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2人の師匠、1人の弟子2

「ともあれべニャルトス卿がアリアの師になることは私としても文句はありません。今日はお礼と挨拶、そしてご相談のためにお伺いさせていただきまして」


「ホッホッホ、アルドルトで構いません。ワシの方こそ、魔法も操るオーラユーザーのことは噂として聞き及んでいましたからね。

 それでご相談とは?」


「アリアについてです」


「私ですか?」


「暇だからアカデミーに来たけれど……」


 暇だから来たんかいと思うがアリアはそれを口には出さない。


「せっかく魔法の師を見つけたのだからそちらに重点的に習う方がいいだろう。オーラについてはエルダン戻ってからでもいい。

 そこの配分というか、どう指導していくかの話し合いをしたいと思いまして」


 ヘカトケイとしてはアカデミーにいる間もある程度指導していくつもりはある。

 けれどアリアが良い師匠に魔法を習える。


 さらにはそれがアカデミーにいる間のことだけというのならアルドルトとの時間を優先すべきだと考えていた。


「ふむ、これまで通りで構わんと思っているよ」


「今はどうなさっているのですか?」


「アリアから授業のスケジュールは聞いている。休講になるものなどもワシの方で把握しておるからワシが教えられそうな時間があればこれをアリアのところに飛ばしておる」


 アルドルトが指を動かすとアルドルトのデスクから何かが飛んできた。

 トンとアルドルトの指に止まったのは木で作られたトリだった。


 アリアの空き時間がある時にアルドルトに空きがあって教えられる時などがあるとどこからともなく木のトリが飛んできて伝えてくれるのである。


「そうですか。では私の方にも飛ばしていただけますか?」


「ならばそうしよう」


 別に楽しようだなんて考えてはないが休む間もなさそうだなとアリアは思った。


「お話ししたかったことはできました」


「であるならワシから一つよいかな?」


「何かありますか?」


「ワシに魔法を習ってみるつもりはないかな?」


「ん? アリアはもう……」


「いやいや、アリアではなくあなたがです」


 アルドルトはヘカトケイを見ている。

 ヘカトケイに魔法を習ってみないかと提案したのだ。


「アリアから少し話はうかがいました。どうやら独学で魔法を習得して使っていると」


「ええ、そうです」


「僭越ながら空いている時間でよければワシが魔法を教えましょう」


「しかし私ももう年です。今から魔法を学ぶのは……」


「ホッホ、学びに年齢など関係ないですぞ。魔法はいくつからでも、いつでも学ぶことができます。独学でそこまで出来るようになったのならば学べばより活用することも出来るでしょう」


 アルドルトは優しく笑う。

 魔法を学び始めるのに遅すぎることなどない。


 いつだって学び始めることができる。

 何かの基本はあるのだろうけどほとんど独学で魔法というものを身につけたヘカトケイなら魔法の才覚もあるだろうと考えていた。


 アカデミーにいても暇な時間はあるだろうからそうした時間の都合がつけば魔法を教えることもやぶさかではない。


「……ヘカトケイ師匠、お引き受けになってはいかがでしょうか?」


 会話を静観していたアリアがヘカトケイと視線を合わせた。


「アリアがそう言うのなら、少し学んでみるかね」


 アリアの視線に何かを感じ取った。

 ヘカトケイの意思を尊重しそうなアリアが勧めるのだから思惑があるはずだと思った。


 勘のいいヘカトケイだからアリアの視線と言葉の意味に気がつける。

 ヘカトケイが魔法を学ぼうと学ばまいとアリアにはどちらでもいい話。


 しかしアルドルトのところにヘカトケイが行く機会が増えればアルドルトの不幸な事件を未然に防げるかもしれないと思った。

 魔法のプロフェッショナルとオーラのプロフェッショナルが2人している場面でアルドルトを殺そうとしても成功の確率は非常に低くなる。


 だからヘカトケイに魔法を学ぶように勧めてみた。

 ヘカトケイの魔法が上達してより強くなってくれればアリアとしても都合が良い。


「早速少し授業といこうか」


 元々この時間はアルドルトが空いていてアリアも魔法を学びにくるはずの時間だった。

 話を終えてもまだ時間は余っていた。


 アリアは魔法を練習し、アルドルトはアリアにやったように魔法についての初歩的なことからヘカトケイに教え始めた。


「ふぅーん……なかなか面白そうだねぇ」


 意外と聞いてみると面白い。

 思いの外ヘカトケイは真面目にアルドルトの授業を聞いていたのであった。

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