これで王族ともお友達4
ただゴラックの目が怖いのはどちらかといえば娘に近づく馬の骨に対する父親的な怖さである。
「ええ、是非ともアカデミーで仲良くしていただけると助かりますわ」
しかしもう口にした言葉は引っ込められない。
王族から友達になってくれと言われて拒否するわけにもいかず、だからといってノラがやっぱり友達にならないでくれとも言えない。
アリアがさっと受け入れる。
あくまでもアカデミーでのことに限定して深い意味を持たせないようにする。
「ありがとうございます、アリア様」
アリアの言葉に出てこない配慮にマーメッサは感心する。
「私もアカデミーに知り合いがおりますと心強いですもの」
今のところノラが知り合いでも心強い感はないけどそんなこと正直にいう必要はない。
ノラ本人も嬉しそうだ。
その後はマーメッサが先導して差し障りのない話題を振ってゴラックも差し障りなく答えていた。
食事を終えて帰るのかと思えば大人の話があるらしい。
ゴラックとノラに付いてきていた数人が部屋を移して話し合うことになり、アリアがノラを連れて中庭を案内することになった。
中庭はそこそこ綺麗だ。
ビスソラダが管理していて力を入れていた場所でもある。
やや派手な感じがしていてアリアの趣味ではないが綺麗なものは綺麗だ。
今はこのまま手を加えず、季節の変化で枯れてしまうのを待つ。
当然枯れないものもあるがそうしたものは活かしたり、場所を移したりしてもうちょっと落ち着いた雰囲気にしたいものである。
「あの、アリアさん!」
「なんでしょうか、ノラスティオ様?」
「か、カッコよかったです!」
「はい?」
一体どれぐらい時間を潰せばいいのか。
そんなことばかり考えていた。
そのような時にいきなり褒められてアリアも目を丸くした。
しかもカッコよかったなどあまり令嬢に向ける言葉じゃない。
ノラはキラキラとした視線をアリアに向けていた。
「僕はただ彼の手を取って走ることしか出来なかった……
それも君にぶつからなかったら捕まっていただろう」
アリアにぶつかって止まる事にはなったがアリアのおかげで助けられた。
「その後も相手を追い払って、あの子を助けて問題を解決した。
僕のことも見捨てなかったし、僕の護衛とアリアさんの護衛が戦いそうになった時に間に入ってそれを止めたのはすごく……カッコよかった」
アリアが止めろと言わなかったら切り合いに発展していたかもしれない。
本来ならノラが止めるところをアリアが間に入ってピシャリと一喝して事態を収めた。
ずっとアリアは自分で前に立って物事を解決していた。
堂々としたその姿はとても輝いているようにノラの目には見えていた。
さらにはノラの顔を見るとモジモジとしてしまう女の子も多い中でアリアは顔なんて関係ないように接してくれた。
王族だと伝えていなかったのもあるけどある種気兼ねのないアリアの態度は新鮮で嬉しかった。
「ありがとうございます」
素直に褒められると普通には嬉しい。
「アリアさんなら僕の至らないところでも正直に言ってくれると思うんだ。
だから友達になりたい」
婚姻関係を結びたいとか貴族的な遠回しな意図はノラにはなかった。
言葉通りにノラはアリアと友達になりたい、ただそれだけであった。
忘れていたわけではないがノラはこんな人だったとアリアは思い出した。
回帰前にも真っ直ぐ目を見て友達になりたいなんて言われたものである。
「……私でよければ」
そしてノラはどんな時でも友達で、味方でいてくれた。
「ありがとう!
アリア……と呼び捨てにしてもいいかな?」
「ええ、ただし人前ではダメですわ」
「ん……そ、そうか。
じゃあ僕のこともノラと呼んでよ!
人前じゃダメだけど」
少しイタズラっぽく笑うノラ。
回帰前の世界ではノラはクソ第二王子を打ち果たしてケルフィリア教と戦ったと聞いた。
アリアにとっては少し遅かったがそれでもやる時はやってくれる男であった。
今回はノラには是非とも王様になってもらいたい。
そんな思いもありながらアリアも笑顔を浮かべてノラと友達になったのであった。