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クラブ勧誘2

 噂があまりに広がってしまうと後々にも影響を及ぼす。

 本当に婚約関係にないのならカンバーレンドだって迷惑な話ではないのかと疑問に思う。


「利害がありまして噂を否定しないことにしているのです」


 そもそもカールソンにもお相手はいない。

 アリアの記憶では回帰前もカールソンは未婚のまま殺されてしまったはずである。


 回帰前はアリアと同じくケルフィリア教と戦う使命を負っていたからそのためかもしれないが浮いた話の一つもなかった。

 女性嫌いではなさそうであるけれどお家のためとか家柄だけで人を選ぶような気はないようだ。


 アリアも縁談が来なくなるような噂でありがたいがカールソンの方もアリアと同じ考えなのである。

 エオソートなんかはそれで嫁がいないならアリアにもらってもらおうかしらなんて言っていた。


 まあカールソンは家柄も顔も悪くないので最終的に嫁の貰い手がいないのならそうしたことも視野には入るかもしれない。

 ただ結婚して普通に幸せな生活を送るつもりはないのでカールソンにそんな負担をかけたくないとは思っている。


「ふーん……でも羨ましいよね」


「羨ましい……ですか?」


「カールソンさんもそうですしお兄様も成績優秀、容姿端麗で柔笑の貴公子なんで言われているんですよ」


「ディージャンお兄様がですか?」


「そうそう。

 もう1人のお兄様もアリアと同じく基礎剣術を特別合格して期待が高まっているしそっちも顔が良いって話題だからね!」


「へ、へぇ……」


 それで羨ましいと言われてもとアリアは思う。

 実兄でなくとも兄は兄。


 顔が良いかもしれないがそれを羨ましいと言われたところでアリアにはなんの感情もない。

 ディージャンとユーラの評価が良いからとアリアが胸を張れるものでもない。


「あ、そういえばさ、クラブは入るの?」


 わいわいと会話しながら今日は食堂にも人が少なめでデザートでも食べながらゆっくりとしていたら次の話題をパメラが口にした。

 クラブとは共通の目的や考えを持つ会員制の集団で剣術クラブや刺繍クラブなど特定の趣味に関して互いの技能を高め合ったりする。


 なのであるが単純にそうした趣味のクラブばかりではない。

 社交クラブというものもある。


 こちらはいわゆる派閥に近いもので近い思想や地域の人が集まって親交を深める場としてのクラブも存在している。

 どのクラブに入るのかは今後を左右する。


 入らないという選択肢もあるけれどほとんどの生徒は何かしらのクラブに加入する。

 無難に行きたいなら趣味クラブに入るべき。


 刺繍クラブに入れば派閥関係なく広く女性の知り合いができるだろう。

 錬金術クラブには入れば変人なお友達ができる。


 ただ卒業後まで見据えて考えるなら派閥クラブに入る。

 派閥クラブに入れば派閥間の交流を深めることができて今後生きていく上での礎となる。


 クラブをどこにするのかは大きな問題で授業が決まった後はクラブをどうするのかがみんなの話題の中心になるといっても過言ではない。

 さらにはこの時期から勧誘合戦も始まる。


 クラブ側も今後自分たちの人脈となってくれそうな人だったり優秀そうな人を自分たちの派閥に引き入れようと躍起になる。

 当然アリアならどこのクラブも引き入れたがるだろうとパメラは思う。


「パメラさんはどこのクラブに?」


「私は南部商人系のクラブがあるからそこに入ろうと思ってるんだ。

 お爺様が作ったクラブらしいし私が入らないとね」


「へぇ、そのようなクラブがあるのですか」


 今現在ではさまざまなクラブがある。

 もう廃れてしまったようなクラブも存在しているしもしかしたら今年新しく生まれるクラブだってあるかもしれない。


 こうしたところもかなり自由なのである。


「トゥージュはどうなさるの?」


「わ、私は……料理クラブに……」


 ほんのりと頬を赤くしているトゥージュ。

 

「料理クラブ?

 へえ、面白そうだね」


 そういえばトゥージュは料理が上手かったなとアリアは思い出した。

 特にパティシエ顔負けの甘いものを時々作ってくれていた。


 昔から料理するのが好きだったと聞いたこともある。

 アカデミーの料理クラブもちゃんとしたものでキッチンもしっかりしている。


 自由に料理を学ぶならアカデミーの料理クラブもいいところである。


「アリアは?」


「私も考えているところはありますけれどまだ決めていませんわ」


「うちのところにっていうのは……なんだか騒がしいね」


 急に食堂にいる人たちがざわつき始めた。

 なんだろうとパメラが首を伸ばして覗き込む。


「人だかり?」


 アリアも気になって振り返ってみると食堂の入り口に人だかりが出来ていた。

 他の人たちも訳がわからないようにそちらを見ている。


 なんだと思っていると人だかりの中から数人の人が進んできた。


「あれは……」


 パメラが驚いて目を丸くする。

 そしてアリアは思わず表情を固くして小さく舌打ちをした。


 美しい金髪、光の加減によっては緑にも青にも見える澄んだ瞳、整った顔立ち。

 周りの目を引く容貌の男性が先頭となってアリアの方に歩いてきていた。

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