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潜入、そして調査3

 しかしドクマの顔も分かってはいない。


「大きな火傷の跡がある男でしたかしら?」


「そう。

 左の肩から腕にかけてひどい火傷の跡があるらしいね」


 けれど身体的な特徴が分かっている。

 ドクマは幼少の頃にひどい火傷を負ったらしい。


 今でも肩や腕には火傷の跡が残っていて、火傷を確認できればドクマだと言ってもいい。

 火傷を負ったドクマの両親がケルフィリア教に助けを求めて一命を取り留めたことからドクマはケルフィリア教になったと言われていた。


「人か物どちらかでも見つかればこちらに大きく優位になる」


「なんならこの家の連中全員ひん剥いてみればいい」


「使用人のだらしない体を見ても何も面白くありませんわ」


「そういうことじゃないだろう?」


 重要なのはそこじゃないとメリンダはツッコむ。

 誰になんの権限があって家の人を裸にしていくというのか。


 見つかればいいけれど見つからなかった場合とんでもないことになる。


「まあともかくそうした手段は最後だよ」


 もうどうしようもなくなったらそうした手段にも頼ることもあるかもしれない。

 そもそもオーラユーザーでヘカトケイが本気になったらメリンダになど止められはしない。


 アリアだってメリンダには多分止められない。

 そうなったらいかに素早く行動を起こしてケルフィリア教に責任を押し付けるのか考えておかねばとメリンダは深いため息をついた。


「心配するな。

 ケルフィリア教は見つけ出してやるから」


「……期待しています」


 心配なのはそこじゃない。

 分かってるんだか、分かってないんだか胃が痛くなるような思いのメリンダであった。


 ーーーーー


「全員はっ倒せばいいのですかね?」


「やめときな……」


 パーティーが始まると言われて会場となるホールに向かった。

 会場にはすでに人が集まっていた。


 エルダンも傘下にある家のものもいればホード家と仲が良い家のものも来ている。

 壁の花にでもなっていればいいと思っていたアリアなのであったがそうもいかなかった。


 アリアは人気だった。

 当然ながらゴラックに挨拶に来る人は多いのだけどアリアの方にまでしっかりと挨拶をしたり子供を紹介していく人が後を絶たない。


 理由はいくつかある。

 1つはアリアの容姿。


 アリアは周りの令嬢と比べても抜きん出て綺麗な顔をしている。

 カンバーレンドの集まりでは他の令嬢も有名家門の子が多かった。


 当然のことながら見た目にも非常に気を使う。

 ドレスもきらびやかに、礼儀作法もなるべく完璧を装う。


 アリアは目立ちたくないのでその中にあって目立たぬように地味な格好もしていて、作戦が功を奏してあまりアリアは目立たなかった。

 ゴラックがそう仕向けたところもあった。


 けれどホード家のパーティーでは勝手が違う。

 有力貴族のお嬢様などいない。


 いるのは自分の領地も持たないような貴族か騎士たち。

 その子供たちともなればどうしても装いもレベルが下がってしまう。


 たとえアリアが地味を装っても周りのレベルが下がればその差は縮まる。

 となるとどこが注目され始めるのかというと顔なのだ。


 服装のきらびやかさに差がなくなると見られるのはやはり顔になる。

 その点でいくとアリアは綺麗な顔立ちをしている。


 地味な格好をしていても礼儀作法レベルが高くてピシッとしていて、上手く両親の良いところをもらったアリアに男の子は見惚れ、女の子は憧れを抱いた。

 もう1つの理由としてはアリアの立場にある。


 力のある貴族の一員でありながら男兄弟がいる。

 このことはつまりアリアはいつか家を出て嫁に行くのが大体の場合に起こることでアリアを引き入れられればエルダンと縁を繋げられることになるのである。


 さらにゴラックがアリアのことを可愛がっていることがビスソラダの醜聞に遅れて広まっていた。

 ビスソラダのことを話すなと言ってもゴラックがアリアに甘いことを話すなとは言われていない。


 ビスソラダの噂を打ち消すような効果はなく影に隠れていた噂であったが本当のことなのでじわじわと話が広まったのだ。

 ゴラックが可愛がっているならアリアと婚姻を結べれば恩恵に預かれることは間違いない。


 他にもアリアを褒めておけばゴラックの機嫌が良くなるとか子供の話題は話に出しやすいとかそんなことから結構注目される。

 基本的には笑顔を浮かべて簡単な受け答えをしていれば後はゴラックが会話を引き取ってくれるけれど惚けたように顔を見られたりしているのは気分が良くない。


 こんな時に婚約者でもいれば1発でこんな流れ断ち切れるのにとは思った。


「チラチラと見られるのも嫌ですがボケーッと顔を見つめられるのも不愉快ですわね」


 何人かその間抜けヅラに拳でも叩き込んでやろうかと思った。

 しかしアリアは耐えた。


 敵はほんのり赤面するアホな貴族の子息ではない。

 ソーダーンが出てきて挨拶を述べる。


 そして当主を引き継ぐことを宣言してゴラックが承認する。

 決まっていた流れ通りに進んでいく。


 ホード家に仕える騎士がソーダーンに忠誠を誓うなど形式的な儀式みたいなこともやって無事に継承式は終わった。

 そしてソーダーンのお誕生日会へと移り変わっていく。

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