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第4話:付与魔法使いは的当てをする

 ◇


 受付嬢に連れてこられたのは、ギルドの裏にある広めの演習場。


 試験による騒音を軽減するためか、周りは木々に囲まれている。

 開けた場所に横並びでカカシのような見た目の的が五体立っていた。


「あの的をこんな風に——」


 説明しながら、受付嬢は初級魔法『火球』を放つ。

 ゆらゆらと頼りない軌道で火の球が飛んでいき、カカシに着弾。


 ポンッ。


 と可愛い音が鳴った。

 少しだけカカシが淡く輝いた。


「攻撃すると、攻撃力に応じて輝くんです。三回攻撃していただいて、最も攻撃力が高かった一回がカウントされます! 基準ですが、先ほどの私の攻撃より一回り強力になれば合格できます」


「なるほど」


「この試験は剣でも魔法でもどちらでも構わないですが……アルスさんは魔法でしょうか?」


「そうだな。どっちでもいいが……魔法の方が都合が良さそうだ」


 というのも、俺は付与魔法を駆使することにより剣も問題なく扱えるのだが、今は剣を持ち合わせていない。


 魔法なら道具がなくても使えるので、どちらでも良いのなら魔法の方が都合が良いのだ。


「ど、どっちでもいい!? ……承知しました。いつでも大丈夫ですので、攻撃をお願いします」


「わかった」


 チャンスは三回か。

 カカシに当たった攻撃だけがカウントされるため、必ず当てなければならない。


 となると、一回目はほどほどの攻撃で確実に的に当ててそこそこのスコアを確保し、二回目、三回目の攻撃は全力を出して高スコアを叩き出す作戦でいくとしよう。


 使う魔法は、さっきの受付嬢が使ったものと同じく『火球』。


 俺は付与魔法師だが、『火球』くらいのシンプルな魔法ならわざわざ付与魔法に頼らずとも普通に使うことができる。


 俺に限らず、攻撃魔法を主な役割とする魔法師や、回復魔法を主に使う回復術師など、多くの魔法系サポート職が初級魔法くらいは共通して使えるのが常識である。


 初級魔法で最低ラインのスコアを確保しつつ、本命は付与魔法を使った高威力の魔法で挑むとしよう。


「よし」


 俺は、カカシから二十メートルほど離れた場所から火球を放った。

 直線的に力強い軌道を描き、超高温の火球が飛んでいく。


 そして、的に着弾。


 ドガガガガガアアアアァァァァ————ンンンンッッッッ!!!!


 着弾した瞬間、火球は大爆発を起こし、凄まじい轟音が鳴り響いた。

 濛々と煙が立ち上がり、地面は高温で一部ガラス化してしまっている。


 攻撃は上手くいったが——


「やっぱり火球じゃこの程度が限界か……」


 俺が肩を竦めていると、受付嬢はなぜか目が飛び出るんじゃないかというくらい驚いていた。


「な、な、な、何ですかこれ!? やばすぎますよ!?」


「うん? 安心してくれ。さすがにこれは全力じゃないよ」


「って、はあああああ!? こ、これで全力じゃない……ええええ……」


 そんなことを話しているうちに煙が晴れてきた。


「それで、このくらいの攻撃力だと評価はどうなる……って、あれ?」


 どのくらい輝いているのかを確かめようとカカシを確認しようとしたのだが……。


「カ、カカシがバラバラになってます……。う、嘘でしょ……。っていうか、爆風だけで隣のカカシまでボロボロに……ええええ……」


 的であるカカシは見るも無惨な姿になってしまっていたのだった。

 どれも完全に壊れてしまったようで、輝きは皆無だった。


 全部で五つあるカカシの全てをついでに壊してしまったようで、測りようがなさそうだ。


「これって壊れるもんなのか?」


「壊れるわけないです……いえ、実際に壊れてるので変な話なのですが……。と、とにかく合格です! 誰がなんと言おうと合格です!」


「良かった、合格になるんだな。あ、でもあと二回試験残ってるよな?」


「やらなくていいです! もう合格ですから!! っていうか全部壊れて試験のしようが……」


「リペア×5」


 さっき水晶を壊したのと同じ要領で五つのカカシを全て元通りに修復した。


「試験のしようはありますが、必要ありません!!」


 ……ということで、的当て試験は火球を放っただけで終わってしまった。

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― 新着の感想 ―
[一言] こんなに強いならば美少女いらないだろう
[気になる点] これでお荷物なんだったら、他の勇者はどれだけの人外なんだ?
[一言] 何だろうな、役職の勇者や聖者や賢者なんぞ居らんでもコイツ一人で十分やん? てか多分勇者の魔力も解析してんだろうし、勇者以外には魔王へ傷を与えられんとなっても無問題だな?キットw
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