表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
191/323

闇に堕ちた孫7

「うっ……」


 ひどい耳鳴りがして頭が痛む。

 なんとか起き上がったアリアは周りを見渡す。


 魔法などで起きた爆発とは少し違った。

 単純にエネルギーが弾け飛んだようなものでオーラで体を保護したアリアは無事だった。


 部屋はぐちゃぐちゃになっていた。

 窓ガラスは割れていて、机や椅子は爆発の衝撃で壁にぶつかって壊れていた。


 多い被っていたアルドルトも弱いながら息がある。


「う……カールソン、ジェーンは」


 立ちあがろうとしても体に力が入らない。

 アリアは這いずるようにしてカールソンのところまで行く。


「……生きてる」


 カールソンも生きていた。

 爆発の衝撃で気を失っているが顔色は悪くない。


 次にジェーンのところに向かう。

 こちらはオーラがまだ未熟なので心配であったがジェーンの方も無事だった。


 アリアたちよりも距離が遠かったことでジェーンも無事に済んだのかもしれない。


「キュミリア……」


 気に入らないが一応キュミリアの確認もする。

 意識があるようならトドメを刺すことだってアリアの頭の中にはある。


 腹部に突き刺さっていたはずのアーモルエは爆発の衝撃で抜け落ちていた。

 じわりと血が床に広がっているのが見える。


「死んでる……?」


 胸が上下しているように見えず死んでいるのかと思った。

 しかし手を伸ばして口元にやって呼吸を確認してみると弱々しいながらまだ呼吸をしていた。


 悪運の強い男だとアリアは思う。


「何があったのですか!」


 大きな爆発が起きては他にも何かの事件があったと周りにバレバレである。

 教員たちが学長室に慌ててやってきた。


 けれど何が起きたのか全く分からない。

 アルドルトを始めとして生徒数人が倒れていて、学長室は荒れ放題。


 困惑するのも当然の話である。


「うぅ……」


「大丈夫か!」


 小さく呻き声を上げるアリアに男性の教員が気がついた。


「何があったんだ?」


「犯人は……キュミリアです」


 さっさと気を失って楽になりたかったけれどそうもいかない。

 このままいけばおそらくみんな同じく治療を受けることになる。


 しかしそうなった時にキュミリアがどうするか分からない。

 犯人はキュミリアで拘束が必要なことを伝えておかねばならないのである。


「キュミリア……?」


「そこに倒れている男子生徒です。彼がこの事態を引き起こしたのです……」


 目が霞んできた。

 オーラも完全に使い果たしてアリアは今気合いだけで意識を保って口を動かしている。


「絶対に見張りをつけて……目を……離さない…………で」


 しかしもう限界。

 ちゃんと伝えられただろうかと不安に思えるような余裕すらなくアリアの意識は深く闇の中へと沈んでいった。


「学長!」


 倒れたアルドルトを起こそうとして腹部に刺し傷があることに他の教員が気がついた。

 キュミリアから流れている血は今も広がっているし状況の把握よりまずは治療が必要だと判断された。


「早く医務室に運ぶんだ!」


「担架を持ってこい!」


「ポーションを持ってきます!」


 教員たちも狼狽えているばかりではない。

 疑問はひとまず忘れて必要なことを考えて動き出す。


 担架を持ってきてアリアたちを運んだり、ポーションを持ってきてアルドルトやキュミリアの応急処置を施したりしている。


「至急副学長に連絡を!」


 タイミングの悪いことに副学長やホーンドなど重要な立場にある人は魔物退治に出かけている。

 教員たちだけでは対処し切れないと慌ててアカデミーの外に出ている教員たちを呼びにもいかせる。


「……何があったんだ」


 その疑問に答えられる人は今はいない。

 けれどアリアは殺されるはずだったアルドルトの運命を変え、助けることには成功した。


 このことが未来に一体どんな影響を及ぼすのかは誰にも分からないのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ