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第53話:付与魔法使いは謝罪される

 ◇


 冒険者ギルドを出た後、見覚えのある顔ぶれと遭遇した。


 俺の古巣である勇者パーティだ。


 正確には、遭遇した……というより、俺たちの要件が終わるのを待っていたらしい。


 俺の前に緊張した面持ちのナルドが出てきた。


「アルス……時間は取らせない。少し話をさせてくれ」


「……なんだ?」


 ナルドたちとは、ゲリラダンジョンの中で俺たちが危ないところを助けて以来だ。


 怪我の治療のため外で見かけることはなかっただけで、村にまだいることは知っていた。


 直前には謎の勇者マウントがあったりなどで微妙に気まずいのだが、どうも表情を見ていると、俺以上にナルドたちの方が気にしているようだ。


「アルス、悪かった!」


「え?」


 何を言い出すのかと思えば、ナルドは頭を下げ、俺に謝罪したのだった。


 あのプライドの高いナルドがどうして?


 いや……その前に何に対しての謝罪なんだ? パーティを追い出したことか? 追い出した後の謎の上から目線発言か? そもれも俺の知らない何かなのか? 思い当たることが多すぎて、どれに対して謝罪されているのか見当がつかない。


「この通りだ!」


 ナルドが膝をつき、頭を地面にこすりつける。


 ――いわゆる、土下座の格好だ。


 新加入の付与魔法師であるレオン以外の五人もナルドに続いた。


「い、いや……ちょっと、やめろよ。こんなところで……」


 冒険者ギルドの前ということもあり、ここはそれなりに人通りがある場所である。


 土下座までは要らないし、何よりもこれではまるで、俺が土下座をさせる悪者のように映ってしまいかねない。


「と、とりあえず頭を上げてくれ。まずは事情を聞こう。どうして、突然頭を下げたんだ?」


 俺の言葉を受けて、一旦顔を上げるナルドたち。


 世界一プライドの高いナルドが頭を下げるばかりか、土下座までするとは。


 きっと何か、裏があるはずだ。


 ――と、思ったのだが、返ってきた言葉は意外なものだった。


「ゲリラダンジョンで俺たちはお前に命を救われた。あれだけ酷い扱いをしちまったのに……。お前が村を出る前に、どうしても一言謝っておきたかったんだ。そして、どうしても伝えたかったんだ。今まで、ずっと……ありがとうってな……」


「いや、そんなの別に……」


 う~ん、反応に困るな。


 犠牲者ゼロにこだわったのは、俺のエゴであって、勇者だから助けたわけではない。


 それに、俺は勇者パーティ時代からずっとパーティを陰から支え続けていた。


 むしろこっちの方を理解して欲しかったのだが――

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