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ライバル、師匠、驚き3

 明らかに失礼な態度をとってしまっていた。

 発言も行動も失礼でアリアが怒っても仕方がないことをしたというのに。


 それでもアリアはエーキュを庇い、許してくれた。

 エーキュは完全に剣の道を歩もうとしている。


 なのでエーキュにとってユーケーンはどうしても入りたい憧れの存在だった。

 実力ではなく小さな嫉妬心のせいで機会を逃すところだったのになぜなのかアリアはエーキュのために立場が悪くなることも構わずキュミリアに立ち向かった。


 エーキュは自分の浅さを知った。

 日頃から技術や力を磨くだけではなく心まで強くならねばいけないと教えられてきたのに何と未熟だったことか。


 心の広さまでアリアに敵わない。

 ようやく負けを認めてエーキュは心の底からアリアに感謝した。


「お顔を上げてください」


 アリアは優しくエーキュの肩に手を添えた。


「エルダン嬢……」


「アリアでいいですわ」


 顔を上げるとアリアは優しく微笑んでいた。

 再びエーキュは泣きそうになってしまう。


 悔しさからではなくアリアの人としての器の大きさに感動を禁じ得ないからである。

 アリアだって別にただ優しいだけではない。


 ここで冷たく突き放したって全く構わないのであるがそうすると後々困ることになるかもしれないのは自分かもしれない。

 突き放された人間が何を心の拠り所にするか。


 それが剣にまい進してくれるというのなら問題もないのであるが別のものがエーキュを支えてしまったら。

 もしそれがケルフィリア教であったらとんでもないことになる。


 エーキュは才能がある。

 剣のために努力ができる。


 アリアの使える駒とならなくても才能をわざわざケルフィリア教にくれてやることはない。

 この先の未来には厳しい状況が待ち受けている。


 正義の側として戦ってくれる人は1人でも多い方がいい。


『洗脳のレベルが上がりました。


 洗脳レベル3→4』


 なんだか不穏な表示が見えた気がする。

 アリアに洗脳しているつもりはないけれど多少アリアへの意識が変化したことが洗脳とみなされたのかもしれないなと思った。


「えーと、とりあえず……テストを続けましょう」


 色々あったけれど顧問の先生が来てくれたのでこのまま入会テストを続ける。


「次は僕が」


 そして前に出てきたのはノラだった。

 見ていてくれ、とノラが一瞬アリアへと視線を送った。


 そういえばノラもユーケーンの出身だったなとアリアは思い出した。

 大人になったノラの周りにもユーケーン出の騎士がいて、このクラブでの出会いはノラにとっての将来にも影響を及ぼしていた。


「では次はノラスティオ様で。

 相手は……」


「僕もご指名いいですか?」


「戦いたいお相手が?」


「はい、カールソン・カンバーレンドさん、僕と手合わせ願えますか?」


 ノラが指名した相手はカールソンだった。


「私ですか?」


「ええ、カンバーレンドさんがよろしければ」


 ノラとカールソンの視線がぶつかる。

 なぜか火花が散っているようにも見える。


「ふふふ、鍛錬は怠っていないようだね?」


 ノラとカールソンに注目が移動した隙にヘカトケイがアリアの横に来ていた。

 ニヤリと笑っているヘカトケイは人違いでもなんでもなくアリアの師匠のヘカトケイである。


「これは一体どういうことですか?」


「ふーん、1人でいるのは暇でね。

 前はこうしたこともなかったんだが……至らぬ弟子を心配しすぎているせいかもしれないね。


 それでちょっとばかりツテを使ってアカデミーに関われないかと思ったんだ」


「顧問の先生がお顔を晴らしていらっしゃるのも師匠が?」


「実力がないものは認められないとかほざくものだから少し実力というものを教えてやったのさ」


「それは……」


 顧問の先生が悪い。

 相手の実力が分からないことにはユーケーンの特別顧問など任せられないのだろうがヘカトケイにそんなこと言ってはいけない。


 言ってどうなるのかはその身をもって思い知ったことだろう。


「ですがこうして会えて嬉しいですわ」


「う……そう言われると少し照れてしまうね」


 心配だったのはアリアも同じ。

 何をしているのかと思えばアリアに会おうとしてくれていたなんて嬉しくないはずもない。


 アリアが笑顔を向けると珍しくヘカトケイが少し照れたように視線を逸らした。


「で、あるならばお師匠様にお願いがあるのですが」


「会って早々になんだい?」


「1人、目をつけている人がいるのです」


「敵として?

 それとも味方としてかい?」


「味方ですわ。

 是非ともこちらに引き入れたいオーラユーザーがいらっしゃるのです」


 アリアはチラリとジェーンに視線を向けた。


「お前さんがそういうのなら優秀な子なんだろうね。

 しかもオーラユーザーなのかい」


「私の方でも距離は詰めていますが師匠にもご協力いただきたく思いまして」


「ふふ、師匠使いが荒い弟子だ。

 けれど面白そうだし手伝ってあげるよ。


 早速退屈しなさそうで何よりだ」


「ありがとうございます」


「あのエーキュとかいうのはどうだい?

 そこそこ使えそうだ」


「んー……まあ良さそうではありますね」


 アリアがヘカトケイと会話している間にノラとカールソンは戦っていた。

 思っていたよりもノラは善戦したのであるが当然カールソンに敵うはずもなく負けていた。


 エーキュのように駄々をこねることなくノラは負けを認めたが実力は証明できたので加入を認められた。


「負けてごめん……」


「何を私に謝られることが」


「あ、いや……別に、その……」


 なぜかアリアに謝りにきたノラ。

 アリアが不思議そうな顔をするとノラは少し頬を赤らめて言葉を濁していた。


「ふん……恋愛の授業でもないもんかね」


 それを見てヘカトケイは小さくため息をついていたのであった。

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