していないと言えば嘘になる。


 さらにはジェーンは個人戦にだけ出る予定だったのだけどキュミリアの穴を埋めるために団体戦にも出ることになった。

 緊張しない方が無理な話だ。


 負けたところで死ぬ試合でもないのだからそんなに緊張することもないとアリアは思う。

 けれどもアカデミーを背負っていると考えてしまうと自然と負けられないと思ってしまう。


 アカデミーの名誉なんてアリアにとってはクソくらえであるがジェーンは責任感も強いしユーケーンのクラブ長でもあるから尚更責任を感じるのだろう。

 いざ出るとなれば負けるのは嫌なので全力で戦うがアカデミーのためという意識はない。


「でも……今は誰にも負けたくないと思うの」


 キュミリアとの戦いの時ジェーンは役に立たなかったという負い目があった。

 キュミリアは強くて、剣術だけでもジェーンはキュミリアに勝てないかもしれない。


 なのにアリアはそれでもキュミリアに立ち向かって最後まで諦めなかった。

 ジェーンはアリアより強い。


 そのはずなのに全力で戦った時ジェーンはアリアに勝てるような気がしなかった。

 時が経って落ち着くほどにアリアという年下の少女の背中が大きく感じられるようになってきたのだ。


 キュミリアに対する思いはいまだにどこか残っている。

 けれど今はそうした思いよりもアリアに追いつきたいと思っていた。


 ずっと憧れを抱く強い女性の姿をアリアの中に見た。


「アリア嬢……あなたにも負けたくない」


 アリアを見るジェーンの目に宿る意思は強い。

 ジェーンもただの女性ではなく剣の道に生きる求道者なのである。


「それなら私も努力せねばならないですわね」


 アリアにとっては思わぬ拾い物でもある。

 回帰前でもジェーンの実力は確かであったのだが今回のジェーンはさらに一味違う。


 アリアやヘカトケイと出会って回帰前よりも早く成長するだろう。

 それだけではなくアリアもオーラユーザーで切磋琢磨することができる相手を得られた。


「明日からの学園対抗戦では期待していますわよ」


「ふふ、見ていて」


 回帰前にはこのような関係の女性の友人もいなかった。

 ジェーンが笑顔を浮かべて、アリアも笑う。


「もう一戦やりましょうか?」


「ええ、お願いします」


 この関係を友情というのかも分からないけれど言葉にしてみるのなら友情なのだろうとアリアは思った。

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