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第14話 教会への応対・ミミズの有効活用の検討

 1412日目~1466日目。

 白の教団の一つ、セント・モルト白教会から手紙がきた。

 最近の俺の活躍ぶりやバスキア領の活況をほめたたえるような辞令が並べてあったが、要するに内容は「あなたの領地に教会を作らせてください」というもの。


(教会か……敵対しあうのは嫌だし、かといって金の無心をされるのも嫌だな……)


 しばし考える。教会と懇意にするのはメリットも多い。

 特に、大陸にまんべんなく広がる白の教団とパイプができるのは非常に強い。一般に、修道院や教会は伝書鳩を飼っていることが多く、大陸中に教会を有している白の教団は、大陸中の情報が集まる組織だといってもいい。

 どこそこで戦争が起きそうだ、とか、あの貴族が結婚した、とか、そんな何気ない情報を聞き出せる相手はいつだってほしい。

 それに教会は、孤児を預かったり、貧民のために炊き出し活動を行ってくれたり、文字のわからない人たちに聖書の読み聞かせを行ってくれるなど、社会福祉への貢献活動も実施してくれる。

 冠婚葬祭の儀式を任せたり、新生児への洗礼も実施してもらえる。墓の管理も押し付けられる。


 半ば倫理観の崩壊しているこのバスキアの地において、教会の力をうまく借りることができれば、きっと多大な恩恵があるだろう。


(よし、大層立派な教会をつくってドカンと街に建ててやるか)


 ちょっとした嫌がらせを思いついた。

 想像以上にうんと立派な建立物を用意してやるのだ。それも、並みの修道者やら助祭では釣り合わないような格調高い作りにする。これで、司教クラスの人に来てもらうのだ。

 きっとここに赴任した聖職者は、この地の有様に絶句するだろう。


 綺麗に舗装された道路に、王都並みに発達した用水路。貧民街並みの住民の道徳意識。いびつすぎる産業。魔物の畜産化や、無理やり進めている輪栽式農業。変なことばかりしているのに、なぜか飢饉になっていない豊かな食状況。

 挙句の果てに、元野盗の連中が併呑されているという驚異的な事実。


 全部本当のことだ。いつ暴動が起きてもおかしくない。

 もしこれで、一回でも飢饉やら疫病が流行ってしまったら、民心は一気に領主から離れていくだろう。


 そんな危うい環境でありながらも、司教を赴任させなくてはならないとなれば、きっと教会もまともな司教はよこしてこないだろう。そこに付け込むのだ。


(すぐに金と利権で腐らせて、ずぶずぶの関係になってやろうじゃないか)


 金で操れる相手であれば、金で操ってやるのがいい。どうせそんなにお金は使ってないのだ。

 治水工事にも、領内施設の整備にも、治安維持にも、周辺調査にも、ほとんどお金はかかっていない。大部分がスライム任せ。

 それならもう、「金さえ積めばいろいろ融通が利きそうで、都合が悪くなれば首を挿げ替えることもできそう」なしょうもない司教に来てもらいたいのだ。


(神のご利益(りやく)よりも利益(りえき)が欲しいんだよ、俺は)




 1467日目~1491日目。

 なんと、海賊の連中から「いい加減にしやがれ!」と返事が来た。

 200日近く一方的に手紙を送りつけていたので、そろそろ鬱陶しくなってきたのだろう。

 もちろん毎日ではなく、一週間に一通ぐらいの頻度。手紙の文面も、領主代行か尚書の人に書いてもらったので、俺は正直大した労力をかけていない。

 だが、それでも受け取る側の海賊にとっては結構煩わしかったのかもしれない。


「貢物をよこせ」とか「子分になりたければ言うことを聞け」とか、とにかくバスキア領主である俺にたいして散々な内容の手紙だった。なのでこれを証拠として、領主侮辱の罪にあたるとか諸々、罪をでっち上げた。

 要するに、海賊討伐の名目を作ったのである。


(とはいえまだ手は出さない。領主侮辱は船の差し押さえ、とか財宝没収、とかとにかく挑発しまくってやる)


 海から発射した大砲の届く距離は、最大で300メートルぐらい。魔術師による砲撃が届く範囲もせいぜいその程度。全然バスキアの街には届かない。

 夜襲がきても問題ない。うちのスライムが夜に街をうろつく連中を問答無用でひっ捕らえているので、どうせ海賊も大したことはできないだろう。


(で、先に向こうに手を出させておいて、いかにもバスキア領は困っています、という顔をしつつ、辺境伯とか周囲の貴族を巻き込んでやろうかね)




 1492日目~1527日目。

 迷宮の調査と開拓の結果、なんと山の迷宮には多数のミミズの魔物がいることがわかった。

 ミミズといえば、土壌改良のために働いてくれる益虫として知られ、さらには魚を釣る餌にも適した生き物である。


(でも残念ながらうちの場合、スライムが同じような働きをしてくれるからな……)


 生ごみを堆肥にしてくれる分、ミミズの方がやや優秀かもしれない。

 だが量をこなせないし、細かい命令は出せないし、何より完全な支配下に置くことができないので、残念ながらミミズは餌としての運用しかなさそうである。


 基本はスライムの餌。時々、魚釣り用の餌。

 こう見えてミミズは、タンパク質やミネラル、コラーゲン、ビタミンなど、栄養価豊富でもあるので、料理に使うのもアリかもしれない。

 掻っ捌いた後、内臓とドロを搔きだして、塩をかけてよくもみ洗いすれば臭みも抑えられるだろう。


(ほかにも迷宮からは、キノコの魔物や、魔石結晶やらがたくさん見つかったし、引き続きスライムには頑張ってもらおうかな)


 もちろん、キノコの魔物の方が料理にしやすそうではある。だがミミズの魔物の方がたくさん見つかるので、まあミミズ料理の研究も進めるべきだろう。

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