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ご学友2

「あなたことは色々と聞いています」


「カールソン様とのお噂のことでしょうか?」


「あはは、まあそうしたことも含めて……」


「本当にあの堅物と付き合ってるのか?」


 やぶ蛇だったかもしれないとデレクが笑って誤魔化そうとしたところをジーカーがストレートに質問する。

 なんでこんな可愛い子がカールソンと付き合っていることになっているのか分からないと言った顔をしている。


「おい、ジーカー!」


 デレクが慌ててジーカーの口を塞ごうとするがジーカーはデレクをひょいとかわす。


「私は構いませんがカールソン様からお聞きになられていなくて?」


「聞いても言葉を濁して答えないんだ。イエスかノー、それだけでいいのにさ。

 俺の予想では婚約は本当、カールソンも実は乗り気だけどエルダン嬢が乗り気じゃなくて振られそうだから何も言えない。だと思ってる」


 本人を前にしてよくそんな大胆な予想を口に出来るものだとアリアは思う。

 ジーカーを止めなきゃいけないがデレクは今にも剣を抜きそうになっているカールソンの方をなだめるのに必死だ。


「ふふっ」


「何がおかしいんだい?」


「いえ……カールソン様にも面白いご学友がいらっしゃったのだなと」


 アリアは思わず笑ってしまった。

 ジーカーの言う堅物という言葉通りカールソンはあまり他の人に心を開かない。


 孤独ではないが孤高という雰囲気もあるのだけどこうした友人もいるのかと少し安心した。

 あとはジーカーに対して怒ったりしているような感情をあらわにしているところもちょっとだけ面白かった。


 クスクスと笑うアリアにジーカーは不思議そうに首を傾げた。


「私とカールソン様はお付き合いしていませんわ。婚約もしておりません」


 他の人ならば言葉を濁すような返事をしてもいいがカールソンの友人ならちゃんと伝えるべきだろうとアリアは答えた。

 少しカールソンがショックを受けたような顔をしている理由が気になるが事実付き合ってもいないし婚約関係にもないのだからそう答えるしかない。


「そっか……」


 ジーカーがチラリとカールソンを見る。

 珍しく動揺が隠せていない。


 もしかしたら自分の予想は半分当たりだったのかなとジーカーは思った。


「ですが親しい友人であるとは思っています」


 一応フォロー入れておく。

 カールソンは自分に不利益があることも分かった上でアリアとの関係について否定も肯定もしなかった。


 もしカールソンとの噂がなかったら他の色々なことを人は見つけ出してきただろう。

 ビスソラダがケルフィリア教だったことやアリアがゴラックの実子ではないこと、第三王子についたと思われていることなどアリアの身の回りに関する話はたくさんある。


 そんな話題を押し退けて事実がわからなく、かつ噂となりやすい婚約関係の話を放置してアリアをそうした噂話に晒されることからカールソンは守ってくれていた。

 婚約関係にはないが感謝しているし友人であるとは思っている。


 今度はカールソンが嬉しそうな顔を浮かべる。

 遠目に見たらショックを受けているのも嬉しそうなのもわからないぐらいのものであるが確かに表情は変化していた。


 デレクはそんなカールソンの顔を見てアカデミーに隕石でも降るのではないかと思った。


「カールソン様の名誉のために言っておくと噂はあくまでも噂ということですわ」


「ふぅーん。でも……」


 カールソンの方は噂でなくても構わない。

 そう思っているのではないかとジーカーは感じた。


「ま、いいか」


 カールソンがどう思っていようが今のところアリアにそのつもりはあまりなさそうだとも同時に思う。

 カールソンに気があったり、あるいは少しでもズルい女性ならカールソンとの噂を噂のままにしないで既成事実化しようとしたはず。


 それなのにアリアはカールソンの前でキッパリと違うと言い切った。

 カールソンとのことを詰められても乙女の顔をしない。


 ジーカーは友人に同情する。

 この子は厳しいぞ、と。


 噂をただの噂として考えている。

 ズルい女ではあるがカールソンを手に入れるためじゃなくカールソンを火の粉を払うために利用している。


 非常にしたたかさのある女性。

 恋愛下手、口下手なカールソンに手に負える相手だろうかとジーカーは心配になった。


 だけどそんな相手だから今まで女性に興味を示さなかったカールソンが興味を持ったのかもしれない。


「まっ、友人としてカールソンのこと頼むよ。こいつ全く女っ気ないから少しは教えて……」


「黙れ」


「いでででで!」


 カールソンは怒った目をしてジーカーの鼻を摘んで思い切りつねり上げる。

 流石のデレクもこれは止めるつもりはなかった。


「すまない、アリア」


「いいんですわ。カールソン様にこのような関係の方がいらっしゃることが分かって良かったですわ」


「それで……そのお昼でも……」


「申し訳ありません、カールソン様。今日はやらねばならないことがありますの」


「そ、そう……」


「別に嫌だからとかではないのでまた今度誘ってください」


「分かった。ぜひとも今度は一緒に食事でも」


「ええ、それでは失礼いたしますわ」


 食事を共にするぐらいは構わない。

 けれど今はペイガイドから受け取った手紙が気になってしまう。


 内容によっては今後の対策を考える必要もある。

 食事の誘いを断られた友人の肩にジーカーはそっと手を乗せてまた鼻をねじられていたのであった。

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