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第11話 雑務の委任・沿岸調査・行政の新体制発足

 1030日目〜1068日目。

 とうとう川の灌漑工事がほとんど終わってしまった。そのせいで大量のスライムが手持ち無沙汰になってしまった。遊んでいる労働力を放置するのはもったいない話である。

 それならば、とスライムには細かい仕事をたくさん与えた。


 武具の研磨、手入れの仕事。

 公衆浴場や宿屋などの掃除。

 住民の衣類の洗濯。


 いわゆる、バスキアの住民たちが日常的に行っている細かな仕事たちである。せっかくの機会なので、単純な肉体労働を積極的にスライムに明け渡すようにバスキアの住民の仕事内容の棚卸と整理を図った。

 こうすることで、バスキアの住民にはより生産性の高い仕事を行ってもらう、という狙いがある。たとえばバスキア領の調度品についていかにも芸術性の高そうな形状を検討してもらうだとか、細かい装飾の織物を手で作ってもらうだとか、スライムには到底できないような複雑な仕事で我が領地に貢献してもらうのだ。


(うちの領地はまだ産業が十分育ってないからな、単純作業に取られる時間をもっと自産業の発展に回したい)


 単純作業の手間の大幅な圧縮。何もないバスキアが、他の領地に追いつくための一手である。


 だが、ここまでしても一つ問題があった。

 今ある雑務をどんどんスライムに押し付けたところで、まだスライムには余力が残っていそうなのだ。どうにも用水路の工事は非常に大きな労働だったようで、その分の穴が全然埋まっていないらしい。


 こうなってくると、もっと大きな仕事を検討する必要がありそうである。

 任せっぱなしにしても全然大丈夫な大掛かりな仕事、すなわち。


(……山の採掘を本気で行うか、そろそろ海賊を制圧するか、だよな)




 1069日目〜1092日目。

 バスキアには、いくつか漁村跡地がある。潮風がゆるく吹き付けるこの地では、農耕よりも漁業で生きていこうと考えるような人が現れても不思議ではない。そして実際、漁業で人が生計を営んでいたような痕跡が残っている。

 例えば塩田らしき跡がある。ぼろぼろになった家がある。打ち棄てられた船やら網やらがある。

 そして、それらが廃れている理由は単純であった。海賊である。


「海賊に襲われたか、もしくは自ら海賊になったか、だな」


 海賊対策の第一歩。それは拠点の調査である。

 気がかりがないわけではない。スライムが海に入れるかどうかというと、ちょっと微妙なのだ。

 過去の経験上スライムは海を避ける傾向が強かった。塩分が濃すぎるからなのか、はたまた強い魔物が棲息しているからなのか、過去に使役していたスライムはいずれも海に入ることを嫌悪していた。

 一方、うちのスライムは命令すれば平気で入ってくれる。この違いはよくわからない。もしかしたら結構無理をして海に入ってくれているのかもしれない。


 果たしてうちのスライムに、海に潜っての調査を命じても良いものだろうか。


(まあ、十分に育ったし、せっかく海を嫌がらないんだから、慎重に周囲を調査してもらえばいいかな……)


 考えても仕方がない。嫌がらないのだから平気なはず、と楽観視しておく。

 スライムに異変が起きたらさっさと切り上げることを前提として、海に潜っての調査を開始することにした。




 1093日目~1165日目。

 じわじわと交易流通が増えて、街の規模が大きくなるに伴って、事務的な仕事が増え始めた。

 なので適当にお手伝いさんを雇い入れた。


 政務の面では、村長の補佐として、尚書、法官、財務官を任命する。

 生活面で、執事、侍女、馬係も任命する。

 得体のしれない人間に仕事をさせても大丈夫か? という不安はあったが特に心配はなかった。

 ――スライムをちぎったものを飲み込んでもらえばいいのだ。

 裏切れば死。実にわかりやすい誓約である。


(もし仮に、隣の領地から潜り込んできた間諜を間違って雇ったとしても、問題はない。裏切ったら死ぬんだし。だから俺は、有能かどうかだけ気にすりゃいい)


 報酬もなるべくたくさん弾むようにした。

 ここをあんまり渋っても意味はない。"領主の味方に取り入ったら儲かるぞ"ぐらいに思われた方がいい。

 少々払い過ぎだとしても問題はなかった。彼らの金の使い道なんて、どうせ領地内で衣食住に費やすぐらいなんだから心配ない。領地内の経済圏で巡り巡るだけ。徴税すれば結局戻ってくる。


(さあて、任地についてまだ三年ちょっとだけど、形にはなりつつあるかな)


 ここまでは内政は順調であった。

 だがこのバスキアの地は、まだまだ伸びそうな気がしている。せめて城下町ぐらいには発展させたいよね、という欲がむくむくと膨らんでいた。

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