第68話:付与魔法使いは失敗する
グレイスが双剣の刃を光らせたのが効いたのか、暗殺者たちはつらつらと話し始めた。
「俺も組織の上から指示されただけで詳しいことは知らないが……多分、あの人の依頼なんだろうということはわかる。普通の依頼人とは違う対応だったから……」
「お、おい……」
「言っちまったらお前……」
暗殺者たちは、何かを恐れているように感じる。
チラッと袖の下に掘られたタトゥが見えた。
蛇のタトゥ。
これは……王都を中心に活動している犯罪ギルド……確か、『レッド・デビルズ』だったか?
盗賊行為を繰り返す厄介集団だと噂を耳にしたことはあったが、殺しまで請け負っていたのか。
「多分だが、俺たちに殺しを依頼したのは、ガ――」
その瞬間だった。
ブチッ! ブチッ ブチブチブチブチ! プシュゥゥゥゥ……。
とても人の身体から出る音とは思えない音を出し、暗殺者の身体から血が噴き出した。
「きゃ、きゃあああああああ⁉」
「な、何なのよ⁉ 何が起こっているの⁉」
俺たち十人は悲鳴に包まれることとなった。
「お、おい!」
俺は血が噴き出す暗殺者にすぐに駆け寄り、付与魔法によるヒールを施す。
しかし――
「ダメだ……死んでる。即死だ」
身体の内側から完全に組織が死滅しており、手の施しようがなかった。
元の状態に戻す性質を付与する特殊なヒールと言えども、死んだ者を蘇生することはできない。
「もしかして、依頼者の名前がトリガーになってるのか?」
状況からそう判断した俺は、残りの暗殺者二名を見る。
「その通りだ。俺たちには、ギルドからそういう魔法をかけられてる」
「しくじった以上は遅かれ早かれ同じ運命だ。せめてもの報い――後に続こう」
二人は顔を見合わせ、頷いた後に口を開いた。
「「依頼主は――」」
「ちょ、ちょっと待て! 早まるな! 俺に一つ考えが――」
そう言いながら、手を伸ばそうとする俺。
しかし、一瞬遅れた反応が運命を分けてしまった。
「「ガ――」」
ブチッ! ブチッ ブチブチブチブチ! プシュゥゥゥゥ……。
ブチッ! ブチッ ブチブチブチブチ! プシュゥゥゥゥ……。
「クソッ!」
ドン!
俺は、地面を思い切り殴った。
また間に合わなかった。
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