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兄への大恩1

「話を聞かせてもらおう。

 ヘカトケイさん、クイン……そしてアリア、君たちは一体何をしているんだ」


 屋敷に集められていた招待客には申し訳ないが事態が収拾できるまでは留まってもらうこととなった。

 ホード家所属の騎士も拘束され、ゴラックが連れてきた少ない護衛の騎士たちでなんとかやりくりをしていた。


 レンドンとヒュージャーも忙しく動いていた。

 そしてなんとか招待客の不満を抑えつつもアリアたちはソーダーンが会議室として使っていた部屋に集まっていた。


 事件の当事者であるアリアとヘカトケイとクインが集められ、そしてメリンダも部屋にいた。

 人手不足のために騎士などはいない。


 暗く厳しい表情を浮かべたゴラックはいつになく厳しい視線をアリアにも向けている。

 アリアに言われるままにひとまず動いたけれど何も知らないことにはこれ以上従うことはできないと思っていた。


「お話しすることは多くあります」


 何から説明するべきか。

 1つ話すならば全てを話さねばならない。


「私たちは聖印騎士団なのです」


「なんだそれは?」


「ケルフィリア教に対抗する組織でありますわ」


「聞いたこともない。

 それに監察騎士団とは違うのか?」


 ゴラックは眉をひそめた。

 最近の問題続きで眉間のシワが深くなった気がする。


 ゴラックは聖印騎士団について聞いたことがなかった。

 以前ビスソラダの問題の時にケルフィリア教に対抗するために監察騎士団を入れたことがある。


 監察騎士団も反ケルフィリア教を掲げているはずだったと思った。


「全くの別物ですわ」


 騎士団と名前が付いていてケルフィリア教に対抗する組織であることは似ているが聖印騎士団と監察騎士団は異なる組織である。

 まず独立性が違う。


 監察騎士団はあくまでも教会などの下に置かれる教会の一部門のようなものである。

 それに対して聖印騎士団は完全に独立した組織になる。


 かつては監察騎士団と同じようなものであったが今は教会の制限は受けない。

 他にも監察騎士団は反ケルフィリア教であるがケルフィリア教だけを対象にしているわけではない。


 危険な宗教、異端な宗教、あるいは既存の宗教でも暴走などの兆候が見られたら監察騎士団は動く。

 ケルフィリア教は目立つ相手であるのであたかもケルフィリア教だけのように表面上見えていただけ。


 対して聖印騎士団の対象はケルフィリア教のみである。

 宗教的な怪しい動きがあれば調査することはあるがそれがケルフィリア教でなかった場合は監察騎士団に通報するなどの処理を行なって関わることはしない。


 そして一番の大きな違いは聖印騎士団が秘密組織であることだろう。

 監察騎士団は表の組織。


 存在を隠すこともなく公に活動している。

 けれど聖印騎士団は秘密の組織でありその活動は表沙汰にしない。


「なるほど……

 ヘカトケイさんやクインが聖印騎士団なのはいいとしても、なぜアリアが?」


「ケルフィリア教に復讐する理由があるからですわ」


 アリアは説明した。

 両親のことを。


 リャーダが聖印騎士団で、イェーガーもそれを手伝っていた。

 そのために2人は亡くなり、アリアは1人残されることになったということを。


「そんなことが……」


 その過程でメリンダも聖印騎士団であることは話さざるを得なかったがここに至っては話すしかない。

 知らなかった真実にゴラックはうなだれた。


 受け入れがたい話であるが理解できないものでもなければ、言われてみれば納得もできるような気すらする。

 アリアがケルフィリア教に対して強く良くない感情を抱えていることは知っていたけれどその理由はビスソラダを含めて強要されかけたことにあると考えていた。


 しかしアリアのケルフィリア教に対する感情の根はもっと深いものであった。


「そして……ソーダーンが、ケルフィリア教だと……」


 これもまた受け入れがたい話である。

 しかしソーダーンが一緒にいた男ドクマは完全にケルフィリア教だった。


 オーラユーザーではないのに不穏なオーラを扱い、さらにはアリアが持ってきた証拠はソーダーンが狙っていた暗殺対象者の名前が並んでいた。

 ソーダーンは暗殺者であった。


 布教などの活動を一切行わず、淡々と反ケルフィリア教の人物や邪魔になりそうな人物を暗殺する仕事を請け負っていた。

 もしソーダーンが捕まったとしても責任はゴラックに押し付けられる。


 ケルフィリア教に言われて暗殺したのではなく仕えるゴラックに言われて暗殺したのだとエルダン家を貶めることができる。

 ゴラックが没落してディージャンやユーラがダメになった後家を乗っ取るのもソーダーンに課せられた作戦の一つだった。


 ビスソラダが成功して家を乗っとれればそれはそれでよかった。

 しかしソーダーンは一応エルダン家の血筋を継いでいるので家を継ぐ正当な理由はある。


 必要とあらばエルダン家を没落させてソーダーンがそれを乗っ取るつもりでもあったのだ。


「……おじ様、大丈夫ですか?」


 頭痛でもするように頭を押さえるゴラックをアリアは心配そうな顔をして見ている。

 このような話はすぐに受け入れられることではない。


 なのだが今は招待客の都合があり動かせる人員も少なく素早い決断が求められる。

 時間をかけて考えて納得している暇などゴラックには残されていない。

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