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闇に堕ちた孫5

 このままではキュミリアを倒す前にオーラが尽きてしまう。


「まどろっこしいなぁ」


「アリア!」


「くうっ!」


 黒いモヤに気を取られていた。

 いつの間にかキュミリア本人がアリアの横に近づいていて剣を振り下ろす。


 ジェーンの声でなんとか反応できたアリアであるがキュミリアまで動き始めてしまったらマズイ。

 これまでアリアはオーラを不意打ち的に使ってきた。


 アリアがオーラを使えることを知らないことをアドバンテージとしてオーラを使った一撃で圧倒的な不利な相手に勝ってきた。

 けれどもうオーラが使えることはキュミリアに知られてしまっている。


 剣術のレベルとしてはキュミリアの方が遥かにレベルが高く、オーラを扱えたとしてもその差を埋めるのは容易ではない。

 その上黒いモヤというわけの分からないものまであってはアリアの勝ち目は薄い。


「ですか諦めませんわ」


 自らの復讐を遂げるまで。

 アリアはたとえ不利でも諦めたりはしない。


「はああっ!」


 けれどキュミリアが持っているのは真剣だった。

 オーラがなくとも普通に切れる。


「ア、アリア……」


 キュミリアの剣がかすめてアリアの腕が浅く切られた。

 本気で殺すつもりなのはもう分かっている。


 けれどジェーンは動けないでいた。

 何をしたらいいのか分からずただただアリアに守られて戦いを見ていることしかできなかった。


「何をしたらいいの……」


 ジェーンだってまだ子供だ。

 何かの判断をするには経験も足りていない。


 その時にジェーンは気がついた。

 体が自然とオーラをまとっていることに。


 クリームのオーラがジェーンの意思とは関係なく体にまとわれている。

 このことが意味するのは本能的に危険を感じているということだ。


 黒いモヤにキュミリアのことを体は敵、脅威だと感じている。


「こんなの……間違ってる……」


 ジェーンの目から涙があふれてくる。

 もう感情もぐちゃぐちゃで頭の中も整理ができない。


 けれどキュミリアのやろうとしていることが正しくない行いであることは分かる。

 嫌われていてもいい。


 誰かがキュミリアを止めねばならない。

 そして今キュミリアを止められるのはここにいる人しかいないのである。


「ほら、後ろも見なきゃいけないよ?」


 キュミリアがアリアに押し付けるように剣を振る。

 明らかに力で劣るアリアに不利な鍔迫り合いになるがキュミリアはあえて押し切らない。


 歪んだ笑みを浮かべるキュミリア。

 アリアの後ろから黒いモヤが迫る。


「させない!」


「ジェーン先輩」


 泣きながら立ち上がった。

 涙を流しながらオーラを操った。


 苦しみながらも戦うと決めた。

 ジェーンがオーラをまとった剣で黒いモヤを切り裂いた。


「アリア、ごめんなさい。私も戦う」


 誰かではなく自分にできるのならとジェーンは涙を手の甲で拭った。


「でも……まだキュミリアと戦う心の準備は出来てないの……だからあの黒いのは私に任せて」


「……厳しいことをおっしゃいますわ」


 たとえ黒いモヤの心配をしなくて良くなったとしてもキュミリアの相手をするのはアリアにとってはかなりキツイ。

 しかしまだキュミリアと直接戦う覚悟のないジェーンをキュミリアにぶつけるのは酷な話。


 下手するとアリアが戦うよりも危険かもしれない。


「ああああっ!」


「すいません。あなたよりも大切なものがあるので」


 キュミリアが参戦したのはカールソンも見ていた。

 早くアリアのところに行かねばならないと覚悟を決めた。


 腕を切り飛ばされてモーダメルが叫び声を上げる。

 無力化するためにはある程度の強い攻撃を加えなきゃいけない、あるいは命すら奪うこともカールソンの視野には入っていた。


「ぐあっ!」


 怯んだモーダメルの胸にカールソンの蹴りが直撃する。

 オーラで強化した足から繰り出される蹴りは意外と強力でモーダメルは強かに壁に体を打ち付けて動かなくなる。


「アリア!」


「お待ちしておりましたわ」


「チッ!」


 押され気味だったアリアだがカールソンも加わって押し返すとキュミリアが盛大に舌打ちする。


「さて……これでこちらが有利そうですわね」


 カールソンも純粋な技量だけでいえばキュミリアには勝てていない。

 それでもアリアと比べると差は小さい。


 ましてオーラを使い、アリアとの共闘であるならば勝機は十分にある。


「とことん邪魔……してくれるようだな!」


 キュミリアが手に持っていたレリーフを高く掲げた。


「何をするつもりだ!」


 アルドルトを拘束していた黒いモヤがキュミリアに集まっていく。

 アルドルトは力なく床に倒れ、キュミリアの口に黒いモヤが吸い込まれていく。


「カールソン!」


 嫌な予感がする。

 アリアは今のうちにキュミリアを倒そうと走り出し、カールソンもそれに続く。


「はああああっ!」


 紅いオーラをまとった剣をアリアは振り下ろした。


「ああっ!」


 シュルリと黒いモヤのほとんどを飲み込んだキュミリアの体から赤黒いオーラが噴き出した。

 アリアたちとは違う濁っていて美しさのない赤黒いオーラは黒いモヤにも似ている。


 キュミリアが赤黒いオーラをまとった剣を振り上げてアリアの剣とぶつけた。

 するとアリアの剣が砕け散ってしまう。

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