第12話 森と山の調査・ドワーフの発見・海賊の拠点の発見
1166日目~1201日目。
山と森の調査・開拓が進むにつれて、いろんな情報が分かってきた。
この地への着任以来、スライムにずっと調べてもらっていたわけだが、おかげでバスキアの周囲情報がかなり判明した。
・キノコや薬草は潤沢にある。食用のものは少ない。
・森の浅いところは、葉の硬い木が多い。もう少し森の奥に入ると、堅果類の木が見つかり、実を焼き菓子などに使える。
・森に棲んでいる野盗たちがいた(ほとんど併呑できた)。
・森に生息している魔物は、イノシシ、クマ、シカ、ウサギ、ヘビ、カエル、ハチが多かった。
・森の中に恐ろしく汚い沼があって、ボウフラやらがたくさん住み着いていたのでスライムに浄化させた。
・山からは火山岩らしきものがたくさん見つかる。
・山を地下掘りしていっても、たくさん懸濁液がでてくるわりに資源は乏しい。とはいえ資源を取れなくはないので、淡々と採掘を続ける価値はある。
・山の洞窟には、ゴブリンやらコボルトやらがよく棲息している。こちらに襲い掛かってくるような凶暴なゴブリンやコボルトについては、何度も撃退して力関係を辛抱強く教え込んでいる。
そして何より良い知らせとして、ドワーフが生息していることが最近分かった。
必死に探した結果、なんとドワーフの生息地を見つけることができた。
(ドワーフとはなるべく友好的な関係を築き上げたいんだよね)
よく知られた話だが、ドワーフは手先が器用で、工芸に長けているとされている。
もし彼らにうちの住民になってもらえたら、工芸を一気に発展させることができるのではないか、とそんな下心が俺の中にある。
まだ訪問とあいさつを行った程度の間柄でしかないのだが、今後も仲良くなれるよう頑張りたいものである。
1202日目~1243日目。
小バスキアの街の名産品づくりに四苦八苦する。
さすがに石造りの調度品だけでは、他の領地から金を稼いでくる力は弱い。
元手が全然かかっていないので十分に高利益を叩き出すうちの名産品の一つではあったし、ずっとバスキア領のブランド品として大々的に売り出しているので貴族社会への知名度も徐々に高まりつつある様子ではあるのだが、それでも今のままだと石造りの調度品一本になってしまう。
何か他の商材も作り出したいところである。
ということでいろいろ手を出しているのだが、あんまりうまくいってなかった。
発酵食品で何かいいの作るか、と漬物やら干物やらやってみるも、あまり美味しくはなかった。
料理に力を入れるか、と思っていろいろ魔物を使ったジビエを考案してみるも、獣くさすぎてあんまり一般受けはしなさそうであった。
(だからこそ工芸品に力を入れたいんだけど、果たしてあのドワーフたち、俺の提案を受け入れてくれるかなあ……)
1244日目~1281日目。
海の調査の結果、海賊の拠点が分かった。
というより、バスキア領に結構複数の海賊が住み着いていることが判明してしまった。
(王国もあきらめて、私掠船としての活動を許可しちゃっているもんな……)
王国の西部が今一つ栄えていない理由。
それは強力な海賊が住み着いているから。
大陸西の海を大回りする航海路を使うことができれば、他国との貿易も一気に開ける可能性があるというのに、王国はずっと陸路の交易と、飛行艇を使った空路の交易しかできていない。
ヴァイツェン私掠船団。
メルツェン海賊団。
はっきり言って、他の国さえも手をこまねいているほどの大海賊がなんと二つも。
その二つの海賊団が結託しているのだから質が悪い。
そして、そのどちらもがバスキア領に拠点をおいているというのが恐ろしい話だ。
王国の西部で、領主による支配が全然行き届いていない場所となると、まあ確かに一番条件がいいのはバスキア領になるのだが。
「どうするか、野盗の時と同じように、うちの傘下に下る気はないか交渉してみるかね……」
我ながら、命知らずなことを思いついてしまったものだが、案外ありかもしれない。
大砲による砲撃をスライムが受け止めきれるかどうか、という博打になってしまうが、それさえ受け切れてしまえば武力で勝てそうでもある。
「……いいや、さすがにやりすぎか。スライムに影武者を作ってもらって、影武者を講和の使者として送り込む、というほうがまだ現実的か」
海賊の討伐に手を付けるのは、まだしばらく保留である。しばらくは手紙を送り付けるだけだ。