表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/323

潜入、そして調査1

 およそ1年死者の死を悼み、ソーダーンが正式にホード家の当主の座を継ぐことを公表するための場としてソーダーンの誕生日会を選んだ。

 タイミングもよく一石二鳥である。


 招待する相手も大きく変わらず、ゴラックも都合が合えばソーダーンの誕生日の宴には顔を出すこともあったのでとても都合が良かった。

 ちゃんと家についてのことは知っているらしくメリンダも招待してきた。


 おそらく勝負は一回限りになる。

 この招待の間にソーダーンがケルフィリア教である証拠を掴まねば後は強行手段に出るしかなくなる。


「師匠、大人しくお願いいたしますわよ?」


「それが師匠にかける言葉か、弟子よ?」


 何だか似たもの同士な師弟であるとメリンダは思う。

 アリアも無茶はしないだろうと思っていたのだけどカンバーレンドでの暗殺事件の一件以来油断はならない女だと分かった。


 何かあればすぐに動き出す行動力は素晴らしいけれど何をするのか分からないと言い換えてもいいのだ。

 ヘカトケイはもちろんそうした人だと諦めているがアリアも案外タガの外れた思考をしている時がある。


 最悪の場合実力があるヘカトケイは自力で何とか出来るからいいとして心配なのはアリアの方だ。

 問題が起きた時に女性で子供だからと手加減してくれるケルフィリア教ではない。


 クインはアリアのことを認めているので実力もあるのだろうけど心配なものは心配である。


「オバ様、そのような顔なさらないでください」


 アリアへの心配が顔に出てしまっていた。

 まだまだ付き合いが長いとは言えないけれど付き合いの内容は濃い。


 アリアも良い子であるしメリンダにとっては娘みたいなものになりつつあった。

 メリンダが心配する気持ちもアリアは理解している。


 でも時としては無理なことでもやらねばならない。

 それだけの相手がケルフィリア教である。


「アリア……」


「私はこのようなところで終わるつもりなんてありませんもの。

 いざとなれば全員切り捨てて前にお進み申し上げるだけですわ」


「アリアァ……」


「はっ!

 そりゃ良い考えだ!」


 メリンダは深くため息をついた。

 一方でヘカトケイは大笑いする。


 とは言いつつも証拠を探そうとはするし常識的な部分はある。

 困ったらそうする話なのでメリンダも本気で諌めはしない。


「分かりやすく証でもどこかに隠していればいいんだけどね」


 ケルフィリア教徒の多くがケルフィリア教の証というものを持っている。

 ケルフィリア教としての身分を証明するだけでなく、他の宗教と違って教会がそこらにあったり、祭壇を作るわけにもいかないので証を神に見立てて祈りを捧げたりするのに使われる。


 証を持っていればケルフィリア教徒であることを言い逃れできない確実な証拠になる。


「ですがそんなもの持っているか……持っていても探し出せるかどうかですわね」


 当然ケルフィリア教徒としての証なのでみんなバレないように隠している。

 ソーダーンは全くケルフィリア教と疑われていないので巧みに証を隠しているか、もしかしたら長いこと潜入するために証そのものを持っていない可能性もある。


 ケルフィリア教との密書などケルフィリア教が関係するものが見つかればいいのだけどソーダーンがうまく溶け込んでいることを考えると難しいかもしれない。

 せめてソーダーンが何の目的を持っているのかだけでも知られたらと思う。


 逆に目的が分かればピンポイントでソーダーンを監視して計画の阻止も図れる。


「こうなるとホード家の中で誰がケルフィリア教かも分からないから警戒は強めておかないとね」


「ですので目立つことはお控えください」


「そのためにこんな格好してるんじゃないか」


 ヘカトケイは目立つ。

 容姿の面でもヘカトケイは綺麗で目を引く。


 貴族の中にあっては態度はざっくばらんとしていて言動もまた目立ってしまう。

 けれどもヘカトケイを置いてくる選択肢はない。


 招待客でもないヘカトケイを連れて行く理由を捻り出す必要があった。

 そこでアリアとメリンダはヘカトケイをアリアの護衛騎士だということにした。


 いつもは剣だけを腰に下げているヘカトケイだが今は防具も身につけている。

 馬車の座席にはヘルムも置いてあり、ホード家についたら被って顔も隠す予定だ。


 防具をつけるのは邪魔で面倒だと言っていたけど正面突破ではないこうした偽装もたまにやるには面白いとヘカトケイはノリノリだった。

 ちなみにアリアの護衛騎士としてはレンドンとヒュージャーも一緒にいて馬車の御者台にいる。


「もうすぐ着きますよ」


 御者台のレンドンが中にいるアリアたちに声をかける。

 アリアの住むゾーンレウから南に下ってきたところにあるジェスドという町にやってきた。


 ここにホード家のお屋敷がある。

 ホード家はエルダン家に仕えている小貴族でエルダンが持つ所領の一部の管理を任されている家系になる。


 古くから仕えている家でホード家が管理している所領ではホード家の信頼は高い。

 そのためにエルダン家もホード家には大きな信頼を置いているのであった。


 先を走るゴラックの馬車がホード家の門をくぐる。

 続いてアリアたちの馬車も中に入る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ