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どちらの授業がよろしくて1

 何事もなく入学式を終えた。

 色んな人がそれぞれの思惑を持つアカデミーでの生活が始まる。


「あ、アリアさんと一緒で嬉しいです!」


「そうですね。

 私も嬉しいですわ」


 アカデミーは全寮制だ。

 基本的には許された時、あるいは特別な許可を得なければアカデミーから出ることはできない。


 全寮制であるからといって1人1部屋を与えられもしない。

 基本的には誰かと2人1部屋となる。

 

 社交性を鍛えるという意味でも他人と暮らすことになるのである。

 気に入らない人だったらアカデミーを辞めてもらうぐらいのことまで考えていた。


 けれどアリアの運は良かった。

 なんとルームメイトはトゥージュであった。


 数少ない友人と同室になれるなんて非常に運が良かった。

 回帰前トゥージュといた時間は長い。


 今のトゥージュは回帰前とは違うがそれでも他の人なんかよりは遥かに良い。

 緊張した顔をしていたトゥージュもアリアがルームメイトだと知ってホッと安心していた。


「本当によかったです……」


 気の弱いトゥージュではルームメイトと合わないなんてことも多く、そうなった時には我慢を強いられることになる。

 アリアともまだまだ短い付き合いであるがアリアはトゥージュの性格を知っているので根気強く優しく接してくれる。


「少し早いですが食堂に行きましょうか」


「そうですね」


 早速アリアたちはアカデミーの食堂に向かう。


「食堂もすごい……んですもんね?」


「そうらしいですわね」


 一流の貴族も通うアカデミーの食堂はやはりそれなりの質を求められる。

 確か王城に勤務していたこともあるシェフが今は料理長だったなとアリアは思い出していた。


 回帰前アカデミーに対する不満は多かったけれども食事の内容に関して不満に思ったことは一度もなかった。

 元々平民の暮らしをしていたアリアにとって食堂の食事はとても良い思い出でもある。


「も、もう道を覚えているんですか?」


 トゥージュはキョロキョロと周りを見ながら道があっているか不安そうに歩いているがアリアは堂々と歩いていく。


「私は食いしん坊ですからね」


 いたずらっぽく笑うアリア。

 当然一度経験しているのだから道に迷うはずがない。


 あまり知らない教室なんかだと多少は迷うかもしれないが食事を楽しみにしていたアリアにとって食堂など目をつぶっていても着けるぐらいの場所である。

 着いてみた食堂は広く、時間的にまだ昼にも早いのでがらんとしていた。


 しかしこの広く見える食堂も昼時になるとアカデミーの学生たちでごった返すことになる。


「えーと……いませんね」


「少し席に着いて待ちましょうか」


 早すぎるぐらいの時間に食堂に来たのは混む前に食事を取ってしまおうという目的もあるが別の目的もあった。


「おーい!」


「あっ、パメラさん!」


 その目的とはパメラとの合流だった。

 トゥージュとは一緒になったけれど本来部屋はバラバラになる予定だった。


 最初の段階ではまだそれぞれの部屋を知らないのでどこかで集まろうという話になっていた。

 そこで選んだのが食堂だった。


 比較的行くのにも分かりやすいし早めの時間なら混んでもいない。

 食堂に入ってきたパメラはキョロキョロと周りを見回してすぐにアリアとトゥージュを見つけた。


 パメラはにっこり笑って手を振ってアリアたちのところにやってきた。


「2人とも早いですね!」


「それはもうすぐ出会いましたわ」


「えっ?」


「そ、そうですね。

 すぐ……でしたね」


「ま、まさか……」


「私とトゥージュは同じ部屋なのですわ」


「えーっ! ずるい!」


 非常に奇跡的な確率でアリアとトゥージュは同じ部屋になった。

 パメラはとても驚いてがらんとした食堂に大きく声が響いた。


「むぅ……」


 すねたように頬を膨らませるパメラ。

 最初に会った時にはもっとお淑やかな印象だったけれど打ち解けてみると感情豊かな子であった。


「ずるいなぁ……」


「こちらではどうしようもないことですから」


「ちなみにパメラさんのお部屋はどこですか?」


「ええと、Aの36ですよ」


「あら?」


「えっ、今度は何?」


「Aの36……なら近そうですね」


「本当?」


 パメラの部屋を聞いてみるとかなりご近所さんであった。

 いこうと思えば1分もかからないような近さの部屋がパメラの部屋で入学した人数を考えるとこれもまた珍しいぐらいの距離だった。


 同室ではなくても往来は容易い。

 一気にパメラも笑顔になる。


「それにしても早すぎますわね」


 早めにお昼にしようとは考えていたが流石に早すぎた。

 朝ご飯が残っているような感じはないけれどお腹が空くのにはまだ時間が必要だ。


「じゃあ授業について話しましょうよ!」


 アカデミーは自主性も重んじている。

 どの授業を受けるのかも生徒に任されていてどの授業を受けるのかは生徒自身が決めねばならない。


 しばらくの期間授業はお試し授業となり、その授業を受けてみたりして履修の申請をするのである。

 どの授業を受けるのかは今後を左右する重要な決定でこの時期の学生たちにとって最も大きな話題となる。

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