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第75話:付与魔法使いは警戒される

 ◇


 手続きが終わり、俺は無事に出場できることとなった。


 今回の参加人数は合計で三十二人。


 普段は十六人程度しか参加しないらしいが、見目麗しい美少女エルフが景品ということで、物珍しさからいつも以上に応募が殺到したようだ。


 イベントの内容としては、一貫して一対一の決闘形式。


 ラウンド32→ラウンド16→ラウンド8→ラウンド4→ファイナルという順番でトーナメントを勝ち抜いていき、優勝者は景品のエルフ奴隷、ニーナを受け取れる。


 参加者の中には、鼻の下を伸ばした変態も半数程度いるようだ。


 これは、絶対に負けるわけにはいかないな……。


「アルスさん、こちらをの魔道具をつけてください」


「ああ、わかった」


 主催者の店主から渡されたのは、十字架の形をした決闘用の魔道具。


 この魔道具は、肉体へのダメージを精神ダメージに変換する機能を持っている。


 決闘するお互いがつけておくことで、どれだけの攻撃を受けても、痛みはそのままに肉体的なダメージを受けることはない。


 安全に決闘ができるため、命を懸けた本当の意味での決闘以外ではよく使われる代物だ。


 俺はエントリーナンバー1が割り当てられ、初戦を戦うこととなっている。


 壇上に上がると、俺の対戦相手が既に待ち構えていた。


「エントリーナンバー1! アルス・フォルレーゼ! あの勇者と同じ名前だが、彼はDランク冒険者だぁ!」


 俺の名前が紹介されると、拍手とともにどっと笑いが起こった。


 どうやら、誰も俺がその勇者本人だとは思っていないようだ。


 まあ、よくある名前だしな。


「対するは、エントリナンバー2! シモン・ウェイブ! なんとAランク‼ いきなり優勝候補登場だぁ‼」


 会場からおおっ! という歓声が沸き起こった。


 シモンは俺とは違って筋骨隆々の逞しい身体をした大柄な男である。


「王都ナンバーワンの剣士が相手とは、勇者のニセモノもついてねえな!」


「何秒で決着するかな? 五秒か? いや、三秒か?」


「ワハハハハハ!」


 ふむ、どうやらこのシモンという冒険者は王都でナンバーワンの実力者らしい。


 やれやれ。


 いきなり凄そうな冒険者と当たってしまったな……。


 シモンは、歓声をよそに俺に話しかけてきた。


「お前、アルスと言ったか?」


「ああ」


「佇まいを見るに、見た目によらずなかなか実力があるようだな」


「まあ、多少はな」


「謙遜するな。俺ほどの実力者ともなれば、佇まいを見れば実力がわかるんだ。相手が俺じゃなけりゃ、ぶっちぎりの優勝候補だったことは間違いない」


 自分が勝つとはしつつも、かなり洞察力に優れているようだ。


 だが、残念なことに自分に都合よく捉える癖もありそうだ。


「もしかすると、俺が勝っちゃったりしてな」


「ふん、それは絶対にない。ただ、一回戦にしてこれが事実上の決勝ファイナルってのはちょっと寂しいぜ。お前とは決勝で戦いたかった……」


 心底残念そうに呟くシモン。


 俺としてはどちらでも良いのだが、彼には彼なりの美学があるらしい。

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