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第21話 辺境伯への報告・脱穀機・馬車改良・迷宮倉庫の設置

 1939日目~1952日目。

 海賊を一気に傘下に従えた。これによって我が領地に海軍ができた。

 とはいっても戦える人をたくさん集めました、というだけじゃ軍隊を設立できるわけではない。私兵団として抱えられる人数には爵位ごとに上限がある。伯爵などの高位貴族から権限委譲してもらうことで、ようやく限界を超えての人数を運用することができる。

 特に、私掠免許を与えられた船団ともなると、王国の許可状がないと活動は認められない。今の段階では、俺の領地にただ飯喰らいが1500人やってきただけだ。


(……チマブーエ辺境伯は、おそらく王国の許可状を餌にして俺を取り込もうとしてくるはず)


 もちろん、本音を言えば海賊を早く運用したい。海賊行為をしたいという意味ではなく、きちんと水夫として彼らを雇い、いろんな領地と航海貿易を行いたいという意味だ。彼らなら操船技術はもちろんのこと、下手な魔物に襲撃されてもそれを撃退するだけの力もある。船を修理する船大工もいれば航海士もいる。

 組織の命令系統もすでにある程度確立されている。軍隊を全くの一から新設するのと比較したら、遥かにスムーズに運用できるだろう。


 チマブーエ西方辺境伯の傘下に下ってバスキア城伯になるべきか。

 正直そんなにデメリットのない提案なので、呑んでもいいとは思っている。


(まあ、正直なところどこかの派閥に入っても悪くはないんだよな。政治のやり取りに興味がないってだけだから、面倒な話に巻き込まれなければどうだっていい)


 チマブーエ辺境伯への手紙をしたためる。海賊の討伐を無事に成功させました、と。

 あとは勝手に話が進むであろう。




 1953日目~1988日目。

 一気にやることが増えてしまった。


 足踏み式の脱穀機が作れないかとドワーフに相談をもちかけて。

 そろそろ五年ぐらいの時間が経つ輪栽式農業について、報告書をまとめさせて。

 新しくバスキア領の沿岸に港町を作ろう、という遠大な計画を発足させて。

 引き続き森のエルフたちには、贈り物を送るとともに、森の迷宮の調査を行わせてほしいと交渉を続けて。

 うちの畜舎で育てた養殖の魔物を使って、いろんな魔物料理を考案して。

 製鉄工房の規模をさらに大きくして、さらにスライムの力を借りて、とても滑らかな馬車の車輪と車軸を作って。


「といっても、全部俺会話してるだけだしなあ」


 手を動かしているのは他の人。俺は思いついたことをしゃべっているだけ。

 それだけなのに、なぜか俺も忙しい状況になっていた。

 こちらがお願いした事業の進捗を報告・相談されたり、全く関係ない儲け話をいきなり俺に持ち掛けてきたり、案外口だけ管理職というのも忙しいものなのだ。

 ……適切な判断ができるなら、の話だが(相談相手として頼りなかったら、誰も話を持ち掛けてこないので、自分から絡んできて口を出す嫌な人になるだけである)。


(他の貴族と違って、俺は結婚もしてないし世継ぎとなる子供もいないからなあ……外交はもちろん内政における重要事項の判断は全部俺が行わないといけない)


 これがもし他の貴族であれば、世継ぎの成長の糧と実績作りを兼ねて細かい仕事を少しづつ子供に任せていくものだが、現状は俺一人だけが貴族の仕事を行っている。


(だめだ、いくら何でも身が持たなくなってきた……せめてスライムが擬人化してくれないだろうか……)




 1989日目~2021日目。

 山の迷宮の開拓・拡張を行う。開拓といっても、人が歩きにくい地形を舗装したり、迷宮内部に倉庫を設置したり、行き止まりを掘り進めたりする程度だ。天然の迷宮を天然のまま放置せず、人の手を入れて便利にすることを俗に迷宮開拓というらしい。


 本来ならば迷宮の開拓を行うには、子爵位以上の貴族がどこか他の高位貴族と共同で実施しないといけないのだが、そのあたりは後々チマブーエ辺境伯が取り計らってくれるはずである。俺が正式に子爵位かつ城伯に任命されたら、後追いで認可が降りるだろう。

 今は"生態系調査"という名目で、王国法の網目をかいくぐっているだけである。摘発されたらちょっと苦しい。


(山の迷宮で発見できたものは、ミミズの魔物やキノコの魔物、魔石結晶をはじめとした特殊な鉱石――魔物の危険度はあまり高くなく、資源が継続的に採掘できそうという、理想的な『迷宮荘園』だ)


 迷宮は周囲に漂っている魔力のゆがみを蓄積して、時間をかけてゆっくり成長する。だから放置していても勝手に広くなるのだ。迷宮を縮退化させたい場合は、迷宮核を破壊してしまえばよい。もし迷宮の魔物の討伐が追いつかなくなってきたときは、いずれ迷宮核を破壊する必要があるだろう。


 冒険者ギルドの誘致? 絶対に嫌である。冒険者ギルドには個人的なうらみがある。


「取り急ぎ、倉庫の代わりに迷宮に空き部屋を作ってどんどん使っていこう。湿気対策として風を循環させる必要はあるが、それさえ管理できれば取れた穀物も、掘り出した石材も、山からとれた木材も、加工した石造りの調度品も、とにかく長期保存が可能なものはどんどん詰めていこう」


 これで街の倉庫のスペースを空けることができた。街の倉庫はもっと長期保存が難しいものや、交易に使う品の保存に使いたいところである。

 とはいえ、迷宮倉庫への搬入も、迷宮倉庫からの出庫作業も、迷宮倉庫の防犯警備も、全部スライムが行うのだが。

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