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第72話:付与魔法使いは見物する

 店の前には、『見世物劇場』と書かれた看板。


 外観を含めて全体的にどこか怪しげな雰囲気が漂っている。


「それでは、ショー~タァイム!」


 メガホンを片手に大声量の店主の声が合図となり、軽快な音楽が流れ始めた。


 店の舞台にいるのは、獣人の男女合わせて十名のキャスト。


 キャストたちは、音楽に合わせて続々と持ち前の芸を披露し始めた。


 火の輪に飛び込んでくぐる芸だったり、高さのある場所に結ばれたロープを命綱なしで渡る芸など、そのすべてが曲芸。


 次々と芸を成功させるキャストたちに惜しみない拍手が止まらない。


「へえ、こういうお店もあったんですね!」


「みんな凄いわね。どれだけ練習したのかしら」


 素直に感心するセリアとユキナ。


 シルフィも美しい曲芸に見惚れているようだった。


 確かに、キャストたちの洗練された芸は素晴らしい。


 だが、この店は一連のショーが終わった後にある。


「タァイムアップ‼ 一番下手だったのは誰だぁ⁉」


 キャストたちに与えられたアピール時間が終わり、観客たちの投票に移る。


 この店の闇はここから始まる。


「一番下手だった人? 普通、こういうのって上手い人に投票するんじゃないの?」


「みんな上手だからってことですかね?」


「そういうものかしら」


 ユキナの違和感は間違っていない。


 違和感の答えは、この後すぐに分かることとなる。


「あぁ~! 一番下手だったのはレノンだぁ!」


 店主の発表がなされると、ワースト評価となったレノンという男の表情は悲壮感溢れるものとなった。


 周りのキャストたちはホッとした表情を浮かべると同時に、レノンに対する同情がこもったような目を向けているのが印象的である。


「残念! レノン、退場!」


 店主の合図で、剣を持った黒服の男が二人現れた。


「や、やめてくれ! 酷い! こんなのあんまりだ! 頼む……! チャンスをくれ!」


 ガタガタと身体を振るわせ、どうにか逃げ出そうと足掻くレノン。


 しかし、舞台と外へは魔法による見えない壁がある。


 それゆえ、逃げ出すことは叶わなかった。


 ザンっと肉を断ち切る不快な音が聞こえ――


「あああああああああああああああああああっ!」


 舞台は、レノンの悲鳴が支配したのだった。


「えっ……」


「…………」


「…………」


 ついさっきまで芸を楽しんでいたセリア、ユキナ、シルフィの三人は言葉を失っていた。

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