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回帰前も回帰後も師匠1

 正体不明の女人に敗北した。

 エルダンにはとんでもない化け物がいる。


 多少落ち込んでギオイルは帰っていった。


「それで……あなたが?」


「そうだよ。


 私はあの子を弟子にする」


 出来れば静かに大人しく先生になっていただきたかった。

 しかしヘカトケイは来て早々大騒ぎを起こしてくれた。


 ただで先生になってくれるはずはないと分かっていたけれどまさかこんなことをするだなんて思いもしなくてメリンダも頭を抱えた。

 アリアをテストするにしたってやり方もあったはずだ。


 白昼堂々と中庭に結界を張ってアリアを試すなんてことしなくたっていいのに。

 どうゴラックに紹介したものかメリンダも頭を悩ませている。


 ゴラックもゴラックでヘカトケイをどのように扱えばいいのか分からないでいる。

 無断で敷地に入ってきてアリアに襲いかかった侵入者であるがオーラユーザーでギオイルが敵わないほどの実力者である。


 仮に拘束しようと思うなら相当の被害を覚悟せねばならない。

 ヘカトケイに敵意がないのなら客人として迎えるしかないというのが正直なところであった。


「ううむ……状況が分からないのですが、アリアがどうしてあなた様のようなオーラユーザーの弟子に?」


「……話していないのか?」


「ええ」


「そうなのかい。


 話してしまいなよ。


 私の弟子になった以上適当なところに嫁に行かせるなんてこともさせないからさ」


 別に勝手に婚約者を決められる心配はしていない。

 ただアリアがオーラユーザーであることは切り札的なもので基本的には人に知らせるつもりはあまりない。


 メリンダには感情が昂って思わず見せてしまったようなもので本来は教えるつもりもなかった。


「おじ様」


「なんだ?」


 ここまで来ればゴラックもある程度察する。

 剣を教えてくれる先生はすでにいる。


 なのにそこにオーラの扱える人が来て、弟子にするというのなら自ずと予想もついてしまう。


「私、オーラが使えますの」


 アリアから真紅のオーラが溢れ出してゴラックは息を呑んだ。

 天が与えし才能であるオーラ。


 誰もが欲しがる力であり貴族の中でも大きな家に生まれ、不自由なく生活してきたゴラックでも手に入れることはできなかった。

 そのような力をアリアが持っている。


 予想はしていても驚かずにはいられなかった。


「……どうして言ってくれなかった」


「母に誰にも言うなと言われていました」


 ここは亡き母上のお力を借りる。

 アリア自身が他人を信じていないからですとは言わない。


 まして回帰前にゴラックはアリアに対して興味も薄く何もしてくれなかったから何も言いませんでしたなんて説明できるはずがない。

 母親の言いつけでオーラを隠していた。


 いかにもありそうな言い訳ではないか。

 子供がオーラを扱えれば良くも悪くも注目を浴びてしまう。


 本当に信頼のおける人以外にはオーラのことは打ち明けないように言われていたとしてもおかしな話でない。


「義姉さんが……」


 ゴラックも納得できる話だ。

 親を亡くしたオーラユーザーの子供にどんな人間が近づいて来るのか想像に難くない。


 もし周りに知られていたら良くない人が寄ってきていただろう。

 下手するとアリアはエルダン家に来る前に悪どい人に誘拐されていた可能性もある。


 間違いではない。

 けれどそこまでアリアの信頼を得られていなかったのだと考えると少し悲しさはある。


「ではその……」


「ヘカトケイ、と呼んでちょうだい」


「ヘカトケイ様がアリアのオーラの師匠になってくださるということですか?」


「だからそう言っている」


 アリアがオーラユーザーであるという衝撃の話はひとまず置いておいてヘカトケイの話は悪くない。

 オーラユーザーであってもオーラを自在に操れるものでもなく、教え導いてくれる先生が必要になる。


 オーラユーザーの先生など絶対数の少ないオーラユーザーの中で希少な存在である。

 さらにはアリアが女性であることを考えると女性の先生がなお良く、その点でヘカトケイはこれ以上ないほど適任な人である。


 実力は見た通りでもある。


「……アリアの師匠となることを引き受けてくれる条件はなんですか?」


 ヘカトケイの気が変わらないうちに引き入れなければならない。

 ともかく疑問は追いやってゴラックは真剣な眼差しをヘカトケイに向けた。


 力は正しい使い方を学ばねば最大限の効果を発揮させられない。

 アリアがどんな道を選ぶにしても教えてくれる人がいるなら教えを乞うべきだ。


「何かでアタシのことを釣れるとお思いかい?」


「それはお望みのもの次第でしょう」


「……アタシの希望はケルフィリア教の教主の首さ」


「なっ……」


 異端とされながらも裏ではびこる危険な宗教であるケルフィリア教。

 その教主は絶大な影響力を持っているけれど正体は誰も知らないと言われている。


 ケルフィリア教の神であるケルフィリアに認められた神の子だと言われたり、はたまた悪魔が教主だという人もいる。

 男か女かも分からないような存在であるが教主のことを口に出せばケルフィリア教が飛んできてその地を滅ぼすとまで言われているのだ。


 けれどヘカトケイは気にした様子もなくさらりと口に出して見せてゴラックを驚かせた。

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