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これで王族ともお友達3

「なるほど、そのようなことが。


 アリアが第三王子のお役に立てたというのであれば幸いでございます」


 マーメッサとゴラックで言葉を交わしている間もノラはアリアのことを見ていた。

 アリアは気まずくてしょうがなく、視線を逸らしていた。


 ただちょっとお礼しただけで終わるはずもなくゴラックはノラたちを食事に招待する。

 普段もそれなりに良いもの食べてるけど今日ばかりはその中でもさらに豪華な食卓となる。


 料理長なんか必死に料理を作り、それを王族が食べるということで緊張で汗だくになっている。

 お口に合わなくてもお口に合わなかっただけで他家の料理長を処罰なんてしない。


 だから別に意図的に不味いものでも出したのではない限りは緊張する必要もない。

 少なくともアリアは料理長の料理が好きだ。


「ほぅ……」


 しまったとアリアは思った。

 もうノラたちがいることなんて忘れようと思っていたら思わず綺麗な所作を見せてしまった。


 王族のお相手として礼儀作法のレベルの高さは当然求められる。

 ノラだって物心つく前から礼儀作法は叩き込まれているし侍女長であるマーメッサもその点で相手を見る目は厳しい。


 マーメッサが思わず声を漏らすほどアリアの所作はスムーズだった。

 王族であるノラを前にして緊張もしているはずなのにそれを感じさせない。


 日頃から意識してやっていなければここまでできない。

 少しぎこちなくやれば良かったのについやってしまった。


 ファノーラの指導の下細かいところを修正していっているのでそうした影響もある。

 しかしここにきていきなりぎこちなくなるわけにもいかずアリアは平静を装って食事を続ける。


「とても出来たお嬢様のようで」


 正直な話、マーメッサはアリアに好感を抱いている。

 所作だけではない。


 ノラが王子だと知ってもそこでしつこく取り入ろうとすることもなくどこまでも一歩引いたような態度を取る。

 ノラは顔も良いことがあって王妃でなくても王族の仲間入りしたいと寄ってくる人も多い。


 積極性は大事だけどあまり野心が簡単に見えてしまうのはよろしくない。

 その点でもアリアは引いていられる良い女性に見えるのだ。


 アリアにその気がないから目立たないようにしているだけなのだが知らないマーメッサにしてみるとそう思っても仕方ない。


「アリアさんは特定の御相手はいらっしゃるのですか?」


「ノラスティオ様!」


 ノラの発言にその場の空気が凍った。

 正気に戻ったマーメッサが声を荒らげないようにノラを叱責する。


 なんてことはないような発言であるがそこそこ誤解を生む質問である。

 ノラはアリアに対して婚約者はいないのかと聞いた。


 一見するとただの世間話のようであるがノラが相手だと勝手が違う。

 ノラがそう聞くことは今現在婚約者のいないノラの相手として考えているとも取れてしまうのである。


 なんでそうなるんだと思いたくなるが貴族的な会話は面倒な遠回し表現が好きでなんてことはない発言を湾曲して考えてしまうことも少なくない。

 この場にそんな歪んで考える人はいないけれどもどこで誰が聞き耳を立てて、どこで誰が話を漏らすかなど分からないのだ。


「……おじ様は私の意思を尊重して下さっているので特定のお相手はいませんわ」


 ただここはアリアも変な流れを断ち切っておく。

 アリアの意思で相手がいないのだと伝える。


 つまりはアリアとしても今のところ特定の相手と婚約関係を結ぶつもりはないと言っている。

 さらにはゴラックもそれを認めている。


 ノラの質問にちゃんと返事しながらマーメッサにも含みのあるメッセージを送った。


「そ、そうですか」


「ノラスティオ様はアリア様にお相手がいた時に話がこじれてしまってはと心配なされていたのです」


 マーメッサからも変な意図はないのだと伝えておく。

 本当に面倒なものである。


 ディージャンとユーラ兄弟がいなくて良かった。

 いたらアリアを守ろうと王子相手にも敵対心を丸出しにしていたかもしれない。


「僕は来年アカデミーに通うのだけどアリアさんはアカデミーには?」


 年齢的には同じぐらいに見える。

 もうアカデミーは始まっているのに行っていないのなら近いうちに通い始めるとノラは推測した。


 もしかしたら同じ年に通い始めるかもしれない。


「アカデミーについてはまだ……」


「そうですね。


 まだ決まってはいませんが来年通うことになるとは思います」


 ノラの予想は大当たりでこのままいけばノラと同期入学することになる。

 分かりやすくノラの顔が明るくなる。


 回帰前にはあまり分かりやすく感情を表情に出す人ではなかったのに子供であるとこうも違うものなのか。


「その、僕そんなに知り合いもいなくて……


 是非友達になってくれたら嬉しいな」


「お、王子?


 そのようなこと……」


 ゴラックの目が一気に怖くなる。

 同性ならともかく異性の同年代の女の子に王族が友達になってほしいなどそんなにあるものではない。


 友達なら良いだろうと簡単には言えない。

 現在エルダン家はどの勢力も支持しない中立を保っている。


 アリアがノラとお友達になるということはエルダン家がノラを支持すると周りは思う。

 アカデミーでたまたま会って友達になるならともかくアカデミーに入る前に友達になってしまうと言い訳もできない。

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