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新たなる門出

 キュミリアによるアルドルト襲撃事件はあったけれどそれはあくまでも教員内での話に留め置かれた。

 学生たちへの影響を考えて事件のことは公にはされなかった。


 けれど大きな出来事であったので監察騎士団の調査は入ることになった。

 アルドルトを含めた教員と今回関わったアリアたち、それに加えてキュミリアを養子にしていたアドゥスケス家やモーダメルを雇っていたヘンヴァートン家も調査された。


 キュミリアとモーダメルはアカデミーに入る以前からの知り合いだった。

 モーダメルはキュミリアの父親であるカイトと親しかった。


 元々カイトの母親がヘンヴァートン出の女性であるために関係があった。

 そしてキュミリアは養子になった当初はヘンヴァートンの方に置かれて基礎的な教育を受けていたのである。


 モーダメルがキュミリアから話を聞いて個人的にアルドルトに近づこうとしたのか、あるいはキュミリアの計画のためにアカデミーに清掃員として潜入したのかは分からない。

 けれどモーダメルはキュミリアと仲間だったことは確実である。


 もしかしたらカイトやキュミリアの復讐のためにモーダメルは命を投げ出して戦ったのかもしれない。

 キュミリアが養子となったアドゥスケスはケルフィリア教ではなかった。


 ヘンヴァートンも同様で、今回の件を受けてアルドルトは直接アドゥスケスを訪れて話し合いをした。

 結婚を反対していたのは先代のアドゥスケス当主であり、今はカイトの弟である人が当主となっていた。


 完全に弱りきった様子のアドゥスケス当主はオーラユーザーでもなく今回の問題がそうしたいがみ合いから起こったものであると理解していた。

 アドゥスケス当主は悪い人ではなく事件の責任の一端はアドゥスケスにあり、アルドルトとは和解することになった。


 なのでアドゥスケスの協力を得てキュミリアは急遽アドゥスケスに帰ることになって退学することになった、というのがユーケーンの仲間たちなどに説明されたのである。

 一方でホーンドとキュミリアの関係はアカデミーに入ってからのもので、それ以前に接触は確認できなかった。


 ホーンド周りで調べられて何人かケルフィリア教が捕まったがキュミリアがどの段階でケルフィリア教に取り込まれたのかは不明なままであった。


「おめでとうございます、ジェーン先輩」


「う、うん。ありがとう」


 みんなが口々にジェーンに祝いの言葉を贈る。

 キュミリアがいなくなったことによる影響としてユーケーンのクラブ長の座が空席になってしまったのである。


 本来なら代替わりするときにクラブ長が次のクラブ長を指名するのだが今回は急にいなくなってしまったために次のクラブ長も決まっていなかった。

 学園対抗戦も迫っていた。

 

 なので話し合いでユーケーンのクラブ長をどうするのかすぐに決めねばならなかった。

 誰がいいのかと話し合う中でアリアはジェーンのことを推した。


 キュミリアと同じ最高学年であり、オーラユーザーでもありながら剣の実力も高い。

 後輩たちの人望もあるしアリアの考えではジェーンを置いて他に相応しい人物はいない。


 カールソン辺りでもいいかもしれないがここは順当にジェーンでいいだろう。

 他にも何人か候補はいたけれど最終的に多数決でジェーンがユーケーンのクラブ長になることが決まった。


 少し複雑そうな顔をしていたジェーンであるがみんなの信任を得られたのでやるだけやってみるつもりはあった。

 そしてジェーンのクラブ長就任パーティーが行われていた。


「ふぅ……」


「大丈夫ですか、ジェーン先輩?」


「はい、アリア……」


 ジェーンは人知れずため息をついた。

 ユーケーンのクラブ長になれることはとても誇らしいことであるのだが事情も知っているし時期が時期なだけに素直に喜びきれない自分がいることも確かであった。


 クラブ長になってすぐであるがやらなきゃならないこともある。

 それは学園対抗戦に向けた準備であった。


 ほとんどのことはキュミリアが準備してくれていたのであるがキュミリアが抜けた分他に出る子を考えたりしなければいけないのである。

 複雑な作業ではないけれど早く処理しなきゃいけないので多少頭の痛い問題である。


「アリアが出られたらいいんだけどね」


 アリアの実力は目の前で見たので確実だ。

 出られるのなら出て欲しいくらいであるが一年生は出られない決まりになっているのでアリアを候補にすることはできない。


「残念ながら私は見学のみですわ」


「そうなんだよね」


 ジェーンは深いため息をつく。

 実は穴はキュミリアだけではない。


 おそらくケルフィリア教の人なのだろう、退学した生徒もいてもう一つ穴も空いているのだ。

 こんな時のために予備の候補のリストもキュミリアは用意していたのでそこから声をかけていく必要がある。


「どうしてこんなことに……」


「ふふ、でもジェーン先輩なら出来ますよ」


 ジェーンは煩わしそうにしているが頭も悪くはないのでこうした事務作業的なこともちゃんとこなしてくれるはず。

 アリアは笑ってジェーンに甘いものを取ってあげたのであった。

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