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闇に堕ちた孫6

「アリア!」


 アリアの剣が砕けるのを見てカールソンは剣に込めるオーラを増やす。

 キュミリアはアリアの時と同じくカールソンにも剣をぶつけたがオーラを多く込めたおかげで剣は砕けなかった。


 その代わりに大きく刃こぼれはしてしまった。


「アリア、大丈夫?」


 まだ黒いモヤも残っている。

 アリアに迫る黒いモヤをジェーンが切り裂いて庇うように前に出る。


 砕け散った剣のカケラがかすめたためにアリアの頬は浅く切れて血が流れている。


「くっ……」


 アリアは砕けてしまった剣を投げ捨てる。

 やはり練習用の剣では限界があった。


「どうすれば……」


 素手でもある程度戦えるけれど高レベルの相手に素手で挑むのは自殺行為がすぎる。


「ア……リア」


「師匠!」


 武器がなければ戦うことができない。

 一転して今度は自分が足手まといになってしまったことに焦っているとかすれたアルドルトの声が聞こえてきた。


 床に倒れたままアルドルトはなんとか顔だけを上げてアリアのことを見ていた。


「アー……モルエ」


 プルプルと震える手を動かして指をさす。


「アーモルエ……」


 アリアはアルドルトが指をさした方に視線を向けた。

 そこには箱があった。


「そうですわ!」


 アリアは走り出した。

 キュミリアもアリアのことはチラリと確認したが剣も持たないアリアでは何をしても構わないとすぐにカールソンとの戦いに戻った。


「アリア危ない!」


「はっ!」


 回り込むように伸びてきた黒いモヤをアリアはスライディングでかわしながら前に進む。


「師匠……少し早いですがお借りいたしますわ!」


 箱の前にたどり着いたアリアは素早くその中身を取り出した。


「やぁっ!」


 振り返りながら黒いモヤを切り裂く。

 箱の中に入っていたのは以前アルドルトからプレゼントされたアーモルエという魔法の杖ともなる美しき剣であった。


 大人用のサイズで、まだアリアが扱うには大きいのでアルドルトが預かっていてくれていた。

 けれど今使わずしていつ使う。


 訓練用の剣とは違って馴染んで染み込むように魔力が込められる。

 キュミリアに吸収されたされたために黒いモヤもかなり量が減っている。


 アリアは黒いモヤを切り払いながらキュミリアに向かう。


「復讐を否定するつもりはありません……ですがその過程で多くの人の悲しみを生むことは許しませんわ!」


 キュミリアがやろうとしていることはケルフィリア教の糧となり、将来的にとんでもない事件を起こす原因となる。

 アリアも復讐をしようと動いているから復讐することそのものを否定はしないがだからといって無関係な人を巻き込もうとは思わない。


 アリアとカールソンでキュミリアを攻める。

 2人の息もつかせぬ攻撃にキュミリアは防戦を強いられる。


「邪魔を……するなぁ!」


「ぐっ!」


 キュミリアが赤黒いオーラを爆発させるように放つ。

 後先を考えない全力。


 カールソンですら完全に力負けして押し返される。

 いつの間にかカールソンが持っている剣は刃こぼれだらけでボロボロになっている。


「僕は……母さんと父さんの復讐をするんだ!」


「ウゥッ!」


「危ない!」


 もはやほとんど力任せの一撃だったけれど力が強すぎて受け流しきれなかった。

 アリアの手から剣が飛んでいき、カールソンがアリアを守ろうと剣を振る。


 とうとうカールソンの剣が耐えきれなくなって折れてしまう。


「終わりだ!」


「そうはさせませんわ! ……うっ!」


 アリアもカールソンも武器を失った。

 キュミリアが歪んだ笑みを浮かべてカールソンの首を切ろうとした。


 アリアは飛ばされたアーモルエに手を伸ばして魔法を発動させた。

 ここまででかなりオーラを消耗した。


 魔力の残りも少なくまだ魔法も未熟なアリアの頭に鈍い痛みが走るがそれでもアリアは止まらない。

 念属性の魔法。


 アーモルエが浮かび上がってキュミリアに向かって飛んでいく。


「ふん、魔法なんか通じない……と」


 黒いモヤがキュミリアを守るように集まっていき、キュミリアはアリアの足掻きに余裕を見せていた。

 防ぐ素振りもなくそのままカールソンを倒そうとしていた。


 黒いモヤに当たってアーモルエにかけていた魔法が解けてしまうのをアリアは感じていた。

 けれど解けたのはアーモルエを動かしていた魔法だけだった。


「な……に?」


 飛んでいくアーモルエの勢いは黒いモヤでは止めることができない。

 魔法が解けてもアーモルエの勢いはそのままに黒いモヤを突き抜けて飛んでいった。


 完全に油断していたキュミリア。

 その腹部にアーモルエは深々と突き刺さった。


「あ……ああ。ああああ!」


 ふらつきながらも剣を引き抜こうとしているキュミリアは手に力が入らなく、イタズラに刃に触れて手が切れる。

 ごぼっとキュミリアの口から黒いモヤが勢いよく飛び出してくる。


「お2人ともオーラを全開に!」


 これは危険だとアリアは本能で察した。

 カールソンとジェーンがオーラを最大限に放って身を守ろうとする中でアリアは走った。


 向かった先は床に倒れるアルドルト。

 覆いかぶさるようにしてアリアも自分に残る最後のオーラを解き放った。


 直後、黒いモヤが爆発を起こした。

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