だから⑤
「バール王国に対抗する力を、我が国が持てる?」
私は目の前にいる豪商の言葉に、目を見開いた。
商人に紹介された豪商は、確かに金色のドレスを用意するのは造作もないと、ただ、ルロワ城の価値はそれ以上で、それならば、カッセル王国との橋渡しをさせて欲しいと言い出したのだ。
我が国の隣には、バール王国という栄えた国がある。
我が国よりも、強大な国だ。
豪商は、我が国を、バール王国に並ぶ国にするため、いや、バール王国をしのぐほどの国にするために、交易があるカッセル王国との橋渡しをしようと告げたのだ。
私は、震えた。
恐れ、ではない。
感激に震えたのだ。
この国は幸せだと思っていた。
だが、私の手で、それ以上の国にすることができるのだ。
この幸運を、生かさなくてどうするのだ。
私は、国王なのだから。
「とても素晴らしい話ですわね」
ことり、と首を傾げるノエリアに、私の頬は緩む。
ノエリアは、私にとっての幸運の小鳥だ。
私自身の幸せだけではなく、国民のための幸せも運んできたのだ。
ノエリアのおかげで、この国は更に大きく、素晴らしい国になるのだ。
だから、クリスティアーヌなど、絶対に必要ない。




