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第17話 夜襲の迎撃・製鉄工房の設立・エルフの発見

 1723日目~1755日目。

「海賊に圧勝、俺様は最強、ヴァイツェンもメルツェンも俺の手で抹消」という旨のお触れをばんばん出しておいた。

 おかげで海賊からの攻撃はどんどん激しくなった。

 ただし残念なことに、バスキア領の沿岸部には誰も住んでいないので、海賊たちは必然と上陸作戦を強要されることになった。

 そして大抵がスライムに捕まっていた。


(夜襲はだめだよ、夜襲は。100人以上集まって、うちの街に火を放とうと頑張ったようだが、残念ながら夜間警備はスライムがほとんど担っている。夜の暗がりでも全然索敵能力の衰えないスライム相手じゃ、いくら訓練されている海賊でも太刀打ちできないさ)


 夜襲なんて愚策中の愚策である。いや、本当は有効な手立てなのだが、あえて我が領地に限って言えばそれはまずい作戦であった。

 そりゃあバスキア領は、見るからに夜間警備の少ない街である。夜襲が有効そうに見えるだろう。

 だが、バスキア領には、眠ることなくずっと侵入者を見張ってくれるスライムがいる。しかもそのスライムには刃物がほとんど通用しない。何人も束になってかかってきたところで、烏合の衆である。


 捕虜人数も200人ぐらいに膨らんだ。そのおかげで、うちの住民も一気に増えた。

 こりゃあいい、ということで、捕らえた海賊たちにいろんな仕事を任せることにした。

 具体的には、スライムには全然できないような作業である。


 食べられるキノコかどうかの試食係。ミミズ料理がおいしくなるような工夫検討。

 他にも、山の迷宮の調査業務として、スライムと一緒に行動してもらいつつマッピング作業を進めてもらったり。

 森の調査業務として、生えている植物や棲息している魔物等のマッピング作業を進めてもらったり。


 他にも、人が増えたおかげで、今までやってこなかった仕事もこの際進めることにした。

 例えば、ずっと続けている魔物の家畜化実験。せっかくなので魔物の厩務員を増やして、もっと多くの魔物を飼育できるようにした。

 さらには、会計帳簿の転記作業。やることは単純。同じ内容の数字を複製するだけ。非常につまらない作業だし、苦痛極まりない。複製を二つ作ってもらって、かつミスがないかを第三者チェックさせて、ミスがあったら転記し直しをさせる。

 同じように、戸籍簿の明確化も実施した。住んでいる住民を戸籍簿にまとめて、住民を管理できるようにどんどん情報を精緻化させていった。


(仕事は無限にある。あえて掘り起こしてないだけだ。今までは帳簿管理なんてずさんでも領地の経営は回っていたが、そういった情報はあるに越したことはない)


 それにしても、人が増えるというのはいいことである。俺の命令に全く逆らうことができない人であれば、なおのことだ。




 1756日目~1784日目。

 ドワーフに来てもらって、うちの工房の設備を一気に刷新した。

 金属製品を作るため、小型の精錬炉やふいごといった設備を導入したのである。

 これで、蹄鉄、農具、生活用品などをどんどん鉄器化させていって、生活の利便性を向上させていくのだ。


(今まではスライムの力を借りて無理やり内政を押し進めてきたけど、さすがにそれだけじゃいろいろ限界があるよな)


 これでようやく近代都市化の第一歩を踏み出したことになる。鉄器の使用は確実に生活の質を底上げしてくれる。


 次なる一歩は、金属細工職人、刃物職人、武具職人、などの職人の細分化である。

 今の段階では全部、鍛冶屋がオールマイティにいろんな金属製品を作らないといけないだろう。だが、街の生活水準が向上するにつれて、それぞれの道具がしっかりした品質を求められることになるはず。

 そうなると、それぞれ職人の所掌範囲が細かく、より高度に専門化されていくのだ。

 もちろんこれは、街の住人が大きく増えて、専門化しても生計が成り立つようになってからの話だが。


(まあ、うちの場合はドワーフが工房にたまに来てくれて、技術指南をしてくれると約束を取り付けたから、技術発展は比較的早いはずだ)


 鍛冶職人といえば危険な仕事だ。

 だが、こういった危険な仕事でも引き受けてくれる人手がいるのは素晴らしいことだ。ひっ捕らえた海賊たちである。

 今は無理やり海賊たちに鍛冶の仕事をやってもらうわけだが、やがては志をもった若者にその仕事をしてほしいものである。


 適材適所。本当は、海賊たちには船乗りになってもらうのが一番いい。


(何がともあれ、これでようやくうちは鉄器をよそから取り寄せなくても、自分の領地内で作り出せるようになった。あとは時間さえかけていけば、技術発展も進むだろう)




 1785日目~1811日目。

 とうとう森に住むエルフの氏族を発見した。ほぼ同時に、森の中の迷宮を発見したところだったので、うちの領地はちょっとした騒ぎになっていた。


(荘園にできそうな迷宮が領地内に二つも、だって? そんなのますます、バスキア領の開発が進んでしまうじゃないか!)


 朗報。青天の霹靂。

 冷静に考えたら、今までろくに人の手が入らないままずっと放置されていた場所なので、魔力の歪みが蓄積されて迷宮化しやすくなっていた、というのは頷ける話である。

 だがそれでも、領地内に二つも迷宮があるのは結構恵まれているだろう。領地内に二つも迷宮荘園を持っているなんて伯爵とか公爵とか、そういった高位の貴族ぐらいじゃないだろうか。


 問題は、その森の迷宮の番人がエルフの氏族だったという点である。

 こちらとしては早速、迷宮の開拓をすすめたいところだが、エルフがそれを許してくれなさそうであった。


「まあ、どうせエルフと仲良くしたいというのは変わらないから、まずは友好関係の構築からかな」


 仕方がない。ドワーフ相手でも結構時間がかかったのだ。気難しいとされるエルフの場合、もっと時間がかかるかもしれない。

 ひとまずはいろんなお土産を持って行きながら、エルフと交流を持つことからであろう。

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