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基礎剣術3

 手は抜かないが本気でもない剣術のみでユーラに挑む。

 ユーラもアリアの実力に驚いていた。


 すぐに倒してはアリアの面目も立たないのである程度付き合ってからケガをさせないように制圧すればいいと思っていた。

 けれどアリアに圧倒される。


 正当な型にハマらない自由で柔軟なアリアの剣は多少のレベル差をものともしない力を発揮する。

 さらに戦いはまだまだ続いている。


 それなりの回数剣を振るい、アリアに至ってはその前に何戦かしているのにアリアは汗をかいているのみで息も乱れていない。


「……本物だな」


 モシュロムは感心した。

 女子であると軽く見てしまった自分をひどく反省する。


 アリアはどう見ても真面目に剣術を磨いてきている。

 それだけではなくこれだけ戦っても大丈夫なほどの体力やブレないような体作りもしている。


 それでいながら優雅さまである。


「俺だって負けないよ!」


 押されていたユーラが反撃に出始めた。

 負けるわけにはいかないとユーラの兄として、先輩としてのプライドが刺激された。


 ユーラの方が体格も良く力もある。

 レベルもユーラの方が高いのでまともに反撃が始まるとアリアとの戦いもすぐに五分に戻されてしまった。


(そろそろですわね……)


 十分に戦った。

 剣以外の方法を使ってユーラに勝つわけにはいかないしユーラにもプライドがあることはアリアにも分かっている。


 実力のほどは見せられた。

 これ以上粘ることにはなんの利益もない。


 ユーラの剣はレベルが高いが単純だ。

 もっと成長していけば隙のない正当な剣になっていくことだろう。


 けれど今はまだシンプルで流れの読みやすい剣筋。

 次はこう来ると読める。


「あっ……」


 だからあえて隙を見せた。

 流れの中で狙いやすいような隙を作ってユーラに攻撃させた。


 周りから見ても不自然に見えないように上手く隙を作り出して、ユーラはその一瞬の隙を突いて攻撃を繰り出した。

 剣を弾き飛ばされて抵抗することなくアリアは剣を手放した。


「……参りました」


「そこまで!」


 ユーラはアリアの首に剣を突きつけ、モシュロムが試合を止めた。


「さすがですね、お兄様」


 アリアはニッコリとユーラに微笑みかける。


「アリアこそ」


 つい本気になってしまった。

 本気にならなきゃ負けてしまっていたかもしれない。


 少しばかり浮かれていたとユーラは反省した。

 ユーラは実はこの基礎剣術の授業を特別合格で終えていた。


 同じ年齢の子の中なら抜きん出た実力があると認めてもらったも同然でアリアと戦っても勝てると簡単に考えていた。

 けれどアリアも強かった。


 型通りとはいかない戦い方に圧倒された。

 同年代の子たちと比べてユーラはレベルも高いが経験が少ない。


 戦いは必ずしもレベルだけのものではなく戦い方によっては多少のレベル差は覆されてしまう。

 このことを改めて思い知らされた。


 ユーラの中では泣いていた姿のアリアがまだ強く印象に残っている。

 守るためにはもっと強くならなきゃいけない。


「ア、アリア?」


「敵いませんでしたわ」


 アリアはポケットからハンカチを取り出してユーラの額を拭く。

 アリアも汗をかいているが激しい戦いにユーラも汗が噴き出していた。


「強いですね、お兄様」


「むっ、そ、そうだろう!」


 そう言われると悪い気はしない。

 反省はどこへやらユーラは照れ臭そうに笑う。


「さて、話はそこまでだ」


 モシュロムがパンと手を打ち鳴らして2人の視線を集める。


「アリア・エルダン、君はこの基礎剣術を修了するのに十分な実力があると認める。

 特別合格を君に出そうと思っているが何か意見はあるか?」


「いえ、いただけるならいただきますわ」


「ではその通りに話を進めよう。

 後で書類など軽くサインをしてもらうことがあるがこれでこの授業は修了だ」


「ありがとうございます」


 ドレス姿ではないので男性式のお辞儀をする。

 成績優秀で単位が取れればいいと思っていた。


 上手く特別合格までもらえて嬉しくないはずがない。


「クソッ……」


 全員が呆然とアリアを見つめる中、エーキュは悔しそうな目をしてアリアのことを睨みつけているのであった。

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