表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
202/323

いつか隣で1

 アカデミーの中がやや騒がしくなる。

 なぜならアカデミーがテスト期間に突入するからである。


 勉強に勤しむ者や余裕を持っている者、今更慌て始める者や達観したように諦めた者など普段とは学生たちの様子は異なったものとなる。

 アリアは回帰前の知識もある。


 授業態度も真面目だし知識があるからと余裕ぶらないでちゃんと授業を受けてノートを取っていた。

 ほとんどの授業でアリアは余裕を持っていた。


 さらにはトゥージュやパメラも真面目な生徒であるのでテスト前に3人で集まっては復習にも勤しんだ。

 ペーパーテストでアリアが落ちることはまずないと断言しても良かった。


 一般に難しいとされる錬金術のテストもアリアにとっては何てこともなかった。


「それでは次のペア、お願いします」


「わ、私が先でいいの?」


「きっと後で踊る方が記憶に残るでしょうからさっさと終わらせた方がいいですわ」


「うん……ありがとう、アリア」


 多少問題があるとしたらダンスのテストであるとアリアは思っていた。

 アリアはノラの誘いでノラとダンスすることになっていたがアリアの計らいでパメラもノラとダンスすることになった。


 先にパメラの方を踊らせる。

 何もアリアが自信ないからとかではない。


 パメラだろうとアリアだろうとノラと踊れば目立ってしまう。

 きっと後に踊った方が印象に残ってしまうのは避けられない。


 だからさっさとパメラに踊ってもらって仕方なくアリアの方が後で踊って印象を上塗りしようと思ったのだ。

 アリアの配慮にパメラはひっそり感動する。


 けれど感動ばかりもしていられない。


「それじゃあスキャナーズ嬢、いきましょうか」


「ははは、はい!」


 ノラが薄く笑顔を浮かべてパメラの手を取って前に出ると周りがざわつく。

 てっきりアリアと踊るものだと思われていたのだから当然である。


 一組一組踊っていてはダンスのテストだけで日が暮れる。

 同時に三組が一斉に先生の手拍子でダンスを始めた。


 パメラはもう必死だった。

 周りの視線など気にする余裕もなくノラの足を踏まないように極限の集中力を発揮している。


 一方でノラには余裕すら感じられる。

 足に集中するパメラを誘導するように踊っていてパメラのぎこちなさを出来る限りフォローしている。


 やはりノラのダンスのレベルはそれなりに高そうだ。

 一度だけパメラがノラの足を踏み抜いてしまったけれどノラは表情をほんの僅かに曇らせただけでダンスを続けた。


 ノラも痛いようなリアクションをしなかったしダンスも止まらなかった。

 あれぐらいならば大きく減点にもならない。


「はい、では終わりです」


「ご、ごめんなさい……!」


 ダンスが終わってパメラが泣きそうな顔でノラに謝る。

 本当は床に這いつくばって謝りたいところであるが人の目というものがある。


「大丈夫ですよ」


 それでもノラは笑ってみせる。

 こうした優しい姿は記憶にある回帰前の姿にも近いなとアリアは思った。


「そうですわ、パメラ。足を踏ませないように出来なかったノラスティオ様も悪いのですわ」


「そんなこと……出来は良かったと思うんだけどちょっと気を抜いたら」


「スキャナーズ嬢もお上手でしたよ」


 むしろ非難されないのが心苦しいぐらいにパメラは思う。

 足踏みやがって馬鹿野郎と言われた方がまだかもしれない。


「ただやっぱりパメラはダンスド下手ですわ」


「アリアァ……」


 いざ言われるとぐさりとくるけれどクスリと笑ってそう言ってくれるアリアにちょっぴり感謝もする。


「次はアリアの番だね」


「そうですわね」


 ノラはアリアに視線を向けてニッコリと笑う。

 その顔に顔を赤くしている女子もいるがアリアは同じく笑みを浮かべて返事をする。


 ただ連続してダンスするのは体力の都合もある。

 次に前に出たのはトゥージュとクロードのペアだった。


 トゥージュも緊張しているようには見えるが意外と緊張しているのはクロードの方みたいである。

 トゥージュはご令嬢であるのに対してクロードは家柄的にダンスを頑張るような家ではない。


 授業で初めて習うダンスの初めてのテストなれば緊張していてもおかしくはないのである。

 トゥージュが固い顔をしているクロードに微笑みかけて何か言葉をかけている。


 するとクロードは少し顔を赤くして、トゥージュはそれを見て笑う。

 軽い冗談でも言ったのかもしれない。


 お似合いの2人だな。

 アリアはトゥージュとクロードを見てそう思った。


 回帰前でも2人は結婚した。

 きっと強く互いを思い合って、深く愛し合っていたのだ。


 自分にはそんな愛はなかった。

 チクリと胸が痛むような気がした。


「アリア、大丈夫?」


 アリアの顔が少し暗くなったことにノラが気がついた。

 ただその胸の内は知らず、テストに対して緊張しているのかもしれないと思った。


「ええ、大丈夫ですわ」


 すぐにアリアは表情を取り繕う。

 回帰前のクソ男を考えても仕方ない。


 トゥージュとクロードのダンスは問題がなかった。

 まだまだ初級の授業であるし難しいことは少ないのでクロードの動きが多少お固いぐらいでは落第にもならない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ