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目星1

「ごめんなさいね。

 学園長は今会議中で」


 ミチュト・リードは学園長であるアルドルトの秘書をしている女性だ。

 穏やかそうな中年の女性でアリアがアルドルトの弟子であると知る数少ない人の1人だ。


 ミチュト自身も魔法使いらしいがあまり魔力も多くなく才能もなくて魔法使いとしての活躍は諦めて一部の薬学の授業を受け持ちながら秘書をしている。

 気遣いもできて優しい人。


 アルドルトが会議で不在なので部屋で待っていると紅茶を出してくれた。


「あら、もうそんなもの読んでるの?」


 アリアが読んでいる本のタイトルを見てミチュトが微笑む。

 まだ初級者向きな本ではあるが魔法駆け出しの初心者よりも1つ上の本である。


 弟子になったと聞いたのはまだ少し前だというのに成長が早いと驚いていた。


「私もね、アカデミーで魔法を習ったの。

 何か自分で出来ることが欲しくてね。


 今だと薬学の知識の方が役に立っているけど。

 エルダンさんも薬学の授業きてくれているものね」


 アリアはミチュトの基礎薬学の授業も出ている。

 錬金術の授業と似ているのだけどこちらの方がより薬草について深く掘り下げる。


 錬金術が毒なら薬学が薬みたいなものだ。


「リード先生は何がお得意だったのですか?」


「私?

 私は土が得意だったの。


 水ぐらいまでなら出来るけど火までいくとちょっとね。

 エルダンさんは?」


「全体的にできますわ。

 師匠によると火だろうと言われていますわ」


「全体的に出来るのは羨ましいわね。

 念は上手く扱える人が少ないから魔法使いになるなら重宝されるわよ。


 土か水で困ったことがあったら相談して。

 学園長ほどじゃなくても私も基礎はちゃんと学んだから」


「ありがとうございます」


「会議は終わったみたいね」


 学園長室の隣に隣接している小さい会議室で会議が行われていた。

 その扉が開いてアルドルトが出てきた。


「ではそのように進めます」


「うむ、頼んだぞ」


「お疲れ様です、学園長、ホーンドさん」


「ええ、ありがとうございます」


 ホーンド・ディジャケットはこのアカデミーにおいて魔法学教授を務めていて魔法関係の授業の統括をしている。

 目の下に大きなクマがあって憂鬱そうな顔をしているが元魔塔の所属で実力は確かな魔法使いである。


 ホーンドは基礎授業は受け持っていないので今のところアリアがお世話になる予定はない。

 魔法の授業の統括ではあるがアルドルトの方が魔法において上であり、学園長でもあるのでホーンドはよくアルドルトに会いにきていた。


「アリア・エルダンですね」


 ジトッとしたホーンドの目がアリアに向けられた。

 こうしたホーンドの視線が苦手だという生徒も多く、実力はあってもあまり好かれている先生とは言えない。


「ごきげんよう、ホーンド先生」


 アリアはイスから立ち上がってスカートを摘んで令嬢らしく頭を下げる。


「ふむ……」


 ホーンドは何か言いたげにアリアの様子を見ている。


「ユーケーンに入ったそうだね」


「はい、そうです」


「学園長の弟子になるほどの才能があるのに……」


 どうやらホーンドはアリアがユーケーンに入ったことが気に入らないようである。

 純粋な魔法畑の人であるホーンドはアルドルトの弟子になったアリアは剣などの武術を極めようとするユーケーンではなく魔法系のクラブに入るべきだと思っている。


「……ユーケーンをやめる気になったらいつでも私に言いなさい。

 魔法系のクラブを紹介してあげよう」


「お気遣いありがとうございます」


「ふん……どうして学園長もこのようなことを許しているのか……」


 ブツブツと文句を言いながらホーンドは立ち去っていく。


「気を悪くせんでほしい。

 魔法に関して真面目なやつなのだ」


 アリアとて理解しないものでもない。

 もし仮にヘカトケイに先に会っていなかったらオーラの方は後にして魔法の方の道を進んでいたかもしれないと思う。


 優秀な才能があったらそれを伸ばしてやりたいと思うことも当然の心理である。


「失礼します」


 ホーンドと入れ替わりで男子生徒が入ってきた。


「キュミリアさん」


「あれ、アリア嬢」


 それはユーケーンのクラブ長を務めているキュミリアであった。

 こんなところにアリアがいるとは思わなかったキュミリアは目を大きく見開いて驚いていた。


「どうして学園長の部屋に?」


「秘密の面談ですわ」


 アリアはウインクしながら冗談めかして笑う。


「キュミリアさんこそどうして?」


「学園対抗戦について学園長にご相談に乗っていただきたくてね」


「学園対抗戦ですか?」


「そう。

 他の国でも規模の大きさなアカデミーを抱えているところはあるからね。


 そうしたところと交流や互いの刺激のためにいくつかのアカデミーが集まって対抗戦をするんだ。

 ユーケーンは代々このアカデミーの武術生徒代表として学園対抗戦に出場してるのさ」


「へぇ……」


 知らなかったとアリアは思った。

 アカデミーに通っていたはずなのに全く。


「誰が出るとか色々ユーケーンでも調整することがあるんだ。

 ……本当は顧問の先生に相談するんだけどなぜかまだお休みでね」


 だから直接アルドルトに相談しにきた。

 結局最後にはアルドルトも含めて話し合いをして最終認証となるので顧問の先生がいなければそこをすっ飛ばすしかない。

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