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潜入、そして調査2

 騎士が並んで出迎える。

 ホード家の騎士ではあるがエルダンの傘下に入るホードの騎士なので間接的にはエルダンに仕えているも同じではある。


「ようこそいらっしゃいました」


 ゴラックが馬車を降りると2人の男性が膝をついて待っていた。


「頭を上げてくれ、ソーダーン。

 今日の客人は私だ。


 そのように畏まることはない」


「ありがとうございます」


 1人はソーダーンは目尻にシワの目立ち始めている中年の男性。

 腰に剣は差しているが服装は礼服だった。


 けれどそのような服装をしていても体は鍛え抜かれていることがわかる。

 ゴラックとソーダーンが笑顔で握手を交わす。


 ソーダーンはゴラックよりも年上なのであるが重要家臣、さらには血縁関係もあるということでゴラックとソーダーンの関係性は悪くなかった。


「お嬢様、お手を」


 そしてもう1人の男性も立ち上がると少し遅れて入ってきたアリアの馬車に寄った。

 降りてこようとしたアリアに手を差し出したのはソーダーンの息子であるケニアック・ホードであった。


「ありがとうございます、ケニアック様」


 ケルフィリア教かもしれない人の手を取るのは嫌だけどまだわからない以上は拒否できない。


「お、おっと……」


「失礼」


 アリアが差し出された手を取ろうとした瞬間先に馬車を降りていたヘカトケイがケニアックを押し退けてケニアックに伸ばされていた手を取った。

 ヘカトケイも似たような考えを持っている。


 ケルフィリア教がアリアに何をするか分かったものではない。

 危険は減らしておくべきである。


「怒らないでくださいませ、ケニアック様。

 私を守ることに真面目なだけですから」


 とはいえヘカトケイの行いは失礼に当たる。

 何かを言われる前に先手を打っておく。


 仕える家のお嬢様の護衛に不快を覚えたとしてもこれぐらいではどうにも出来ないが怒らせていいことなどない。


「ええ……素晴らしい騎士が護っているようで」


 不快感がないわけでもないが貴族の令嬢にはそうした関係にない男性に全く身体的接触を許さない人もいる。

 アリア当人の意思ではなく護衛がやったことなのでゴラックなりの意思が反映されているのかもしれないとケニアックは自身を納得させた。


 ヘカトケイが女性騎士なことも見て分かるしよほど大事にされているのだと笑顔をとりつくろう。

 混雑を避けて少し早めに来たアリアたちは誕生日会が始まるまで部屋で休ませてもらうことにした。


「ふう……なかなかキツいな」


 ヘルムを外してヘカトケイがため息をつく。

 短時間なら問題ないが長時間ヘルムを被りっぱなしなのは案外窮屈である。


 アリアの護衛騎士となることに抵抗感はないがヘルムは面倒だと思わざるを得ない。


「見ただけでは分かりませんわね」


「見ただけで分かるケルフィリア教の方が少ないさ」


「それにしてもお屋敷も大きなもので意外でしたわ」


「ホード家は歴史もある家門だからね」


 部屋にてアリア、ヘカトケイ、メリンダで作戦会議を行う。

 すでに敵陣真っ只中なのだが部屋のドアの前にはレンドンとヒュージャーが立ってくれているし大きな声を出さなきゃ隣の部屋に声が漏れ伝わることはない。


 それにヘカトケイが周りを警戒してくれている。

 ヘカトケイの感覚をすり抜けられるほどの実力を持つ人がいるならそもそもこの潜入は何もせずに帰るしかない。


「当主の執務室は2階の1番奥だよ」


 メリンダがクインから受け取った紙のロールをテーブルの上に広げた。

 そこに描かれているのはホードのお屋敷の間取り図であった。


 長くホード家が存在しているということはそれだけ人の出入りもあるということ。

 辞めた使用人や普段から出入りのある業者など様々いる。


 メリンダはホード家から引退した使用人を探し出してお金を払い家の図面を作らせた。

 手癖が悪くて追い出されたような人なので喜んで協力してくれた。


 正確な図面ではないがザックリと屋敷の構造はわかる。

 特別複雑なんてことはなく、昔ながらのシンプルな構造で大まかに見たところ隠し部屋などもなさそうである。


 相手はケルフィリア教なので正確ではない図面だけでこうしたことを判断するのは危険であるが昔からある屋敷なので当初作った時になければ後から隠し部屋を増設するのも容易くない。

 ソーダーンが普段から執務に使う部屋は2階の奥側にある。


 自室も同じく2階にあり、秘密のものを隠すならどちらかであると読んでいる。


「調べるのは私と師匠でやりますわ。

 オバ様はどうにか私たちのことを誤魔化しておいてください」


「……仕方ないね」


 メリンダもできるならアリアにそのような重責を背負わせたくない。

 アリアならまだ屋敷の中を歩き回っていても子供だからと言い訳がきく。


 暇を持て余したとか好奇心とか大人では許せない理由でも子供なら許される。

 メリンダがソーダーンの私室や執務室にいては言い訳のしようもない。


「ドクマも見つかればいいんだけとね」


 ドクマとはソーダーンに助けを求めたケルフィリア教である。

 聖印騎士団の追跡ではソーダーンに匿われていまだに脱出した様子はない。


 つまりはどこかにいるはず。

 ドクマはケルフィリア教の中でも高い職責にあった人物でこちらは確実にケルフィリア教徒といえる。

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