ライバル、師匠、驚き1
当然のことであるがユーケーンへの加入希望者はアリアだけではない。
アリア以外にも加入したいと言って挑戦する人は意外と多かった。
チャレンジそのものはいつでも受け付けているので主な時期を過ぎた後でもやってくる人はいる。
「じゃあ……まずは加入希望者のテストを始めよう!」
アリアはユーケーンに呼ばれていた。
行ってみるとディージャンやユーラ、カールソンなどのユーケーンのクラブメンバーがほとんど来ていた。
そしてさらにはその場にノラもいてアリアは少し驚いていた。
何かを待っていたようなキュミリアは困ったようにため息をついた。
数人の生徒が前に出てくる。
新規の加入希望者たちで、その中にはノラもいる。
みんなで訓練場に移動する。
「じゃあまずは女の子から。
相手は……ん、どうかしたのかい?」
加入希望者の中にいる女の子が1人手を上げた。
「エルダン嬢と手合わせしたいです」
手を上げたのはエーキュであった。
基礎剣術にもいた女子生徒で中々良い腕前をしていた子である。
「アリア嬢と?
しかし彼女も新入生で……」
「構いませんわ、キュミリア先輩」
睨みつけてくるようなエーキュを見てアリアはクスリと笑った。
「実力が証明できればいいのですから私がお相手してもよろしいでしょう」
「うむむ……」
確かにアリアは最上級生であるジェーンとも対等に渡り合った実力がある。
勝ち負けが重要なのではなくどれほどの実力があり、やる気や諦めない意思があるのかの確認でもある。
それならアリアが相手でもいいといえばいい。
「それでお相手のやる気が出るならその方が分かりやすくてよろしいでしょう?」
「……そうだね。
じゃあお願いできるかな?」
「ええ、もちろんですわ」
「危ないと思ったらすぐに止めるから」
「ご配慮ありがとうございます」
「それじゃあ……ええと」
「エーキュです」
「エーキュ嬢はアリア嬢と試合をしてもらう」
少し周りがざわつく。
それはアリアをあまり知らない人たちのざわめきであり、アリアが加入時に戦った姿を見た人たちはアリアならと静かだった。
あとはユーラあたりが大丈夫かな!とアワアワしているがそれは例外的反応である。
「お引き受けいただきありがとうございます」
「こちらこそご指名いただいて光栄ですわ」
何でこんなに敵対視されるのか知らないけれどこんな風に敵意を向けられてはアリアも黙っていない。
アリアの実力を知らないノラが期待したような目を向ける中アリアとエーキュの試合が始まった。
エーキュは始まると同時にアリアとの距離を詰めて切りかかる。
基礎剣術の時と同じように激しく切りかかる。
こうした攻めたやり方がエーキュのやり方のようだ。
アリアはエーキュの攻撃を冷静に見極めて巧みに防御していく。
回転は早いが攻撃は軽くて防ぐことに問題はない。
一般的な生徒に比べれば出来る方だ。
しかしまだまだ技術は甘い。
疲れるのを待ってもいいけれどそこまで時間をかけるのも周りに迷惑なのでアリアも反撃に出る。
一つエーキュの攻撃を選んで剣の腹で受け止めて大きく受け流す。
エーキュの体が流れて隙ができる。
「すごい……」
ノラは思わずアリアの戦いに見入ってしまった。
たった一度の受け流し。
それによって攻防が入れ替わってしまった。
今度はアリアが攻めに回る。
アリアはエーキュがやったように激しく攻める。
しかしアリアの攻撃はエーキュよりも苛烈で隙がない。
一方でエーキュは体勢を立て直しきれない中でアリアの攻撃を防いでいるが全ては防げていない。
致命的にならない攻撃がエーキュの腕や体にかする。
このままでは勝てない。
エーキュはアリアとの差を感じていた。
けれど諦めるわけにはいかない。
「私は……負けない!」
エーキュは体に力を込めてアリアの剣を弾き返してそのまま剣を振り下ろす。
「あっ…………」
力いっぱいにアリアの剣を押し返したので防げないはずだとエーキュは考えていた。
だがアリアはこうした反撃があることも想定していた。
無理に受けずに手首を柔らかく衝撃を吸収した。
エーキュが想定していたよりも遥かに速く剣を戻したアリアは逆にエーキュの剣を弾き飛ばした。
「そこまで!」
アリアの剣がエーキュの首筋寸前のところでピタリと止まる。
当たっても衝撃を吸収してくれるから大事には至らなかっただろうけどその場にいた誰もが一瞬エーキュの首が切り飛ばされる姿を想像した。
それだけアリアの最後の一撃は鋭かった。
「エ、エーキュさん!?」
エーキュの目に涙がみるみると溜まっていき泣き出してしまった。
これにはアリアも慌てる。
寸止めしたつもりだったけど当たってしまったのだろうかと剣を放り投げてエーキュに近寄る。
「……負けた」
「えっ?」
近くにいたアリアにだけ聞こえるぐらいの小さな声でエーキュがつぶやいた。
エーキュにはプライドがあった。
同年代でも強いという自信。
女の子のみならず男の子の中に入っても引けは取らないと思っていた。
周りもエーキュの腕前に期待してくれていたし剣だけは負けられない。
特に女の子にはと思っていた。
ソノンには負けたがあれだって紙一重の差ですぐに追いつける自信があった。
後書き、宣伝、お願い
2023年も一年間『悪役令嬢、悪になる〜真紅の薔薇よ、咲き誇れ〜』にお付き合いくださいましてありがとうございます。
皆様の応援のおかげでここまで小説を続けることが出来ました。
まだまだアリアの復讐は続きます。
のんびりと更新を続けていきますのでよければこれからもお読みくだされば幸いです。
最後にお願いですがカクヨムコンにこの作品は参戦中です。
カクヨムでお星様などで応援していただけるともっとやる気になります。
お年玉代わりに星三つやるか、という優しい方がいらっしゃいましたら応援よろしくお願いします!
いつも見てます!とか面白かったです!なんて応援コメントでもいいんだぞ!
改めて、いつもお読みくださってありがとうございます!