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第54話:付与魔法使いは告白される

「俺は、ずっとアルスが強いことを知ってたんだ」


「え?」


「普通に考えて、アルスがパーティが入ってから、それまでと比べ物にならないペースで成長するなんて、何かあるって考えるのが普通だろ?」


「まあ、そりゃそうだが」


 いったい、どういうことだ?


 これまでずっと俺の能力に気付いてなかったんじゃないのか?


 気付いていたのに、俺を追い出したのでは意味がわからない。


「お、俺は怖かったんだよ。年下なのに才能に溢れ、一人でパーティを変えちまうアルスが! このままじゃ、パーティリーダーの座を奪われちまうって気付いちまったんだ」


「そ、そんなの今まで……」


「言うわけないだろ! 俺は、アルスが自分の力を誇示しないことをいいことに、手柄を横取りして、己を強く見せかけてたんだ。そして、仲間と自分自身に嘘を吐き続けてたら、いつの間にか勘違いしちまったんだ。実は、アルスの力じゃなく俺は本当に強くなったんじゃないか? ってな」


 ナルドが嘘をついているようには感じられない。


 というか、ずっと冒険を共にしていた元仲間だからわかる。


 こいつはあまり嘘が上手くない。


「……それで、追い出しても平気だと思ったってことか?」


「ああ……そうだ。だが、いくら偽りの俺を信じていても、魔物と戦えば嫌でも素の俺が大したことないことなんてわかっちまう。アルスを追い出した後も偽りの俺にとって都合の良い捉え方ばかりでずっと逃げてきたが、アルスに助けられてようやく目覚めたんだ」


 ナルドの告白の後、他のメンバーも口々に告白する。


 まずは、魔法師のカイル。


「実を言うと、僕もアルスの力を認められなかったんだ。悪いのはナルドだけじゃない。僕はナルドの言葉を都合よく解釈して、アルスが不要だと思い込もうとしたんだ。本当に、悪かった」


 次に、回復術師のクレイナ。


「私は、付与魔法自体もだけど、アルスが前線でどれだけ貢献してたのかわかってなかった。当たり前だと思ってたことが当たり前じゃなくなって、初めてアルスの偉大さに気付いたわ。パーティを俯瞰して見なくちゃいけない回復術師として情けない限りよ」


 次に、弓術師のノア。


「俺はずっとアルスを妬んでたんだ。アルスも知ってる通り、俺はパーティの中で序列が低かった。新人として俺より下の序列で入ってきたお前がいることで、俺は安心したんだ。だが、日に日に強くなっていって、俺は嫌でもまた一番下に落ちたのがわかった。お前を追い出して、別の新人を入れたかった。俺はずっと自分のことしか考えてなかったんだ。アルスには本当に申し訳ないことをした。……本当に悪かった」


次に、双剣士のグレイス。


「ご、ごめんね? なんか私、バカだから……みんながアルスは弱いって言うから、そうなのかなって思って……変だと思われたくなくて、みんなに合わせてた。アルスは一人でもずっと頑張ってて、いつの間にか手の届かないところに行って、本当にすごいよ……」


 そして、最後に戦士のガレス。


「俺は、支援職……身体張らない奴を内心見下してたんだ。それで、アルスの凄さに全然気づけなかった。剣を使わなくてもできることがあるって、お前が去ってからようやく気付けた。経験値泥棒呼ばわりして、本当にすまなかった……」


 六人全員がそれぞれの形で本音を交えて俺への謝罪の言葉を口にしたのだった。

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