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基礎剣術1

 単位を取るのが簡単な授業であるが女性があまり取らない授業というものもある。

 パメラが取ろうとしていた運動系の授業というものもやや女性からは不評である。


 もちろん体を動かすことが好きな人がいて授業を取ることは問題がないのだけど貴族の令嬢の中には汗をかいて動くことがはしたないだのと考える人が一定数いる。

 馬鹿げた考えであるがそんな考えに流されない人でないと運動系の授業は取らないので女性は少ない。

 

 逆に男性があまり取らない授業というものも存在していて代表的なものは刺繍なんかがそうである。

 男性が刺繍なんかしていると周りから奇異の目で見られる。


 アリアはなんとも思わないが男性が刺繍をすることは女性が運動することよりも異常だと見られる。

 男性が刺繍をすることと同じくらい奇妙な目で見られることが1つある。


「おい……あれって」


「いやまさか」


「でも入学式ん時に俺見たぜ?」


 初週のお試し授業を受けにきた新入生たちがざわついている。


「うるさいですわね……」


 新入生たちの視線の先にはアリアがいた。

 アリアは髪を後ろでまとめて制服ではなく動きやすい指定の運動服姿であった。


 腰には剣を差していて、周りには人がいなくて浮いてしまっている。

 時間ギリギリに来たというのにまだ先生が来ていない。


 早く先生が来ないものかと舌打ちしたい気分になっていた。


「いやーすまない!

 遅れてしまったな」


 比較的若めな男性教員が数人の生徒を連れてやって来た。


「あっ……!」


「どうした?」


「い、いえ!」


 その中にはなんとアリアの兄であるユーラがいた。

 アリアを見てユーラは驚いたように目を見開いた。


 男性教員に不思議そうに見られて慌てて取り繕うが視線はチラチラとアリアの方を見ていた。


「モシュロムだ。

 この基礎剣術の授業を担当させてもらう」


 アリアが受けようとしていたのは基礎剣術の授業であった。

 これが女性が受けると奇妙な目で見られる授業の1つであった。


 騎士や兵士を目指したり、そうした家系に生まれた女性が受けることはある。

 奇妙な目で見られるのは明らかに剣も持たないような女性がその授業を受ける時である。


 アリアの他にも2人女の子がいる。

 しかし1人は有名な騎士の家系で女性騎士もいるので誰も何も思わない。


 もう1人は令嬢っぽそうであるけれどアリアの方が目立ってしまっている。

 有名家門であり剣も持たなそうな見た目をしているアリアがいるからもう1人の方は注目されていなかった。


 しかし立ち姿を見れば背筋は伸びているし思いつきで基礎剣術を受けたのではなさそうだとアリアは思っていた。


「さて、今日はお試しだから、剣を振る姿勢とかそうしたものは次回の本格的な授業からだ。

 今回は君たちに彼らと戦ってもらう」


 君たちは新入生で、彼らはモシュロムが連れてきた生徒たちである。


「去年の優秀者、あるいは特別合格者だ。

 君たちがどれぐらい実力があるのか見させてもらう。


 もし仮にここで実力が一定以上だと認められれば特別合格として1発で単位も出そう」


 スキルのレベルがあって一定以上の実力がある生徒に無駄なことをさせても時間を無駄にするだけである。

 その授業で求められるレベルを超えていると判断すれば教授や教員の方で特別に単位を与えられることがある。


 これが特別合格制度である。


「今年は女の子が3人か。

 珍しく多いな。


 では女の子の方から始めよう。

 ソノン」


「はい」


 モシュロムが連れてきた生徒の中から女の子が1人前に出てきた。

 明るい栗毛の髪の子で去年の基礎剣術でも成績優秀だった子である。


 ソノンもまた騎士の家系の子で騎士になるべく剣術の授業を取っていた。

 まず先に呼ばれたのは騎士の家系の子で名前をポルテアというらしい。


「2人ともこれを付けるんだ」


 モシュロムはソノンとポルテアにブローチを渡した。

 青い石が真ん中に嵌め込まれている。

 

 一定のダメージを防いでくれる魔法がかけられたもので、このブローチの効果が先になくなった方が負けである。

 真剣勝負ではなく木で作られた剣を互いに持って距離を取る。


「では始め!」


 モシュロムの号令を合図にポルテアがソノンに切りかかる。

 踏み込みながら剣を振り下ろし、ソノンは容易くそれを受け止める。


 ポルテアの攻撃は全てソノンに防がれる。

 そして剣を振って疲れてきた隙をついてソノンがポルテアの胴に一撃を加えた。


「あっ……」


「そこまで」


 ブローチの青い石が色を失って黒くなる。

 ダメージの上限を超えて吸収する効果が切れてしまった。


 あっけない終わりであるが戦いなんてそんなもの。

 気づいたら一瞬で命が失われることもあり得るのだ。


「次は君だ」


 早く終わらせたいのに次に呼ばれたのもアリアではない。

 令嬢っぽい女の子の方が前にでる。


 ただアリアはポルテアよりもこちらの方が強そうだと期待している。

 互いに新しくブローチを付けて剣を構える。


「始めだ!」


 名前をエーキュという女の子は号令と同時にソノンと距離を詰めた。

 ポルテアよりも早く、無駄な動きがない。


 綺麗に振り下ろされた剣をソノンは受け止めたけれどポルテアの時のような余裕は感じられない。

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