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2人の師匠、1人の弟子1

 ヘカトケイが突如アカデミーに現れるイレギュラーはあったもののあくまでユーケーンの特別顧問であり、通常の授業に顔を出すものではない。

 そのためにアリア周りでの変化は特になかった。


 ジェーンはアリアの誘いに対して答えは出していないがそれで何か態度に変化をさせることはなかった。

 むしろより積極的にオーラを学ぼうとしていた。


「おっと失礼……あ、アリア嬢じゃないか」


「ごきげんよう、キュミリア先輩」


「どうしてこんなところに?」


「特別顧問のヘカトケイ先生を学園長のところにご案内しに来たのですわ」


「ああ、そうなんだ」


 アリアはヘカトケイを連れてアルドルトのところを訪れようとしていた。

 実はまだ直接会ったことはなくてユーケーンの顧問の先生を介して今回の特別顧問の件も決まった。


 だからいつかは挨拶にでもヘカトケイは思っていた。

 アリアがちょうどアルドルトに教えを受けにいくというのでそれならばとヘカトケイもついてくることになったのだ。


 学長室についてノックしようとしたらドアが開いた。

 中から出てきたのはキュミリアで目の前にアリアがいて驚いたような顔をしていた。


 アリアはすぐさま軽く微笑むとスカートをつまみ上げて挨拶をする。


「ヘカトケイ先生もどうも。今度ぜひ僕もご指導ください。それでは次の授業があるので失礼します」


 少し急いでいるようでさっくりと挨拶をするとキュミリアは行ってしまった。

 オーラユーザーではないキュミリアをヘカトケイが見る機会は少ない。


 キュミリア自身も学園対抗戦なんかの準備で忙しいのかユーケーンに顔を出す時間も減っていた。


「おやアリア、そちらの方は……」


 会話が聞こえてきたのでアルドルトが顔を出した。


「ヘカトケイと申します。魔法の世界で名高いアルドルト・べニャルトス学園長に会えて光栄です」


 珍しくヘカトケイの方から手を差し出した。


「あなたが噂の。ササシュドル先生を殴り倒して特別顧問になったと聞いていたからどのような人かと思えば……このような麗人だとは思いもしませんでした」


「ふふ、お褒めいただきありがとうございます」


「このような場所で立ち話もなんですから中へどうぞ」


 誰に対してもヘカトケイはヘカトケイの態度を崩さないがアルドルトには非常に丁寧に接している。


「ミチュト、お客様だ。お茶をお願いできるかな?」


「はい、学園長」


「どうぞこちらにお座りください」


「ありがとうございます」


 来客用のソファーにヘカトケイとアリアで並んで座る。


「改めて、アルドルト・べニャルトスです。ササシュドル先生だけのことではなく、お話はうかがっております」


「それはどのような話か気になりますね。な、アリア?」


「そうでしょうか……」


 特に悪口を吹き込んだことはないがヘカトケイの圧に何かまずいことでも言ってないかと必死に記憶を探る。

 悪いことしていないのにしたような気分にさせられるから不思議である。


「この未熟な弟子を魔法の方でも弟子にしてくれたとか」


「未熟などではないですよ。才覚に溢れ努力を怠らない。

 ワシの孫にしたいぐらいです」


「孫?」


 アリアはアルドルトの言葉に少し引っかかりを覚えた。

 子にしたいぐらいというのなら分かる。


 年齢的には孫と祖父の関係性ほど離れているがこの場合言うなれば養子にするなどの直接自分の子供にするというのが普通である。

 孫にしたいという気持ちも分からないではないが口に出していうには少しおかしな感じがあるのだ。


 まるで子供でもいるみたいに聞こえた。


「……ワシにも子がいたのだよ」


 アルドルトは寂しげに笑った。


「まだワシも若かった。あの子の夫を認めてやれず……あの子はワシの元を去った。

 会いたくて探してみたが見つけられんくてな。もしかしたら孫がいるかもしれないのだ。

 アリア、お主ぐらい……いや、もう少し大きいくらいかな」


 アルドルトが全てをかけてもアルドルトの子は見つけられなかった。

 途中で痕跡が途切れてしまった。


 おそらくは亡くなってしまったためだろうとアルドルトは悲しげに呟いた。

 もしかしたら孫は生きてどこかにいるかもしれない。


 そんな想いがアリアが孫だったらとアルドルトに思わせたのだ。


「……すまないな、初対面でこのような話」


「いえ、私もアリアのことは実の娘のように思っています。気持ちはわかりますよ」


「師匠……」


「それはどっちの師匠を呼んでいるんだい?」


 ある意味どっちの師匠もである。

 アルドルトの過去にも驚いたがヘカトケイがさらりといった娘のように思っているという言葉にも驚いた。


「ホッホッ、愛されておるのぅ」


 アルドルトがあごひげを撫でながら優しく笑う。


「それにしてもヘカトケイ殿はワシがアリアの師になっても大丈夫ですかな? アリアは大丈夫と言うがこうしたことはハッキリさせておかねばならないからのぅ」


「むしろお願いしたいぐらいです。私が納得するような人ならいいと言ったが……まさか稀代の魔法使いを師匠にするとはね」


「そのような呼び方、もう昔のことです」


 何はともあれヘカトケイはアルドルトのことを知っていて敬意を払っている。

 もし気に入らなかったらどうしようとか考えていたけれどオーラの師匠、魔法の師匠と同時に師匠を持つことに師匠たちは問題がないようだ。

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