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第95話:ガリウスは訪問者を迎える

 ◇


 アルスが加入を辞退したため、新勇者パーティは、ガリウス・フィーラ・マグエル・セレスの四名で発足することとなった。


 なお、新勇者のパーティリーダーは本人の希望通り、ガリウスに任せられた。



 ガリウス邸。


「ふっ、最高の気分だ」


 望み通りのポジションを手にしたガリウスは、機嫌よく身支度をしていた。


 今日は、記念すべき勇者パーティの初陣である。


 ピンポン。


 そんな折、ガリウスのもとへ来客があった。


 ガリウスは扉を開けるや否や、客を見て顔を顰めた。


「家には尋ねて来るなと言っただろ! 誰かに見られでもしたらどうする⁉」


 尋ねてきたのは犯罪ギルド『レッド・デビルズ』のギルドリーダー、ヘンリック・フューリー。


 ヘンリックは、白髪ロングヘア―と白髭が特徴的な壮年男性である。


 身長は百九十センチもの大柄。


 ガリウスも大柄なのだが、ヘンリックと並ぶと小さく見える。


 ガリウスが『レッド・デビルズ』に依頼を出す際の窓口はいつもこの男である。


「ふん、相変わらず小さい男だな」


 という言葉は、精神と身長を指したダブルミーニング。


 すなわち、ヘンリックなりのギャグである。


「……中に入れ。で、要件はなんだ?」


 外から見えないよう扉を閉め、二人は玄関でそのまま話を始めた。


「これを返しにきた」


 言いながら、ヘンリックが差し出したのは重量感のある小包。


 ガリウスは無言で受け取る。


「……金?」


 小包の中には、ガリウスが支払った現金五百万ジュエルが入っていた。


「アルス・フォルレーゼの暗殺に失敗したからな。失敗の場合は着手金を抜いた金を返す契約だろう」


「へえ。犯罪ギルドなんかやってる割には律儀だな」


「当たり前だ。俺たちは顔で商売やってんだ」


 内心、ガリウスはほくそ笑んでいた。


 アルス・フォルレーゼの件は、何もせずとも解決した。


 アルスは新勇者に加わる気がなく辞退し、その結果ガリウスが繰り上がる形でパーティリーダーの座に就くことができた。


 目的を達成した上、金まで返ってきたのだ。


 ガリウスは笑いを堪えるのに必死だった。


「それで、あんたがわざわざ金だけ返しに来たのか?」


 ヘンリックは、『レッド・デビルズ』のギルドリーダー。


 この立場の人間が単にお使いに来たとは思えないという意味での質問だった。


「ふっ、そのまさかだ」


「マジかよ」


「あと、金を返すついでに依頼主だったお前にも一応伝えておこうと思ってな」


「何を?」


「我々は、メンツにかけてアルスとかいうクソガキをぶっ殺すということだ」


「え、再依頼なんかしねーぞ?」


「これは依頼とは関係ない! 我々はアルス・フォルレーゼの暗殺に失敗した結果……三人の同胞を失ったのだ」


 そう言った後、ヘンリックは眉をしかめる。


「こうまでされて、我が『レッド・デビルズ』が黙っているわけにはいかん。ケジメとして、お前にこう宣言しに来たのだ!」


「へえ……なるほど」


 ……と返事をしつつも、ガリウスは内心はどうでも良いと思っていた。


 もはや、あえてアルスを殺そうとも思わないが、殺そうとする勢力を止めるほどでもない。


 無関心――と呼ぶべき状態だった。


「じゃ、俺そろそろ出るから。また依頼あるときはよろしく」


 ガリウスはヘンリックを帰らせると、自身もすぐに出発したのだった。


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