配信
「へ~、そんなことがあったんだな……。」
「凄いな。それは……。」
「ああ、自分でも驚いたよ。」
他のメンバーにも相談して配信の許可を取った。
明日の朝に配信を始めることになったので今はその準備だ。
まずは配信を始める場所からだ。
先ほど殺された様子からもわかるようにまだ5キロメートルから外は危険だ。
なのでそれより内側のエリアに木の掘っ立て小屋みたいなのを作ることにした。
ゴウキさんが切ってくれた木を少し借りて組み上げていく。
下は石造りだ。そちらの方が熱伝導が高く温かいらしい。
暫くして外装、内装共に作り上げることが出来た。
簡単な椅子まである。
「凄いですね。」
「そうだろ。ってカエデか。今の時間は大丈夫なのか?」
もう夜遅くだが……。
「大丈夫です。親は帰ってきていないので。」
「そうか、バレないようにしろよ。」
「勿論です。」
「じゃあ、俺は明日に向けて寝るぞ。おやすみ。」
「はい。」
ログアウトした俺はSNSで配信用のアカウントを作った。
世界は今このゲームの情報に飢えている。そんな中、そのゲームを配信すると言ったらどうなるだろうか?
答えは明日の配信で明かされる。
翌日、予定通りに俺は配信を始める準備をした。
配信前の待機人数……って千人いるじゃん。こういうのは最初は0とか1って聞いたぞ。
ふぅ~、精神統一をしてから配信を始めた。
「初めまして!俺の配信に来てくれてうれしい。この度、【ファントム・ガイア】を中心に配信していく宇敷オトヤだ。」
[よろしく~]
「まじで【ファントム・ガイア】?]
「ちゃんとした【ファントム・ガイア】だ。」
[配信できるの?]
[気になる。]
「職業の中にそういうものがあるぞ。職業としてはゲームにおいては全く役に立たない能力だがな。」
[そうなんだ。]
[後ろの奴なに?]
[どんな感じのゲームなん?]
「後ろの奴……昨日配信を始めることになって急遽作った椅子だ。あとゲーム性についてはこの後探索しながら説明していくので待っていてくれ。」
[なる]
[なる」
そう言いながら椅子をカメラに近づける。
[結構凝ってるね。]
[凄いな。ほんとにゲームか?]
[よくできたホログラムだったりしない?]
「そんな技術は俺にはないな。この椅子はこの日のために昨日、半日をかけて作り上げたからこれくらいの出来になるのは当たり前だと思うぞ。」
[当たり前?]
[ゲームの世界で現実とはわけが違うのに?]
[いくら発展したとはいえゲームでこれはおかしいだろ。システム使ってないんだよな。]
「そうだね。道具は他の人の物を借りたけど楽にできるシステムはないよ。まぁ、そういう職業の人はいるのかもしれないけどね。」
俺は椅子をしまい部屋全体が映るように場所を移動する。
「ここから移動していくから簡単な質問に答えていくぞ。」
そう言いながら小屋を出て移動し始めた。
[このゲームってどんな感じで作られたん?]
「そこからか。俺も弟に押し付けられた形だからなそこまで知識はないが、確かどこかのイカれた金持ちが予算の回収を考えずに作ったらしいぞ。」
[うん。」
[ほんとにイカれてるよ、あの変人は]
[このゲームに目的とかあるの?]
「一応ストーリーらしきものはあるらしいぞ。だが大半はよくある自由にできるMMORPGって感じだな。」
[作り込みと、デザイン、ついでに容量を除けばの話だがな。]
[今じゃ1億も使ったら神ゲーが出来ると言われている世界なのにいきなり100億だからな。]
「お~。知ってる人もいるみたいだな。ちなみに現段階で2兆までなら使うことが出来るらしいぞ。」
[……]
[ふぁ!?]
[汚職怖くね?]
「ありそうだな。だがあの変人なら何とかしてくれるという期待もある。」
[確かに。]
[生きる嘘探知機だもんな]
[基本的にごまかしも聞かないという]
「原理は大体わかるんだがそれが実際にできるとなると話は別なんだよ。お、そろそろ見えてきたぞ。」
カメラを動かし俺の横に持って来た。
「喜べ君たちこの光景を見たのは君たちと最初だ。そして今は声を出さないのを許してほしい。」
その声を最後にオトヤが黙ると、コメント欄も一斉に沈黙した。
世界が割れたような峡谷の真ん中に空島が見える。
そこから流れる滝が夕焼けと重なりまるで宝石が散りばめられているかのような景色が生み出されていた。
「凄いな。どんな画質だこりゃ。」
[ッファ!?]
[なんやこれ]
[既存のゲームの二段ぐらい上がってるってグラフィック。]
「いずれ行こうか。」
[ま!?行けるの?」
[すげぇ]
[追いかけるの確定しました。]
「お、ありがと。こういうつもりじゃなかったんだけどな」
[いや、この景色を見るためだけにもこの配信見る価値あるぞ。]
[ほかに配信してくれてると来ないからな。]
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