この世界はスキルで成り立っています1
アリアはペンを片手に机に向かっていた。
考えるべきこと、やるべきことがたくさんある。
つい先日もカインを助けるために力を使いすぎて倒れてしまった。
夜になる前にアリアは目を覚まして屋敷に馬車で送ってもらったので他の人がアリアが倒れたとか知る者はいない。
体調不良で顔は真っ青だったけれどアリアを見にくる人もいないのでそのままベッドに倒れ込むようにしてまた寝てしまった。
考えが甘かった。
どうにかなるだろうと思っていたけどやってみるとギリギリのところだった。
その甲斐はあってカインの不調は落ち着いた。
結果的にシェカルテの態度はさらに軟化してアリアの希望を先回りして意思を汲み取るようにまでなった。
ほっといてくれるぐらいがちょうどいいのでアリアの希望を逆に汲み取れていないとは言えるがこれまでよりは良いので放っておく。
「まずは自分の能力を鍛える……」
サラサラと紙に書いていく。
『オーラのレベルが上がりました。
オーラレベル3→4』
カインを治して目が覚めるとこの表示が目の前にあった。
この世界にはスキルとスキルレベルがある。
多くのことにスキルがあって、その熟練度や習熟度によってスキルレベルが上がっていく。
スキルレベルが上がると不思議なことにそのスキルに関することが上手くなるのだ。
代表的なものは剣術スキル。
例えば同じ体格で同じような経験のものが戦ったとしてこの時にスキルレベルが違えば勝つのは大体スキルレベルが高い方である。
1つレベルが違うだけならまだしもレベルが3つ違えば厳しく、5つ違えば勝つことはほぼ出来ないと言える。
スキルレベルが高い方が動きが洗練されて無駄なく技量を十分に発揮することが出来るようになるのだ。
だからスキルレベルはとても大切である。
回帰前のアリアはオーラを扱えなかった。
だからオーラのレベルは0であるはずなのにオーラのレベルは回帰前に上がった3であった。
カインを治療するのにオーラを使ったのでそれでさらにレベルアップして4になっていた。
スキルレベルを確認するには教会に行って鑑定してもらうかレベルアップさせるしかない。
他のスキルレベルがそのままならありがたい話だけど何となくそんな気はしていない。
「オーラだけ特別なのかしら……?」
上げたいスキルのうちの1つがオーラだから全く構わないのだけどおかしなことである。
回帰なんて現象も普通にはあり得ないことなのでこうしたこともありうるかと疑問は頭の隅に追いやる。
上げたいスキルを書き出していくアリア。
剣術はマスト。
回帰前に良いようにあしらわれてしまったのは剣術のレベルが低くて全く相手にならなかったから。
何者かは知らないけれど黒いオーラの男はきっと敵になる。
いざという時には正面から倒せるだけの実力は付けておかねばならない。
あとは体術も必要。
こちらは体を動かすことで上がるスキルで体力の消耗を抑え、体の動きを良くしてくれる。
今のアリアは貧弱すぎる。
少しずつでも体を動かして体力を付けて体術レベルを上げておけば絶対に役に立つ。
出来るなら槍や短剣、盾など剣以外のスキルも少し身につけておきたい。
そして1番上げたいのはオーラである。
オーラを使えるものと使えないものでは大きな差がある。
オーラは魔力と呼ばれるエネルギーを操る技術で身や物にまとわせる運用が基本的である。
仮にレベルの差が3つあったとしてもオーラが使えるならその差を埋めることだって可能なのである。
なのでオーラを扱えるオーラユーザーは単にスキルレベルに囚われず格上の相手でも戦うことが出来るので重宝される。
回帰前のアリアはオーラは扱えたが目立つことを嫌って基礎的な扱いとオーラの隠し方しか習わなかった。
「……先生」
とある人から習ったもので、ふとその人の顔が頭を掠めた。
「今回は無駄なことはしない……」
そしてスキルは何も戦いにおけるようなものだけではない。
回帰前のアリアが必死になって伸ばしていたスキルは刺繍スキルである。
今覚えばなんてくだらないことに時間を使ったのだと後悔している。
社交界の花であるためにはその見た目だけではなく女性として求められるスキルがあるのだ。
その筆頭にあったのが刺繍で他にも礼儀作法スキル、ダンススキルなどがあった。
ただそんなものは何の役にも立たなかった。
多少スキルレベルを上げることで利用価値はないこともないが必死になって上げるものじゃない。
特に刺繍なんて醜い女性たちの足の引っ張りあいのためだけにやっていたようなものだ。
だから回帰した今は戦闘系スキルを中心に上げてるつもりだ。
「あとは料理ですわね」
料理スキル。
アリアはこのスキルの重要さを実感した。
金持ちなら料理人がいるからいいが、全てを失っていざ料理しようとした時にこれほどまでに料理スキルが欲しいと思ったことはなかった。
料理スキルを上げると料理も美味しくなるし、食材も無駄にならず効率も上がって料理時間が短くなる。
最終的にはこの家を出ていくのだからこうしたスキルは今のうちに上げておきたい。