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シェルドンアカデミーへ

 テスト期間が終わった。

 多くの人がテスト結果を待って短いが休みの期間に入る。


 手応えがなくて落ち込んでいるような人やテストから解放されて清々しい気分の人もいるけれどアリアにはまだ予定があった。

 学園対抗戦が迫っていたのである。


 ユーケーンのメンバーは競技に参加しない人も含めて学園対抗戦に行かなければならない。

 他人が戦うのを見るのもまた勉強であるということなのだ。


 テストの結果がよほど悪い人は事前に止められららしいが今回ユーケーンのメンバーで止められる人はいなかった。

 学園対抗戦はそれぞれのアカデミーが持ち回りで行うのであるが今回はアリアたちが通うアカデミーとは別のアカデミーで開催される。


「みんな準備は良いか?」


「はい!」


「忘れ物はないな?」


「もちろんです」


 学園対抗戦が行われるアカデミーは別の国にあるのだけどそこまでいくのも簡単ではない。

 多くの生徒を連れて馬車で移動していくのも大きな負担になる。


 そこで使用されるのが魔法である。

 空間移動魔法というものがある。


 魔法陣同士を繋いで行き来を可能にした魔法であり、各アカデミー同士は魔法で繋がっていた。

 気軽に使えるものでもなく、それぞれの場所に魔法陣が必要なこととそれなりの魔力量と魔力を扱う技量もなくてはならない。


 またアカデミーにあるものは勝手に使用することもできない。

 今回はこの空間移動魔法を使って学園対抗戦が行われるアカデミーまで移動することになっていた。


 空間移動魔法を使うためにもアルドルトも引率の1人であった。


「それでは行こうか」


 ユーケーンや他にも剣術などに優れている生徒たちは床に描かれた魔法陣の中に立っている。

 アルドルトが杖を床に打ち鳴らすと魔法陣が眩く光り始める。


「ホッホッホ、シェルドンアカデミーへ」


 ーーーーー


 光に包まれて誰もが目をつぶった。

 魔法陣の光が収まって目を開けるとそこはアリアたちがいたロワルダインアカデミーではなかった。


 床に描かれた魔法陣は同じであったが部屋の様子は変わっていた。

 明るめの壁色だったのに暗い色の壁になっている。


「ようこそ、当アカデミーへ」


 そして振り返ると数人の人が立っていた。

 先頭に立つ老齢の男性が頭を下げると他の人たちも頭を下げる。


「わざわざ出迎えありがとうございます。我々はロワルダインアカデミーです」


 それにアルドルトが応え、アリアたちも背筋を正して頭を下げて挨拶を返す。

 最初に挨拶をしてくれたのがシェルドンアカデミーの学園長でアルドルトと握手を交わして簡単に会話をする。


「今回学園対抗戦についてロワルダインアカデミーを任されています、ゲルダです」


 褐色肌の男の子が前に出て紹介された。

 整った顔立ちをした美男子でカールソンともいい勝負をしているなとアリアは思った。


 ミステリアスな雰囲気があって女性人気も高そうだ。


「僕がロワルダインアカデミーを任せされていますので何かありましたら僕か、こちらのスタッフとして働いてくれる皆に」


 ゲルダが他にもいる生徒たちを軽く紹介する。


「それではまずはお宿に案内いたします」


 ゲルダの案内でアリアたちは移動を始める。

 シェルドンアカデミーにも学生寮はあるけれど複数のアカデミーから来る生徒たちが全員泊まれるような余裕はない。


 今回シェルドンアカデミーの方で事前にアカデミーの外にある宿を丸々借り上げて泊まれる場所を確保していてくれていた。

 アカデミーの寮と同じように2人で一部屋を使うことになった。


 アリアはジェーンと同部屋になり、荷物を置いて案内のためにシェルドンアカデミーに戻ってきた。


「こちらが競技を行う競技場となっています」


 完全室内の大きな競技場は真新しくて綺麗だった。

 観客席もあって立派な施設である。


 その後も食堂や入ってはいけない場所などシェルドンアカデミーの案内を受けて宿の部屋に帰る。


「失礼、お嬢様」


「私ですか?」


 宿に戻る途中でアリアはゲルダに話しかけられた。

 近寄られるとまつげも長いし本当に綺麗な顔をしている。


「お嬢様も学園対抗戦に出られるので?」


「私はアリアで大丈夫ですわ。私は一年生なので今回の学園対抗戦には出場いたしません」


「……そうですか」


「何かありまして?」


「いえ、あなたとは戦いたくないなと思ったのです」


 ゲルダはうっすらと笑みを浮かべてアリアに顔を近づけた。


「あまり剣を振るわれる方には見えませんが……」


「これでもユーケーンに所属しているのですよ?」


 ざわりと周りの視線がアリアとゲルダに集まる。

 ユーケーンの生徒が来ているので当然にディージャンとユーラもいる。


 ユーラがゲルダに噛みつきそうな顔をしていてディージャンがそれを抑えている。

 ノラやカールソンも冷たい目でゲルダを見ている。


 誇り高きユーケーンの一員。

 ただ見学に来た令嬢ではないとユーケーンの名前だけでゲルダも察する。


「むしろ私はあなたとも戦ってみたく思いますわ」


 立ち振る舞いに隙がない。

 ただの案内役ではなさそうだと見ていた。


 口ぶりからしても学園対抗戦に出ていそうである。


「……ユーケーンのご名声は聞き及んでおります。大変失礼なことを言ってしまいましたね」


「ふふ、綺麗な花にこそトゲがあるものですわ」


「あなたのトゲになら刺されてもいいかもしれませんね」


 これ以上話しているとユーラがゲルダを切りつけるかもしれない。

 アリアは笑顔で答えて会話を切り上げる。


 何が目的かは知らないけれど多少気に入られたのかなとは思った。

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