表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
188/323

闇に堕ちた孫4

「なんだよ、友達ヅラか? 僕はな……お前が嫌いなんだよ」


「えっ……」


「剣の才能があって良い子ちゃんで周りの人望もあって……その上オーラまで使える。ムカつくんだよ……ジェーン、お前をクラブ長にするっていう話もあったんだ。

 僕がどれだけ努力を重ねてきたと思う! それなのにボヤボヤと生きているお前ばかり恵まれて。だから僕はお前が嫌いなんだよ!

 お前を見てると反吐が出るんだよ!」


「そんな……」


 ひどい言葉にジェーンの目から涙が流れる。


「ジェーン先輩、諦めてください。彼はキュミリア先輩であってキュミリア先輩ではありません」


 もはや目の前にいるキュミリアは知っているキュミリアだと思わない方がいい。

 復讐に囚われて正常な考えの出来ていない異常者である。


「アリア・エルダン。お前も気に入らなかった名家のお嬢様として生まれて……なぜ剣などを握る? ジェーンにすら肉薄するような才能……さらにはオーラまで!

 ムカつく……ジジイの弟子になったこともそうだ! 全部が気に入らない」


「……ふっ」


「あっ?」


 目を血走らせて叫ぶキュミリアにアリアは思わず笑いが抑えきれなかった。


「子供の癇癪……」


 クスクスと笑うアリア。


「ママンがいないから怒りをぶつける相手が欲しかったのですか?」


 おそらく両親の復讐は根底にあるのだろう。

 しかし話を聞いているとキュミリアの中に大きな嫉妬も渦巻いていることが分かる。


 両親のための復讐、幼いが故にどうしようもない環境もキュミリアの憎悪を膨らませているが努力しても実らない実力や開花しないオーラの才能というところにもキュミリアは怒りを抱えている。

 アリアは思う。


 キュミリアにオーラの才能があって周りを見返してチヤホヤされていたのならきっとこんなことにはなっていなかったと。

 なんとしてでも復讐を成し遂げるのではなく、何か一つボタンを掛け違えていたらこのようなことは起きなかったかもしれない。


 浅いと思った。

 アリアの復讐はなんとしてでも成し遂げるつもりだ。


 オーラがあろうとエルダン家として認められて悠々自適な生活を送れるようになろうとアリアは復讐を成し遂げる強い意思がある。

 キュミリアのそれは子供の癇癪のようなものだ。


 おそらく黒いモヤも自分の力ではない。

 誰かがそそのかして復讐心と嫉妬心を煽り立ててキュミリアをこうしたのだ。


 くだらない。

 己の心で燃やした復讐ではない。


「なんだと……なんだと!」


「あなたがやっていることは親の愛情を受けられず周りに認められないで暴れているただのお子様ですわ」


「……うるさい! お前に僕の気持ちが分かるもんか!」


「復讐は利用するものであって利用されるものではありませんことよ」


 復讐するのは別に構わない。

 しかし復讐の炎は自ら燃やして利用していくものである。


 それを都合よく誰かに利用されて復讐してはいけないのである。


「な、なにこれ!」


「ジェーン先輩!」


 いつの間にか伸びていた黒いモヤがジェーンの腕にからみついていた。


「離れろ……くっ!」


 振り解こうと黒いモヤを掴んだ逆の手もモヤに捕らわれてしまう。


「あ、ありがとう……」


「ジェーン先輩、剣を取ってください。さもなきゃここから逃げて人でも呼んできてください」


 アリアはオーラをまとった剣で黒いモヤを切り払う。


「私たちが出来るのはキュミリアを止めてやることだけですわ。そうするつもりがないのならジェーン先輩はただの足手まといにしかなりませんですわ」


 再び黒いモヤが後ろに迫ってきていてアリアは振り返り様に切り裂く。

 やっぱり置いてくればよかったと思う。


 思いを断ち切れず女々しく立ち直れないだけならば誰にでも出来る。

 わずかな期待を持ってジェーンも連れてきてみたけれどやはり衝撃が大きすぎた。


 オーラを使えようと一般的な人だったかとアリアは黒いモヤを切り裂く。


「カールソンは……」


 それにしてもカールソンの方も遅い。

 掃除のおばちゃんぐらいさっさと倒せるはずなのにとチラリと視線を向ける。


「な……」


 カールソンとモーダメルの戦いを見てアリアは驚いた。

 モーダメルが黒いオーラをまとっていたのである。


 赤黒いような濁った美しさのないオーラ。

 モーダメルは目鼻から血を流して手を震わせながらカールソンに切りかかっている。


 カールソンはなんとか生かしたままモーダメルを制圧しようとしている。

 いくつもの切り傷がモーダメルには見られるが全くそれを意に介していないようにナイフを振るっている。


 血を流し、濁ったオーラをまとうモーダメルは生きているのに死人のようにすら見えた。

 強いといってもカールソンもまだ子供である。


 未来の騎士団長も今は実戦の経験もない。

 切り倒してしまえば楽なのにその決断が下せていない。


「チッ……!」


 アリアの方も黒いモヤの勢いが強くて攻め込めないでいる。

 ジェーンも見捨てきれずに活路が見出せない。


 それに持っている剣も悪い。

 今アリアたちが持っている剣は訓練用に刃潰しされたもので戦うための剣ではない。


 ユーケーンが用意したものなので品質は悪くないけれどオーラなども使うのにも適したものではない。

 切れないしオーラに適していない剣で無理矢理戦っているので消耗も激しくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ