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入学式1

 アカデミーとはこの国における最高教育機関である。

 小規模の学校などはいろいろな場所にあったりするがアカデミーと名乗ることは許されない。


 アカデミーは国が認めた教育機関で多くの貴族子息が集まっている。

 大きな国であれば自国でアカデミーのような教育機関を持っているがアカデミーはその中でも頭一つ抜きん出ている。


 そのために他国からの留学や小国からでもわざわざ入学する人もいた。

 けれど今のアカデミーはただの教育機関とはいかなくなっている。


 真面目に学ぶものも当然にいる。

 成績優秀者として卒業することができれば卒業後も引く手数多である。


 しかし今となってはただアカデミーを卒業したという看板が欲しいだけの人も大勢いる。

 昔は権威があったのでアカデミー卒業というだけで一定以上の能力の証明にもなった。


 卒業が簡単ではないのでそれなりの能力はある証明になるが昔ほどの金看板ではなくなったのである。

 さらにもっと深くでは派閥争い、交流関係作りの側面もある。


 アカデミーのように毎日密に顔を合わせることになる環境というのは珍しい。

 自分の派閥に能力のある人を引き込んだり普段とは違う人と交流を深めたりもする。


 あるいは敵対関係にある派閥を叩き潰したり瓦解させたりすることも日常的な行為となっている。


「あれがエルダンの……」


「噂には聞いていたけど」


 服装で差別なんかが起きないようにアカデミーでは制服着用が義務とされている。

 アリアも制服に身を包んでいるのだけど周りの目を引いてしまっていた。


 名前をぶら下げて歩いているのでもないが乗ってきた馬車の家紋を見ればアリアがエルダンであることは隠しようもない。

 さらにはディージャンとユーラがアリアを守るように付き添っている。


 2人のことをエルダンだと知っていればアリアのこともエルダンだと予想がつく。

 ただアリアが注目されているのはエルダンだからというだけじゃない。


 アリアの容姿が注目されるに足るものであったから周りの男子の目を引いてしまっているのだ。

 実際アリアの容姿は優れていた。


 これまではあまり目立たぬようにしていたので大きく注目されることもなかったが周りと同じ姿になるとどうしても目立ってしまう側の顔立ちをしていた。

 だがアリアはあまり自分の容姿に関して自信を持っていなかった。


 それは回帰前のことが原因である。

 回帰前殻にこもったようなアリアは暗く、常に俯いたように過ごしている時間も多かった。


 容姿を貶めるような発言をされることは少なかったが誉められるようなこともなかった。

 ブサイクだなんて自己を卑下はしないけれど優れた容姿だとも思っていない。


 だからなんでこんなに注目されるのかも不思議に思ったもいた。


「どいつもこいつも……アリアのこと鼻の下伸ばして見やがって」


 ユーラは周りをうなるように睨みつけている。


「仕方ないさ。

 僕たちの妹だからね」


 ディージャンとユーラも容姿はいい。

 ゴラックに話を聞いたところ縁談の申し入れがいくつもくるほどには2人の容姿も目を引くものだった。


 大貴族であり容姿もいい3人がまとまって歩いていれば周りの目が集まるのも当然のことであった。


「アリア!」


「あら、カールソン」


 とにかくさっさと移動してしまおうと思っているとまた厄介な人に見つかった。

 アリアを見つけてカールソンが嬉しそうに笑って近づいてくる。


 ユーラが睨みつけるけれど全くそれを意に介していない。


「白氷の貴公子が笑った……」


 誰かが呟いた。

 白氷の貴公子とはカールソンのことである。


 カールソンがオーラユーザーであることは広く知られていて、オーラの色が白であることもオーラユーザーであることを知っているなら知っている。

 そのためオーラの色と容姿から黒白の貴公子と言われていた。


 しかしカールソンは他者に対して非常に冷たい男であった。

 たとえ愛想のためでも笑うことをせず、カールソンに想いを伝えて玉砕した女子も多い。


 笑わないことからその冷たさを表す氷が付けられた。

 黒白氷などと言われていたものがいつの間にか黒が抜け落ちて白氷の貴公子となったのである。


 そんなカールソンが笑顔を浮かべている。

 いつになく柔和な表情を浮かべて口数だって普段とは比べ物にならない。


「アリアはどの社交クラブに入るか決めたのかい?」


 少し打ち解けた口調になったカールソン。

 本来はエオソートと情報交換のために手紙を交わしていたのだけどそれを嗅ぎつけたカールソンが自分もと手紙を出してくるようになった。


 和解はしたので返事は返してやっていたが固い文章だったものが気づけば少し砕けものとなっていたのだ。

 会ってみても態度が柔らかくなった。


 悪い変化ではないのでアリアとしてもそのまま受け入れたのである。


「まだ決めては」


「ジェナルトはどうだい?」


「お待ちください、カールソン」


「なんだい?

 ジェナルトなら君たちも……」


「違います」


 アリアとカールソンの間にディージャンが割り込んだ。

 サッとカールソンの顔から笑顔が消える。


 睨み合うディージャンとカールソンの間に火花が散る。

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