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悪役令嬢、悪になる〜真紅の薔薇よ、咲き誇れ〜  作者: 犬型大
第三章

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魔法の授業2

「次は念じゃな。

 これが1番難しい」


 火や水などは物として目の前に存在していてイメージもしやすい。

 しかし念はそれらとはまた異なっている。


 物を浮き上がらせたり目に見えない力を加えるものが念の基本である。

 火に比べて圧倒的にイメージにくくなるのでセンスがなければ念だけ扱えない人もいる。


「すぐには出来なくとも落ち込むこともない。

 何か軽い物でも……」


「あれに挑戦しますわ」


「あれ?」


 アリアが指差した先をアルドルトも目で追いかける。

 そこには剣が飾ってある。


 装飾用に2本クロスするように壁にかけてあるものだ。

 アリアは手を伸ばして剣に向ける。


 意識を集中させる。

 挑戦するのはよいが剣をせめて近くに置いた方がいいのではないかとアルドルトは思った。


 念の難しいところはそうしたところにもある。

 物を動かしたりする性質上他の魔法よりも自分から離れたものに対して発動する。


 離れれば離れるほど魔法を発動させたりコントロールすることは難しくなる。

 アリアが座る席から壁に飾られた剣までやや距離がある。


 歩いて取りに行けばすぐに手が届くけれど到底手の届かない距離であるのでいきなりその距離にある重たい剣を動かすのは難しい。


「ほーう……」


 アリアが剣を見つめたまま集中を高める。

 すると剣がカタカタと揺れ出した。


 剣がゆっくりと抜けてくる。

 アリアの頭の中にはある人が思い浮かんでいた。


 一度見ただけの光景。

 しかしアリアの記憶に強く刻まれているものだった。


「くっ!」


「ホホッ、よくやったものだ」


 三分の一ほど剣が抜けたところでアリアの集中が途切れてしまった。

 カチャンと剣はまた鞘の中に戻っていってしまう。


 悔しそうな表情を浮かべるアリアだったがアルドルトはまたも感心させられていた。

 こうなるかもしれないことは予想していた。


 アリアはオーラのコントロールが上手い。

 ジェーンとの戦いの時にあれだけ周りから人が見ていても気づかれないほど漏れるオーラをわずかに、そして一瞬でとどめた。


 その能力を見れば魔力のコントロールが非常に優れていることは明白だった。

 オーラを本能に逆らって出ないようにとどめるのは意外と難しい。


 加えてアリアはイメージ力にも優れている。

 氷や火を正確にイメージしている。


 冷たさや熱さといったものまでしっかりイメージ出来るので魔法がしっかりと発現させれられているのだ。

 ただ初めてでここまで念の魔法を使えるとは思わなかった。


 これまでオーラユーザーは魔法を学ぶことを良しとせず、魔法使いはオーラユーザーに魔法を教えることを良しとしなかった。

 さらには魔法を学ぶには多くの遠回りをさせられることも多く、オーラの発現も若いうちからするとも限らない。


 若いうちからオーラが扱え、さらには無駄も少なく魔法を教え込んだらどうなるのか。

 誰もやったことがない。


 もしかしたらこの世において誰も到達し得なかった領域にアリアは足を踏み入れることになるかもしれない。

 正しく導く責任。


 弟子とする以上はしっかりと師匠としての責任を果たすつもりであるがアリアが持つことになるかもしれない力はアルドルトの想像を超えてくるかもしれない。

 そうなった時に人に仇なすような行動を取らないよう道徳的なところでも師匠の責任は大きくなる。


 力を持つものとしての道も説かねばならないなとアルドルトは思った。


「念についても才はありそうだ。

 最初から無理をすることはない。


 あれだけ剣を動かせるなら軽いものから慣れていけばすぐに剣も動かせるようになるはずだ」


 そこには少し手を抜くことを教えるのも必要かもしれない。

 アリアには全てを完璧にこなそうとするきらいが見える。


 最初から全てを完璧にこなせる人などいない。


「良いか、何事もムリは禁物。

 体や剣を鍛えるように段階を経て、魔法を体に馴染ませていくのだ。


 お主には時間がある。

 焦っては身になるものもならん。


 時として力を抜いて気楽にやってみることも必要になろう」


 諭すような穏やかな声。


「全てを真っ直ぐに行かねばならないことなどない。

 遠回りに見える道にも悟るべき道理はある」


「……分かりました」


 確かに少し焦りすぎたかもしれないとアリアは反省した。

 最初から剣を動かしてみせるなど多少の傲慢さがあったかもしれない。


 念の魔法でイメージするのがそうした人だったから真似しようとしたけれど無理に剣で再現することもなかったのだ。

 アルドルトに待ち受ける事件を思うと焦ってしまうのだがそれでは得られる物を見逃して道を走り抜けてしまう。


「今度はもっと軽いもので試してみてもよろしいですか?」


「もちろん」


 アルドルトは優しく笑う。


「そうだ……これを使ってみるといい」


 アルドルトが杖を振ると箱が浮き上がった。

 ゆっくりと空中を動く箱はアリアの前のテーブルの上にそっと降りてきた。


 横に細長い箱は飾り気もなく何が入っているのか分からない。


「これはなんですの?」


「まあ開けてみるといい」


 ニコニコとしているアルドルトが変なものを渡すはずがない。

 アリアは言われるままに箱を開ける。

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