ちょっとお休み、外出日1
アカデミーに入学すると勝手に帰ったりするは許されないのだが全く外出できないというわけではない。
2か月に1度ほど外出日が与えられる。
簡単な消耗品などはアカデミーの中で買うこともできるけれど個人の趣味のものや多少一般的とは言いがたいものなどはどうしても外に出なきゃならない。
後は自分の家からの手紙などを受け取ったりもする。
重要な手紙以外は送ることは許されていないので重要ではない手紙は外出日に受け取って読むのだ。
結局アカデミーで受け取ることとの違いなどないが昔からこんな感じでやっているのである。
授業を休んで外出してちょっとした買い物をする。
このことだけでも多くの生徒にとっては楽しみだしストレス発散にもなっていた。
「それではお昼にお店で会いましょう」
「うん!
じゃあね!」
外出日もいくつかの日があってその中から出たい日を申請して許可される形になる。
なんの用事もない人だと外出しない人もいるが外出日を合わせて友達と外出する人もいる。
アリアもパメラに誘われて一緒に外出することにした。
もちろんトゥージュも一緒なのだけど各々少しやりたいこともあった。
なので午前中はバラバラに行動して昼にお店で集合してお昼でも食べてそれから一緒に買い物でもしようということになった。
アカデミーの前でパメラとトゥージュと別れる。
パメラは迎えの馬車が来ていて、トゥージュにも家の使用人が迎えに来ていた
アリアはと聞かれたので少し遅れているようだと答えて2人がいなくなってから移動する。
アカデミーの外は大きな街になっている。
元はそうでもなかったのだがアカデミーがあることにより商人が集まり、アカデミーがあることで周辺の安全は高くて人も集まっていた。
アカデミーの目はアカデミーの外にもある。
この場所でアカデミーの生徒に手を出せば無事では済まされないので子供に手を出す人はいない。
それでも確実な話でないので護衛ぐらいは必須である。
けれどアリアは誰も連れずに街を歩く。
目的の場所はメインの通りから外れた細めの路地にある雑貨屋さん。
お店の名前はペイガイドという。
入ってみると中は小綺麗にはしてあるがやや薄暗く感じる。
可愛いコップや小物などが置いてあって意外と興味を引かれる。
若い赤毛の男性店員が眠たそうな目をアリアに向けた。
「こちら利用したくてきました」
アリアはカウンターの上に青い札を置いた。
それをみて男性店員が驚いたように目を見開いた。
ペイガイド、それはアリアが以前利用した情報屋と同じ名前である。
このペイガイドもたまたま同じ名前のお店であるのではなく同じ情報屋であるのだ。
お店の形態が違うのはカモフラージュだったりその地域にあってもおかしくないお店になりきるために違ってるのである。
そして札は情報屋の客であることの証。
エルダン家にいた時は1番下のグリーン会員だったのだけど家を離れるから会員証が欲しいというとなぜなのか1つ上のブルー会員の会員証の札をもらった。
それで困ることはないのでありがたく受け取った。
普通の令嬢ならグリーン会員であることすらない。
それなのにさらりとブルー会員の証を出してきたので男性店員は驚いていた。
アリアと会員証の札を交互に見比べる男性店員。
何度見たところでアリアも札も代わりはしない。
「し、失礼しました!
ええと、情報をお求めですか?
それともお受け取りですか?」
「今日は情報を。
調べて欲しい人がいるのですわ」
「お調べしたいお相手の名前は?」
「こちらに」
アリアは折り畳まれた紙を取り出してカウンターに置く。
「書いてある人たちを調べて欲しいのです。
中でも印をつけてある人を」
男性店員が紙を開いてみるとそこには名前が書いてあった。
「情報はアカデミー寮のAの39に」
「それは……」
「あら、できないなんておっしゃらないでしょう?」
「……少し前金は多めにいただくことになりますがよろしいでしょうか?」
「もちろんですわ」
アリアはお金を払い、札を懐にしまう。
「……このお店に置いてあるもの趣味がよろしいですわね。
あなたが?」
「いえ、これは妹の趣味で……」
「そうですか。
趣味がよろしい妹さんですわ」
もう少し商売っ気を出せばある程度売れそうだなとアリアは思う。
情報屋がメインなのであまり繁盛しても困るのかもしれない。
ペイガイドを出たアリアはそそくさと来た道を戻っていく。
当然そうするとたどり着くのはアカデミー前。
「アリア様!」
少しアカデミー前で待っていると馬車が止まった。
御者台に座っているのはレンドンとヒュージャーだった。
アリア専属となっているこの2人は本邸ではなくアカデミーの近くにある別邸に配属となった。
普段は別邸の方の警備をしながらこうしてアリアが外出となったら護衛をする。
相変わらずそうな2人を見て少しホッとする。
あんまり使える人材ではないと思うけど素直だし扱いやすいのでそんなに嫌いでもなかった。
レンドンが御者台を降りて馬車のドアを開く。
アリアは乗り込んで馬車は動き出す。