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お祝い2

 だからアリアについてはひそかに感謝もしていたのである。

 ただ特別思ってもない相手との噂を流されると迷惑なことも知っている。


 だからジェーンは気になっているという側面もあった。


「残念ながらカールソンとはお付き合いしていませんし婚約者でもありませんわ。

 ですがお友達ではありますわ」


「そうなの」


 カールソンが笑ったなんて噂も聞いていた。

 あまりユーケーンの中でもカールソンが笑っている記憶はない。


 不機嫌とか怒っているとかそうではないのだけど表情の変化に乏しい印象がジェーンの中にもある。

 だからそうした関係性の可能性も捨て切れないと思っていたけれどアリアはかなりサラッとしている。


 でもジェーンは思う。

 カールソンの態度はこれまでになく柔らかく、ジェーンが思わずオーラを出してしまった時には怖い目をしていた。


 片思い。

 堅物と言っていいカールソンのあんな様子を見るにそんなこともあるかもしれない。


 そう考えると可愛いところもあるもんだなとジェーンは笑う。


「ジェーン先輩こそ、そうしたお相手いらっしゃらないのですか?」


「へっ?

 わ、私?」


 あまりジェーンのことは覚えていない。

 回帰前にジェーンがそれなりの地位に上り詰めたことは覚えていてもプライベートなことは全くといっていいほど記憶になかった。


 確か未婚であったはずだと思う。


「そ、そんな相手いないよ!」


 そう言いながらジェーンの顔は赤い。

 カールソンと噂になるぐらいなのだから特定の相手がいないことは分かっている。


 ならばどうして顔を赤くした。

 その視線が一瞬キュミリアに向いたのをアリアは見逃さなかった。


「ふぅーん……」


「な、なにその目!」


「キュミリア先輩ですか?」


 アリアはジェーンの耳に口を寄せて誰にも聞こえないように核心をついた。

 ボッとジェーンの顔が赤くなる。


「な、ななな……」


 なんで分かったのだと言いたそうに口をパクパクさせている。

 こう見えてもアリアの中身は一度ある程度の人生を経験している。


 ジェーンの誤魔化しなど看破するのは容易い。


「乙女の秘密……ですね」


 アリアは唇に指を当ててイタズラっぽくウインクしてみせる。

 これは好機だ。


 お近づきになるのに剣の他にこうした話題があるのは強い。

 さらに秘密として共有できるならその距離は大きく近づく。


「うぅ……ぬぅ……秘密で」


 言い当てられて完全に動揺してしまった。

 今更否定しても逆効果になるしジェーンは陥落した。


「なんの話をしてるんだ?」


 アリアのために山盛りの料理を置いたユーラがニコニコとしながら割り込んできた。


「ふふふ、お兄様には秘密の、女の子同士のお話です」


「んー……まあ、早速ユーケーンでも友達が出来たようでよかったよ」


 一瞬秘密と言われても聞こうとしたがそれだとアリアに嫌われるかもしれないととっさに思い直した。

 これまでのユーラであったなら聞いていた。


 しかしアカデミーに入って成長したのは剣の腕だけではないのだ。

 愛でて距離を近づけるばかりではいけないとユーラも女心を少しだけ学んでいたのである。


「ありがとうございます、お兄様」


「へへ、何か困ったことがあったらいつでも言ってくれよ」


 アリアがアカデミーに来たのが嬉しくてしばらくベタベタとしていたがようやく教えを思い出してスマートにアリアから離れる。

 アリアとしてもこれぐらいの距離感の方がよっぽどいいと思う。


 それにしてもどうしてジェーンはキュミリアと一緒にならなかったのか。

 仲は悪くなさそう。


 互いに有力貴族でもないのでそんなに結婚相手にも縛られない。

 むしろオーラユーザーのジェーンならどこでも歓迎される。


 キュミリアに他にお相手がいる可能性もある。

 けれどそれならジェーンが純粋無垢に顔を赤くするリアクションを取るだろうか。


 悲しげだったり残念そうな表情をしてもおかしくない。

 そもそもキュミリアの記憶はアリアにはない。


 栄光あるユーケーンのクラブ長になるのは簡単なことではない。

 単なる人気取りだけではなれず相応の実力がなくてはならないのだ。


 ユーケーン出身であれば騎士団など声のかかるところもあるはず。

 オーラユーザーでなくとも騎士団長やそれに近い役職に上り詰める人もいる。


 けれどキュミリアのことは記憶にないのだ。

 回帰前にいた騎士の名前を全て覚えているなんて超人技出来るわけないのでアリアが覚えていないから記憶ない可能性も大いにある。


 あるいは騎士にならずに冒険者などになった可能性もある。

 特別くっつけるようなつもりはないけれど少しだけ気になった。


「ホッホッホ、お祝いか。

 ワシも何かあげないとのぅ」

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