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この世界はスキルで成り立っています2

「あとは……」


 仲間。

 ではなく下僕という言葉が頭に浮かんだ。


 1人で出来ることには限界がある。

 スキルだってアリアに出来ないことに特化したような人がいた方が何かと便利だろう。


「良い拾い物したのかもしれませんわね」


 ただ特殊な技能の持ち主に会える機会なんて多くない。

 その中で宗教的な思想に染まっていなくて、アリアに協力してくれる人なんていないとアリアは思っている。


 だからやっぱり言うことを聞かせるにはある程度の支配力を持つことが必要。

 その点でカインはアリアにとって望んでいた相手になる可能性を秘めている。


 カインはオーラユーザーだった。

 一握りの人にしか与えられないオーラを扱う才能をカインは持っていたのだ。


 ただしそのオーラのせいでカインは苦しんでいたのだけど。

 アリアはカインを一目見た瞬間からオーラユーザーだと見抜いていた。


 カインから感じるエネルギー。

 オーラを目に集中させてみるとカインの体には普通の人の目には見えないオーラがまとわれていた。


 誰でも魔力は持っているのだがオーラというのは剣などを修練し体を鍛えて研鑽を重ねた末に才能あるものだけが扱えるものだと言われている。

 稀にそうした極みに達さなくてもオーラを扱える人がいるのだけどそれがたまたまカインだった。


 さらにそうした中でも自分のオーラにやられてしまう人がたまにいるのだ。

 普通は体を鍛えてもいないような人が偶然オーラを扱えるようになってしまったこと、それにオーラを扱う術を教えてくれる人が近くにいなくてオーラを制御出来ずに自らのオーラにやられてしまうのだ。


 まさしくカインがそうであった。

 病気でありながら病気ではない。


 治療方法としてはカインがオーラを自覚して制御出来るようになれば良いのである。

 これがオーラ発現の初期段階で体力的な余裕があればよかった。


 しかしカインは平民の子供で近くにオーラを扱える人なんていなかった。

 普通の医者はオーラを扱えない上に子供が自らのオーラで苦しむなんて滅多にないことなので診察しても気付けない。


 本来なら多少の時間をかけてオーラを体に慣らしていくところ、しょうがなくアリアは荒療治的に自分のオーラを使ってカインの体に直接オーラの使い方を叩き込んだのだ。


「カインが使い物になってくだされば……」


 そうなるとカインのスキルも磨いていく必要がある。

 オーラユーザーで見た目もいいなら良いとこのお嬢さん1人ぐらいはたらしこめるだろうし、使い方の夢は広がっていく。


 しかし当然ながらアリアは剣など習ったことはなくカインにも教えられない。


「オーラユーザーの先生が必要ですわね」


 オーラユーザーなら大体剣にも優れている。

 ただ変な人に預けるとケルフィリア教に染まってしまう可能性もある。


 アリアの手元に置いてしまっては才能を腐らせてしまうのでこのままにしておくつもりはないけれどオーラユーザーの先生に心当たりはない。

 しかしこの家に引き入れるつもりはない。


 家督争いで没落する家にいたところで結局才能が腐ってしまうことに変わりがないからだ。


「ふぅ……」


 アリアはペンを置いて背もたれに体重を預けて天井を見上げる。

 もう少し、もうほんのちょっと回帰前生きられたならケルフィリア教と戦った家門が分かったはずだ。


 つまりその家門はケルフィリア教に染まらず正義のために戦うことを選んだ家でカインを預けるのにピッタリなところがあると考えた。


「第三王子……」


 少ない回帰前の記憶を手繰り寄せて考える。

 話によると第三王子はケルフィリア教と戦った。


 ならばケルフィリア教ではない。

 ついでに第三王子は早いうちからオーラユーザーを修練していたオーラユーザーである。


 上手く第三王子の従者か何かで送り込めればきっとオーラユーザーとしての教育も受けられるし、第三王子と縁を繋いで置けるのは良い。


「問題はどう送り込むか、ですわ」


 ある程度成長した時には第三王子とも多少の縁があったけれど今この段階では第三王子とアリアは他人。

 いきなり平民の子供を連れていっても会ってもくれないだろう。


「他にケルフィリア教に関係ない人……」


「お嬢様?


 入ってもよろしいですか?」


「カールソン……」


「誰でしょうか、カールソンって?」


 開けっぱなしのドアからシェカルテが顔を覗かせた。

 ノックもせずに入るようなことはもうしないが少しばかり馴れ馴れしくなった気がする。


 入るなと言わない以上は入ってもいい。

 何度もしつこくノックしたり聞いたりするとアリアは怒るのでちゃんと顔色を窺ってシェカルテは入ってくる。


「家門の名前は……」


 むむむとアリアは口に軽く握った拳を当てて考える。

 カールソンは回帰前にケルフィリア教をどうにかしようとして消されてしまった実力者の名前だ。


 黒騎士団の団長にまで若くして上り詰めたのだけどケルフィリア教によって消されてしまった。

 うっすらとカールソンの情報がアリアの中にはある。


 未婚でオーラユーザー、顔もそこそこ良くて将来も有望。

 お嬢さん方の話題に上がるのにも十分な素質な人だった。


 名前だけじゃなく家門も聞いたはず。

 よほど排他的じゃなきゃ王子よりは接触しやすいはずだ。

 

 アリアは思い出そうと努力する。


「何かお考えのようで。


 お茶でも淹れてきましょうか?」


「………………カンバーレンド」


「へっ?」


「カールソン・カンバーレンドですわ」


 思い出した。

 未来の黒騎士団団長カールソン・カンバーレンド。


「シェカルテ、カンバーレンドを調べなさい」


「カンバーレンドですか?」


「あなたの弟の未来がかかっているかもしれませんわ」

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