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悪い女、引き抜きをかける2

「オーラユーザーの師匠を見つけるのはとても大変ですわ」


 回帰前にジェーンがどうやってオーラの鍛錬をしたのか知らないけれどもしかしたらアカデミーを出た後に騎士団などで習ったのかもしれない。

 アリアの言葉にジェーンはなんの自慢だと少し悔しそうな顔をした。


 ジェーンは卒業も近いのでここでヘカトケイに出会えたとしても教えてもらえる期間は長くない。

 アカデミーですらオーラユーザーの先生を確保できないのだから何のツテもないジェーンだと一生出逢えない可能性もあると思った。


「つかぬことをおうかがいしますがジェーン先輩、卒業後のご進路は?」


「卒業後……ですか? 今のところまだ決めてはいませんが」


 コネや強い目的がない限り卒業後どうするのかまだ明確な人は少ない。

 ユーケーンであればそれだけで一つ箔がついて誘いもあるだろうがアカデミーの中にいる限り外部からの接触は非常に限られる。


 ユーケーンの本領発揮は学園対抗戦になる。

 外部の人間も招かれて観戦もするのでここで力のアピールにもなるし外部からのお誘いもあったりする。


 熱心なところだとアカデミー内の噂や能力を調べ上げて外出日を待って接触される人もいるがジェーンにはそうしたことはなかった。

 オーラユーザーなので話はあってもおかしくないが女性が故だろうか熱心な注目は浴びていないのである。


 ジェーンの希望としてはいくつか候補はあるがどれか一つに決めているということはなかった。


「……我が家にいらっしゃいませんか?」


「えっ?」


「ライバル、切磋琢磨する仲間、あるいは私のナイトとしてエルダンに来るつもりはありませんか?」


 真っ直ぐにジェーンの目を見つめるアリア。

 戦いの昂りからまだうっすらと紅いオーラをまとうアリアは穏やかに笑いながら威風堂々とジェーンの前に立っている。


 なぜだろうか。

 背の高いジェーンに比べてアリアはまだまだ小さい。


 それなのにアリアの姿がどこか大きく見える。


「ちょうど我が家にはオーラを教えてくれる先生もいますしオーラを鍛錬する上では同じくオーラユーザーがいると良いと聞きます。

 もっと強くなりたくありませんか?」


 ジェーンの心が揺れる。

 エルダンは大きな家門で騎士も多く抱えている。


 お金もあるのでもちろん将来的な心配も少ない。

 だがジェーンが心惹かれるのはそこではない。


 より強くなれる環境。

 それがジェーンの心を揺らしていた。


 今現在もかなり楽しい。

 アリアの実力は高く、手合わせしているだけでもレベルが上がった。


 近い実力の人と戦うだけでも経験となり、自分の力につながってくる。

 これまでジェーンのオーラのレベルは上がらずに頭打ちだった。


 もっと強くなれるのならとジェーンの胸が高鳴る。


「もちろん今すぐ決めなくても構いません。

 ですが私のところに来てくださるなら……退屈はさせません」


 こんなに心ときめく誘いがあっただろうか。


「か、考えさせてください……」


 急に誘われても決められない。

 激しく鼓動する心臓を押さえるように胸を握ったジェーンは一度冷静になる必要があると思った。


「このような提案言われても決められないと思います。

 ジェーン先輩ほどのお方なら他にもきっとお誘いあることでしょう。


 ゆっくりと考えてくださいまし」


 この場は一度解散となった。


「……悪い女だね」


 ちょっとぼんやりとしたまま立ち去るジェーンの背中を見てヘカトケイはつぶやいた。

 アリアには人を惑わす魔性がある。


 もしアリアが悪人の心を持っていたならばあらゆる権力を手に入れる希代の悪女となっていたかもしれない。


「あら人聞きの悪いことおっしゃいますわ、師匠」


 こんな言葉に笑ってみせるところもまた少し悪い。


「あれは良い悪ですわ」


「結局悪じゃないのかい」


「少なくとも私が欲しいと思ってズルく他よりも先に手をつけるのですから善ではありませんわ」


 そう言いながらアリアは納めた剣を再び抜いた。


「まだ時間もありますのでもう一戦お手合わせ願えますか?」

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