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第37話 幕間:????
迷宮の魔物は、暗き淵より名を呼ばれ、そして命の形へと成る。
暗き淵には滅びた言葉が、行き場を失って淀み渦巻いている。滅びたゆえに、魔物の名を呼ぶ者はおらず、彼らを慈しみ受け入れる概念さえ世にはない。
そこに在るだけの存在。それを象る言葉もなければ、それを理解するものさえない。
たとえ彼らに害意がないのだとしても。
彼らの存在そのものが、異質であるがゆえ、理そのものを歪めることさえある。
赤ん坊に名前を付けることは、この世に生まれたことへの祝福である。
名もなき魂はやがて形を失う。
言葉に力が宿る世界で、語りえぬものが生まれたとき、それは然るべくして討ち滅ぼされるのだ。