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第92話:クリスは酒場で情報収集をする

 ◇


 その頃、マリアの足取り調査を引き受けたクリスは冒険者が集まる酒場を訪れていた。


 夜の酒場は、仕事を終えた冒険者たちの溜まり場となっている。


 クリスは酒場に入るなり、冒険者たちに次々と声を掛けられた。


「おっ、クリス! お前結婚したんだってな!」


「こりゃめでてえ!」


「ったく、王都にいるんならたまには顔出せよな!」


 数日前にもクリスは酒場を訪れているのだが、その際に話したことが広まっていたらしい。


 次々と祝福の言葉がかけられる。


「みんな、ありがとな。時々にはなるだろうが、また顔出させてもらうぜ」


 いつでも迎えてくれるここのアットホームな空気感が心地よい。


 ここには若い頃に凌ぎを削った、言わば戦友のような存在がたくさんいる。


 独身時代に比べれば通える頻度は減ったが、それでもクリスにとって定期的に訪れたくなる場所がここである。


(いかんいかん、今日ここに来た目的を果たさなくては)


 用もなく訪れたい場所だが、今日はアルスから引き受けた大事な要件がある。


 クリスは、情報通……というより噂通のエルンの近くの席に座った。


 そして、エルフの件について尋ねようとした時だった。


「おいクリス、新勇者の話聞いたか?」


 唐突にエルンの方から話しかけられ、クリスはタイミングを失ってしまう。


(エルフの件は後で聞くか)


 それよりも、今は新勇者のことが気になる。


「新勇者の一人ガリウスってやつが、『レッド・デビルズ』と絡みがあるらしいんだ」


 『レッド・デビルズ』は王都では有名な犯罪ギルドであり、誰もが知っている。


「ガセじゃないのか?」


「いや、そうでもない。結構色々なところで見たってやつが多いんだ」


「ふ~む」


「それで、ガリウスって勇者は『レッド・デビルズ』に依頼を出したらしいんだが、どんな依頼を出したと思う?」


「見当もつかん」


「あくまで噂だが、旧勇者の暗殺なんだってさ」


「どうしてわざわざそんなことを?」


「それを今調べてるんだ。しっかし、狙うにしてもよくわかんねーのが、付与魔術師のアルス? とかいう元勇者を狙ってるんだってさ。別に勇者の中で別に目立ってたわけじゃねーのに――」


「アルスだと……?」


 いつものゴシップだろうと話半分で聞き流していたクリスだったが、アルスの名前が出たことで強烈に興味を引きつけられた。


「え? ああ……。なんか今日はしっかり聞いてくれるんだな。どうかしたのか?」


「いや……。ちょっと個人的にそれは気になっていてな。ガリウスという勇者がアルスを狙ってるってのは確かなのか? 冗談はいらんぞ」


「九十パーセントくらいの確度って感じだな。これに関してはほぼ間違いない」


「……ふむ」


「けど、失敗したとかって話もある。まあ、詳しく聞きたきゃビール奢れ」

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