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基礎剣術2

 エーキュは激しく切りかかり、ソノンはギリギリで防いでいる。

 明らかに初心者ではない。


 ポルテアはいいとこ基礎を学んだばかりのような感じであるけれどエーキュはちゃんと剣を振る練習もしている。

 いくらか剣術のレベルもあるだろう。


 しかしソノンもプライドがある。

 入ってきたばかりの新入生に負けられないと食らいつく。


 限界が先に訪れたのはエーキュの方だった。

 攻撃を続けていたエーキュの体力は底を尽きて攻撃の速度がみるみる落ちていく。


「クッ……!」


 疲労でバランスが崩れて剣が大振りになる。

 その時をソノンは待っていた。


 エーキュの剣をかわしてソノンは剣で肩口から斜めに切り下ろした。


「そこまで!」


 エーキュのブローチが光を失い、モシュロムが試合を止める。

 悔しそうに唇を噛んでエーキュが下がる。


 勢いがあって悪くなかったけれど勝負を焦りすぎた。

 筋は悪くないので剣術を習い始めたらすぐにソノンは越えていけそうだ。


「次は……大丈夫そうか?」


「はい、いけます」


 ただソノンも肩で息をしている。

 最後はアリアになるのだがチラリとその姿を確認して休憩も取らずにいけるというのだ。


 舐められたものだ。

 いかにも剣を握ったことがなさそうだと思ったのだろう。


 貴族令嬢が単なる興味のお遊びでお試し授業を受けたのだと勝手に思い込んでいる。

 ならば少し見せてやろうと思う。


 お遊びのように剣を振っているのがどちらかと。


「はじめ!」


 ソノンは剣を構えるがアリアはだらりと腕を下げたまま動かない。

 やはりまともに基礎も知らないとソノンは速攻で終わらせるつもりで切りかかった。


「えっ……?」


 剣を振り下ろした。

 これで終わるはずだった。


 しかしアリアがサッと動いたと思ったらソノンの手から剣が弾き飛ばされていた。


「そこまでだ!」


 止めるなら一瞬遅い。

 アリアは剣がなくなり無防備に両手を上げる体勢になったソノンに向かって剣を突き出していた。


 止めようと思えば止められたけれど舐められたまま終わらせるつもりは毛頭ない。

 アリアの剣がソノンが胸につけたブローチを突いた。


 ダメージを受けてブローチの青い石が黒くなり、それでも吸収しきれずに砕け散る。

 ソノンは後ろに大きく転がっていく。


「なっ!」


 モシュロムがソノンに駆け寄る。

 胸に強い衝撃を受けてソノンは咳き込んでいるがちゃんと手加減はしたのでケガはない。


「あちゃー……」


 こうなると思っていたユーラ。

 心配はしていたかまでその相手はアリアではなくソノンの方だった。


 アリアが家で剣の練習をしていることは知っている。

 本来なら女の子がやらなくてもいいような努力をアリアは重ねていた。


 基礎剣術を終えたばかりの子、まして2戦も終えて疲れ切っているような子がアリアに勝てるはずがない。

 あそこまで容赦なく一撃を加えるとは思っていなかったが決して軽んじていい相手ではないのだ。


 それに今のはモシュロムが止めるのも遅かった。

 止められない以上は試合は続いているのでアリアは悪くない。


「これで終わりでしょうか?」


「いや……んー……もう1人相手にしてもらえるか?」


 モシュロムとしても判断をしかねていた。

 アリアが見せた動きは基礎剣術の域を超えていた。


 けれどそれが意図したものなのか、あるいは偶然なのかが分からない。

 ソノンは疲れ切っていたしあまりにも一瞬の出来事だった。


「もちろんですわ」


 アリアはにっこりと笑って次の試合を承諾する。

 先ほどのソノンと違って汗一つかいていないのだから全く問題はない。


 そうして別の生徒が前に出る。

 もう女の子の生徒はいないので自然と男子生徒が相手となる。


「そんな……」


 そこから3人。

 アリアは続けて男子生徒を倒した。


 全く相手にもならない。

 あまり目立つのは嫌だけどソノンの時点で実力の片鱗は見せてしまっているので下手に隠すよりさっさと終わらせてしまおうと考えた。


 モシュロムは目を丸くして驚いている。

 確実に初心者ではない。


 それどころか自分の見る目の無さを恥じる。


「ユーラ、前に出なさい」


「え、は、はい!」


「次で最後にしよう」


 あまりにも想像していなかった事態にモシュロムも理解に時間がかかっていた。

 本来なら特別合格していてもおかしくないのにどこまでアリアが出来るのか知りたくなった。


 ユーラが前に出る。

 実はユーラは基礎剣術を特別合格した生徒で実力的に飛び抜けた生徒だとモシュロムは思っていた。


「お兄様……」


「アリア……」


「手加減は無用ですわ」


 アリアがユーラに切りかかる。

 目の覚めるような鋭い一撃にユーラはハッとさせられる。


 油断して手を抜いてはあっという間にやられてしまう相手だと悟った。

 アリアよりもユーラの方が剣術のレベルは高い。


 しかしどうやら勝てないレベル差ではなさそうだと戦いながらアリアは思う。

 オーラを使えば勝つことは難しくない。


 あるいはアリアには剣術以外の戦いの選択肢があり、組み合わせて戦うことによってレベル以上の力を発揮することもできる。

 けれども今は剣術の授業であるしオーラなんて周りに見せるつもりはない。

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