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第20話 幕間:(第三者視点)かつての英雄パーティの女騎士の独白 ※先行公開

 変わり者の召喚士、【顔面塞ぎのアシュレイ】といえば、若くして白銀級の冒険者となった青年である。

 英雄パーティ【希望の架け橋】の一員として、長らく活躍を陰ながら支えてきた功労者。主には雑用係で、時には"相性のいい魔物"を嵌め殺して始末する仕事人でもある。


(あのアシュレイが、【希望の架け橋】から除名処分になるなんてな……)


 かつてのアシュレイの活躍を知る仲間たちは、追放処分に苦々しい思いを抱いていた。仲間たちは、誰一人アシュレイに抜けてほしいとは考えていなかった。【希望の架け橋】のメンバー五名は、残り一人のアシュレイを含めた六人組で、これからもずっと冒険を続けていきたいと思っていた。


 追放処分を決めたのは、冒険者ギルドである。アシュレイには実力が足りていない、これ以上強力な魔物の討伐は危険、パーティレベルと本人の強さに乖離が出始めており【希望の架け橋】の足を引っ張っている……という判断だ。ギルドの主張は明確だった。要するに、【希望の架け橋】にはもっともっと危険な魔物をたくさん討伐してほしい、だから足手まといは切りたい、ということだ。


(アシュレイにしかできない仕事はたくさんあった。あいつのスライムの運用方法は独特だ。だが、ギルドにはついぞ認められることはなかった)


 スライムしか召喚できない落ちこぼれ召喚士。

 ソロ活動時も、ろくな魔物の討伐実績を出していない。

 パーティでの活動時も、強力な魔物と戦う時に限って、討伐貢献査定にあまり関与できていない。

 要するにアシュレイは、現状の査定方式にまるっきり向いていないのだった。


 アシュレイのスライム運用方法は、まさしくその二つ名に恥じぬものであった。

 寝ている魔物の顔をスライムで塞ぐ。暴れて引きはがそうと試みても、鼻と口から無理やり入り込み、気管支を通じて肺を塞ぐ。そしてそのまま死に至るのを安全な遠くから待ち受ける――というもの。あまりにも残忍で、それでいて効率的な魔物の退治方法である。


 とはいえこの方法はかなり魔物を選ぶ。

 このやり方の欠点は、眠らない魔物の顔面を塞ぐのは途端に難しくなる、大型の魔物の場合顔を塞ぎ切るのが難しくなる、肺活量がある魔物の場合肺から息を絞りだしてスライムを押し出されてしまう、そもそも海の魔物などには通用しない、常時燃えている魔物などの場合スライムが顔に張り付く途中で死んでしまう、など、数を挙げると結構ある。そして強い魔物ほど、すんなりスライムでやられてくれないことが多い。

 決まったときはかなり優位をとれるのだが、それ以外の強敵相手にはあんまり通用しない。

 それがアシュレイの戦い方である。


(魔物退治だけじゃない。あいつは本当に以心伝心、上意下達が如くスライムを操るんだ。なのにスライムだからということでみんなアシュレイを馬鹿にして、正当に評価していない……!)


 荷物の運搬も然り。

 長期間の野営で体臭がひどくなったときもスライムに体を綺麗にしてもらって、周囲の魔物に匂いをたどられないようにしたり。

 砂漠を通るとき、スライムを頭にのっけて、フェイスベールのようにスライムを垂らして砂塵から喉を守ったり。


 スライムの運用方法がずば抜けて自由。それがアシュレイの真の強みなのだ。


 しかし、アシュレイはそれを周囲にひけらかさなかった。常識外れた発想力と高度な魔物操作こそがアシュレイの持ち味であり、だからこそその秘密が周囲に露呈してしまうと、アシュレイの強みがなくなってしまう。それをよく知っているから、アシュレイは秘密にした。冒険者ギルドにいまいち強みが伝わらなかったのも、それゆえである。

 結果としての追放処分。確かにアシュレイは徐々にパーティについていけなくなっていたが、それにしても追放だなんて過小評価が過ぎる。


「……そういえばアイツ、こうなりゃヤケだ、スライム娘を嫁にしてやる、とか言ってたな」


【希望の架け橋】のリーダー、女騎士シュザンヌ・ヴァラドンは、かつての相棒が言い残した不穏な台詞を思い出して、あいつどうしてるんだろうなあと遠くに思いを馳せていた。






 ■あとがき

 アシュレイの過去編です。こうやってたまに第三者視点の描写を入れて、アシュレイの人物像を深堀りできればいいなと思ってます。

 内政知識を楽しみにされていた方にはちょっと申し訳ありませんが、しばらくお付き合いください。


 アシュレイ君は、実利追及の徹底と工夫がすごいやつです。だから【希望の架け橋】の仲間たちは、スライムしか召喚できない出来損ないであるはずのアシュレイに、しっかり一目置いています。


 そんなアシュレイ君に、""成長爆速クソつよスライム""が合わさったら、歯止めが利くはずもなく。

 領地経営においても、そんなスライムの使い方ありかよ! ってなる効率厨、かつ斬新な発想をどんどん生み出す展開にしていきたいです。

 質より量、物量でぶん殴るクソ雑内政でごり押ししていきたいです。


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 これからもよろしくお願いいたします。

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